富士通のドイツ工場撤退を受け、日本のDNAを継いだ工場を
だが、ここ数年で、事業体制を大きく変えざるを得なくなった。
2018年5月に、富士通のPC事業は、レノボグループが51%を出資して、新生FCCLとして新たなスタートを切ったが、欧州向けPCの開発および生産は、引き続きFTSに委託。欧州での事業拡大の基盤を維持していた。
<ところが、富士通は、2018年10月に、2020年前半までにドイツ・アウグスブルグの工場閉鎖を決定。FCCLの欧州ビジネスの体制を再構築する必要に迫られたのだ。
このときに、富士通では、コア事業と位置づけるテクノロジーソリューション事業にリソースを集約するとともに、グローバル事業強化に向けた体制見の直しと、プロダクトビジネスへの依存度が高い不採算事業の整理を構造改革の柱に据え、これを「形を変える」と表現してきた。ドイツ・アウグスブルグの工場は、富士通のコア事業からは外れる存在になっており、構造改革の対象となっていたのだ。
富士通の工場閉鎖の決定によって、FCCLは、欧州の開発拠点と生産拠点を新たに確保する必要に迫られた。FCCLでは、その準備を進め、開発拠点として、FCCL GmbHを、2019年8月8日に設立。2019年12月にはFCCLの齋藤邦彰社長がドイツに出向き、全社員が出席したオールハンズミーティングに参加。事業開始に向けた準備を着々と進めてきた。
新会社のFCCL GmbHは、FCCLの100%子会社として設立。資本金は25,000ユーロ。社長には、Dieter Heiss氏が就任している。従業員は約120人という規模だ。世界最軽量の薄型ノートPCの開発などで培ってきたFCCLが持つ高い技術力を活かして、欧州のビジネス市場のニーズを踏まえた製品を開発することになる。
FCCLの斎藤邦彰社長は、「FCCL GmbHでは日本と同様に、付加価値の高いPCの開発を行う。これにより、ドイツを中心とした欧州の顧客ニーズ、要望に対応していくことができるほか、日本とドイツのエンジニアが連携することで、他社には真似ができないPCを開発できる」とする。
そしてこうも語る。
「日本とドイツは、顧客やエンジニアの気質が似ており、品質を重んじること、モノを長く使うこと、細かいことにこだわるという特徴がある。そうした市場において、エンジニアが顧客のそばにいて開発することで、厳しいニーズに対応したPCを開発できる。お客様に寄り添うPCを開発するFCCLのDNAを実現することにもつながる」とする。
一方で、欧州でのPC生産については、チェコに生産拠点を確保。マザーボードは、島根富士通で生産したものを使用するなど、FCCLのDNAを受け継いだ高い品質でのモノづくりを維持することになる。
FCCLは、グローバル戦略の要となるドイツでの開発体制を再構築し、欧州での生産体制も用意した。PC事業拡大に向けて、さらにアクセルを踏む体制が整ったといえる。
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