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スマホで行政手続きを手軽に行える「Graffer スマート申請」

アフターコロナの役所窓口を変える自治体向けSaaSが拡大中

2020年05月08日 07時00分更新

ユーザーが手続きを完了させられることが重要

 石井氏らが行政手続きシステムを開発する際は、使いやすさを最重視している。しかし、障壁になる法律や制度もあるため、その制約の中で最大限使い勝手のいいものを作ろうとしているという。

 電子申請は要するにウェブのフォームだが、エンジニアリング的に面白いポイントが多数あるそうだ。たとえば、法人名や本店所在地を入力する際、1文字でも間違うと申請が通らないこともある。そうなると、ユーザー側も行政側も無駄な手間と時間を取られることになる。そこで法人を調べる際、検索後に該当する法人を選択するだけで、法人番号や本店所在地が自動で入力されるようなシステムになっている。民間サービスでは当たり前に見られる機能だが、従来行政が提供してきたウェブサービスでは、このような工夫がほぼ見られないという。

 またグラファーは2019年から、行政手続きをわかりやすく案内する「手続きガイド」を提供しており、すでに13自治体に導入されている。たとえば、鎌倉市に導入した「鎌倉市くらしの手続きガイド」では転入・転出などの手続きについて案内しているが、月間1000件を超えるアクセスがあった。日々改善を重ね、1年前のスクリーンショットと比べると、大幅に改良されていることがわかるという。

 ユーザーが「手続きガイド」を利用した後は、フィードバックをもらう仕組みを入れており、その通知は社内のSlackに飛ばしている。駄目な評価だと黄色、いい評価だと緑色で表示しているが、最近は緑色の通知が多くなってきた。

 このように寄せられる要望を見て、レイアウトやデザインを変えたり、情報の取捨選択をすることで、手続きの遷移率が10~20%上がることもあるという。設定しているKPIは利用者数ではなく、いかにユーザーにとって必要な時に使いやすい物を提供できるかという点。手続きの途中で離脱せず、目的を達成できる人を増やすことが目的だ。

 SaaS企業でよくある悩みだが、ユーザーとともに増えていく多数の要望の中から、優先順位を付けてマネジメントすることが難しいと石井氏。特定の要望を取り入れることで、他の要望を損なってしまうことがあるためだ。そのため、要望の背後にある「課題」を想像し、これを解決するような改善策を打つことを心がけているという。

 2019年のサービスを公開後、特に自治体からの問い合わせが増えているグラファー。昨今の新型コロナウィルスの影響で、窓口の手続きをオンラインでやりたいというニーズが増えているということもある。自治体担当者の手ごたえも、来年や再来年に導入を検討する、という話だったのが、今すぐやりたい、という状態に変わってきている。

 そのような背景の中で、石井氏に今後の展望を伺った。

 「まずは人口が多かったり、意欲的で動きの速い自治体と組んでいく。現在、我々のサービスを契約している自治体の人口を合算すると453万人だが、これを1億3000万人にするのが目標。今は13自治体でサービスを使ってもらえているが、今後1年で30~40以上になるのは間違いない。直近は、100自治体への導入を目標にしている」と語ってくれた。

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