RINK PITCH 2020レポート
呼吸器疾患解決、次世代電子顕微鏡、ひも酵母ドリンクなど、再生・細胞医療ベンチャーが集ったピッチ大会
2020年2月21日、かながわ再生・細胞医療産業化ネットワーク(RINK)が、再生・細胞医療分野のビジネス交流イベント「RINK FESTIVAL 2020」をライフイノベーションセンターにて開催した。本イベントは、再生医療の実用化・産業化を促進するため、国内外の事業者や研究者、学生が情報交換・交流をする場として年に1度開催されている。会場内の特設ステージでは、バイオ系スタートアップ11社によるピッチイベントを実施。新型コロナウイルス感染対策として、登壇者は全員マスク着用での発表となった。ここでは発表内容を要約してレポートする。
ひもで酵母を培養して発酵ドリンクを家庭で手軽に
東大発スタートアップの株式会社セルファイバは、細胞をゲルチューブに封入する細胞塊「細胞ファイバ」の大量製造ソリューションを開発。将来的には臓器工場の実現を目指しているが、いま取り組んでいるのは、この「細胞ファイバ」の原理を応用した発酵ドリンクの製造だ。酵母をチューブに入れると早く発酵が進むので、朝ジュースを仕込めば、夜には発酵ドリンクが完成する。好みの素材、発酵の進み具合を自分で手軽にカスタマイズできるのが魅力。今後は、メーカーや飲食店とのコラボを企画中だ。
液体と固体の界面計測から
生きている人体内の細胞が見える電気顕微鏡
今日のバイオ研究は、次世代シークエンサーや電子顕微鏡によるロボット実験とコンピュータによる解析技術で急速に進歩しているが、計測機器は海外に依存し、非常に高価だ。また、次世代シークエンサーや電子顕微鏡では、生きている人体内の細胞の測定が難しい。株式会社メディカルメカニカは、これらの課題を解決するため、独自に電気顕微鏡を開発。既存の電子顕微鏡などとは異なり、ピント合わせや固定なしに、10秒単位で細胞の変化を撮影できるのが特徴だ。注射針の先端に取り付ければ、採血の負担をかけずに体内の細胞分析が可能で、抗がん剤治療などへの利用が期待される。
呼吸器疾患の創薬プラットフォーム
呼吸器疾患には特効薬がなく、全人類の5分の1は呼吸器疾患で死亡している。動物実験から人体実験での成功率が非常に低いことが上市に至らない原因だ。京都大学の呼吸器疾患創薬講座では、臨床予測性を担保したiPS細胞から胚細胞を作るiPSオルガノイド技術を開発。この技術を用いて体外で肺細胞を作り、実際の疾患モデルで治験を行ない、さらにその細胞を創薬に即時応用可能なフォーマットに通し込み、医薬品の候補を見出す、という創薬プラットフォームを構築。現在は、特発性肺線維症などの希少疾患をターゲットに創薬研究を進めており、製薬企業やアカデミアとの共同研究で製品化を目指す。2020年春に起業予定。
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