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Netflixおすすめ青春ドラマ3選 ネトフリを観ればアメリカの若者のいまがわかる

2020年05月02日 15時00分更新

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大にともなうロックダウンや外出自粛などの影響で、Netflixの会員数は1570万人増加(前年比15%増)し、全世界でなんと1億8300万人を突破しました(『Netflix、外出自粛で有料メンバー数が1570万人増加』より)。

 アメリカ国内ではテレビ視聴時間の約10%に当たるなど、圧倒的な人気を誇るNetflix。とくに、1980年代から1990年代の間に生まれたミレニアル世代や、1990年代後半以降、あるいは2000年代以降に生まれのジェネレーションZ世代はメインターゲットの1つと言えます(『Netflixが素晴らしい3つの理由』より)。

 日本でも外出自粛中にNetflixに加入したり、観たい作品を探したりしているユーザーも少なくないはず。今回はNetflixが若者たちに支持される理由を探りながら、Netflixオリジナルの青春ドラマ3選をご紹介します。

10代が抱えるあらゆる問題に切り込む『13の理由』

 Netflixの代表的な作品のひとつで、セレーナ・ゴメスさんが製作総指揮を務めた『13の理由』では、高校生ハンナ・ベイカーが自殺に至った「13の理由」を録音したカセットテープを巡り、さまざまな同級生たちが翻弄されていきます。

 このドラマは観ていて胸が苦しくなるほど、圧倒的なリアリティーが魅力です。アメリカ小児青年精神医学会誌(AACAP)が雑誌に掲載した研究では、実際このドラマの配信後9ヵ月間に10~17歳の若者の自殺率は29%近くも増加したと指摘されています。Netflixは2019年7月、このような研究や批判を受け、シーズン1の最終話にあるハンナの自殺シーンを削除したと発表しました。

 しかし、この作品はただ重苦しいだけではありません。シーズン1はジェイ・アッシャーさんによる同名小説『13の理由』(講談社)に基づいていますが、シーズン2以降はドラマ完全オリジナルになり、未成年の自殺というメインテーマだけではなく、アメリカの10代が抱えるありとあらゆる問題に切り込んでいきます。

 ジェネレーションZ世代は、2018年に起きたマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校銃乱射事件を受けた銃規制運動「March For Our Lives(命のための行進)」など、社会意識の高さも特徴の1つとされています。

 セクシャル・マイノリティーへの差別や薬物乱用、性的暴力、セカンド・レイプ、いじめと銃の問題、未成年の妊娠など……。この作品で巻き起こるさまざまな問題に立ち向かう登場人物たちの姿には、ジェネレーションZ世代が望む未来への希望が反映されていると言えます。

 現在『13の理由』はシーズン3まで配信済みで、シーズン4も製作決定しています。次がいよいよ最終シーズン。内容は重たいですが、ますます目が離せません!

※『Journal of the American Academy of Child & Adolescent Psychiatry Volume 59, Issue 2, Pages 236–243「Association Between the Release of Netflix’s 13 Reasons Why and Suicide Rates in the United States: An Interrupted Time Series Analysis」』,『AMP「「環境問題に興味がないアナタなんかとはデートしない」ティンダーを利用するZ世代男女の間に入り込む政治」』

気軽にイッキ観しやすい『セックス・エデュケーション』

 イギリス製のドラマ『セックス・エデュケーション』では、自慰行為ができず性体験もないもののセックス・セラピストの母を持つオースティン、アフリカ系でゲイのエリック、「ペニス噛み」と嘲笑されるものの秀才なメイヴの3人が同級生たちの性の相談に乗っていきます。

 このドラマはさきほど紹介した『13の理由』とは打って変わって、シーズン1とシーズン2ともに全8話なので、気軽にイッキ観しやすいです。声を出して笑えるほどコミカルな場面や、センス抜群の音楽も多用されます。その甲斐もあってか、このドラマはシーズン1の配信開始からわずか4週間で世界累計視聴者数4000万人を記録し、異例の早さでシーズン2が制作決定しました。

 しかし、この作品の真の魅力はコメディタッチながらも、性を通して若者たちの成長を丁寧に描いていくことではないでしょうか。たとえば、主人公の親友エリックは「ゲイの親友」や「アフリカ系の親友」といったステレオタイプな設定を越え、次第に自分自身を心の底から受け入れていきます。

 ジェネレーションZ世代は「性的指向や人種差別、人権についての立場を明らかにするブランドをサポートする」と60%もの若者が考えるなど、なにより性的指向や男女平等、人種といった「人間の平等」を重視しています(『ディズニーはNetflixを超えられるのか』より)。

