教育向けエッジコンピュータ「MIB」とAI向けの「Infini-Brain」
その一方で、注目したいのは、PC以外の事業の柱が、どれぐらい太さの幹になるのかという点だ。
ここには、2つの取り組みがある。ひとつは、教育向けエッジコンピュータの「MIB(Men in Box、仮称)」、そして、もうひとつは、エッジAIプラットフォームの「Infini-Brain」である。
いずれも、FCCLの新規事業創出プロジェクト「Computing for Tomorrow(CfT)」から生まれた製品であり、2019年11月20日に、島根富士通で開催した「Day567」の記者会見でも、その片鱗を披露してみせた。
MIBは、教育現場の声を反映して開発したFCCL独自のエッジコンピュータであり、教室内にMIBを設置しておけば、あらかじめサーバーからダウンロードしておいた教育コンテンツを、Wi-Fiなどのアクセスポイントを使って、生徒のタブレットやPCに簡単に配信できる機能を持つ。その際に、40台に対して均一にデータを配信したり、教員が使用する場合には、教員用PCにネットワークリソースを割り当てたりといった制御も可能となっている。
「教育現場を熟知している私たちから見れば、授業を止めずに、安全に、効率よく進めるためにはなくてはならない要素、機能が入っているのがMIB」と斎藤社長は語る。
すでに、出雲市教育委員会と実証実験を開始しており、「導入した学校現場からは、これがないと安心して授業ができないといった声がでている」(FCCLの斎藤社長)という。
だが、課題となるのは、MIBのような教室内に設置するエッジサーバーは、今回のGIGAスクール構想の予算枠には入っていないという点だ。その点で、教育現場や教育委員会などに、良さを知ってもらうための活動が不可欠になる。
「教育現場と密接につながったFCCLだからこそ開発することができたMIBを、多くの教育関係者に体験してもらいたい」と斎藤社長は語る。
もうひとつのInfini-Brainは、「Day1」の会見で、コンセプトモデルを披露。「Day567」では、店舗に設置したカメラの映像をリアルタイムで画像解析を行い、AIが万引きなどの怪しい行動を検知して、店員に知らせるといった具体的な用途をデモストレーションしてみせた。
Infini-Brain は、独自のブリッジコントローラ技術により、CPUとGPUの双方向通信や、GPU間の双方向通信をシームレスに行えるようにしており、搭載された6枚のGPUを使って、負荷を分散させたり、並列処理させたり、シーケンシャルに利用したりでき、AIが必要とする処理能力に合わせてGPUのフレキシブルな利用と、性能と機能のスケーラビリティを実現できる。
FCCLでは、この技術をひとつの筐体として提供するだけでなく、モジュールとして提供することも視野に入れている。それによって、応用範囲を広げることができるからだ。たとえば、FCCLでは、「ESPRIMOロングライフシリーズ」と呼ぶデスクトップPCがある。量販店などには並んでいない製品だが、24時間365日止めることができない環境での稼働を前提にした設計としており、耐環境性と高信頼機能を実現している。InfiniBrain本体では、こうした堅牢性は実現できないが、このなかにInfiniBrainの機能をモジュールとして追加することは可能だ。モジュール化によって活用範囲を広げることは、InfiniBrainの事業化を後押しするものになる。
Day1000は、4月から始まった2020年度の第4四半期となる2021年2月に迎えることになる。その姿はどんなものになるのか。新型コロナウイルスの影響によって、事業環境は厳しい状況にあるのは確かだ。だが、それを跳ね返すような勢いを持った「Day1000」になることを期待したい。
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