 バイセクシャル(両性愛)やパンセクシュアル(全性愛)、Aセクシャル(無性愛)など多様なセクシャリティーを持つ登場人物や、性犯罪やセカンドレイプに対する強い信念など……。この作品のどこかアメリカっぽい世界観には、ジェネレーションZ世代たちの考えが映し出されていると考えられます。

 ちなみに、この作品のサウンドトラックを担当しているのも、バイセクシャル(両性愛)で、ジェンダーフルイド(流動的な性)を自認するユダヤ系アメリカ人のエズラ・ファーマンさん。たとえば、学校中に自身の性的な写真をばらまかれたルビーを描く、シーズン1の第5話のエンディング曲は『Body Was Made』。私の身体はこのように作られたという自分自身のセクシャリティーを擁護する歌で、物語のテーマにもぴったりの選曲と言えます。

 現在『セックス・エデュケーション』はシーズン2まで配信済み。新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で、シーズン3の撮影が遅れているという報道もありますが、引き続き続報を待ちましょう。

※『Paper Magazine「Ncuti Gatwa of 'Sex Education' Isn't Here to Play into Stereotypes」』,『フロントロウ「イギリスドラマ『セックス・エデュケーション』はなぜアメリカっぽい?クリエイターが回答」』,『Deadline「‘Sex Education’ Season 3 Shoot Delayed As UK Government Extends Coronavirus Lockdown」』

多様なテーマをテンポの良く描いた『ザ・ポリティシャン』

 『glee/グリー』や『アメリカン・ホラー・ストーリー』などで知られるライアン・マーフィーさんが手がけた『ザ・ポリティシャン』は、物心ついた頃から大統領になることを夢見てきた金持ちの御曹司ペイトンが、高校の生徒会長を目指す政治コメディドラマです。

 この作品の特徴は、なんといってもテンポの良さ。友人の自殺、代理ミュンヒハウゼン症候群(MSbP)、人種、セクシャル・マイノリティーなど、撮り方によっては重々しくなるテーマをテンポの良く描いていきます。このような個性的なキャラクターや多様なテーマは、日本にもファンの多いライアン・マーフィーさんの作家性とも言うべきでしょう。

 Netflixは次世代の俳優を発掘する一方で、デヴィッド・フィンチャーさんやマイケル・ベイさんといった、従来の有名クリエーターとも積極的に契約を結ぶことで知られています。ライアン・マーフィーさんは2018年に、今後5年間Netflixのみで新しい映像を作ることが明記された専属契約を結びました。すでに『ザ・ポリティシャン』のほか、『ハリウッド』『シークレット・ラブ: 65年後のカミングアウト』『サーカス・オブ・ブックス』を配信開始しています。

 ライアン・マーフィーさんは、2009年から放送開始された『glee/グリー』で若者たちの間で大きな反響を呼びました。さきほど紹介した『13の理由』もセレーナ・ゴメスさんが製作総指揮を務めています。ミレニアル世代やジェネレーションZ世代といった若者たちに影響力のある人物を積極的に起用するのも、Netflixの強みの1つと言えるでしょう。

 現在『ザ・ポリティシャン』はシーズン1を配信済み。主人公ペイトンが本格的に政治の舞台に乗り出す、シーズン2にも期待が高まります!

※『The Guardian「American success story: how Ryan Murphy became Netflix's $300m man」』,『COMPASS(コンパス)〜世界の潮流から3年後の未来を想像する〜「Netflixとミレニアルズの密接な関係ーLGBTQ、フェミニズム、パーソナライズ、セレブリティ起用』

Netflixを観れば、アメリカの若者のいまがわかる

 さて、この記事ではNetflixが若者たちに支持される理由を探りながら、Netflixオリジナルの青春ドラマ『13の理由』『セックス・エデュケーション』『ザ・ポリティシャン』をご紹介しました。これまで記したとおり、これらのドラマは作品として素直に面白いだけではなく、若者たちの心をわしづかみにする要素がふんだんに盛り込まれています。

 実際にGoogleが2017年に発表した調査によると、当時のジェネレーションZ(13歳〜17歳)とミレニアル世代(18歳〜24歳)は共通して、もっともクールだと思うブランドは1位がYouTube、2位はNetflix、3位はGoogleだといいます。この調査ではトップにAmazonプライム・ビデオやHuluは見当たらず、Netflixがいかに若者の心を掴んだのかが実感できます。

 Netflixには今回紹介した3作品以外にも魅力的な作品がたくさんあります。在宅時間が長くなり、暇な時間も増えるであろうこの期間、ぜひNetflixをチェックしてみてみましょう!

※『The Guardian「Teenagers think Google is cool, study by Google finds」』

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