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似て非なる軽スポーツ「コペンGRスポーツ」と「S660」を乗り比べ

2020年03月31日 15時00分更新

文● 栗原祥光(@yosh_kurihara) 車両協力●ダイハツ

実用性はコペンに軍配

 実用性ではコペンGRスポーツに軍配を上げざるをえないのが正直なところ。ですが着座するとちょっと様相が変わってきます。コペンGRスポーツはS660と比べ「横幅は広く、前後方向は狭く、上下は少し高い」という印象。乗車姿勢は大きく異なり、S660は足を伸ばし、左右のタイトさとコクピットデザインも相まってフォーミュラーカーに乗っている雰囲気。街がレーシングコースに、と書くと誤解を受けそうですが、S660のコクピットから見える景色は、どこか非日常性を感じさせてくれます。

 いっぽう、コペンGRスポーツはCセグメントハッチバックの後席に座った時に似たポジション。シートは両車ともセミバケット。S660はサイドがやや高めでコーナーでも体をしっかりホールドするタイプ。コペンGRスポーツはレカロとGRというダブルネーム。シートはサイドシルがS660ほど高くはなく広くゆったりとした印象。それはスポーツカーではあるのですが、普段の乗用車の延長にあるもののようにも思えます。ちなみにシートは両車ともヒップポイントの調整機構はありません。

MOMOとGRの両エンブレムがついたハンドル

 それはステアリング径にも表れており、コペンGRスポーツは370ミリの丸型。クルマ好きから「モモステ」の愛称で親しまれる伊MOMOとGRのダブルネームは気分を盛り上げるには十分。いっぽう、S660は350ミリのD型シェイプ。たった2センチの差と思われるかもしれないが、小径ハンドルにD型シェイプはレーシーであるし、さらに長身の方の場合、コペンGRスポーツはハンドルと太ももが接する時があります。なおステアリング調整機構は両車ともチルトのみで、ステアリングの重さはどちらも同程度。しっかりしたフィーリングとフィードバックを感じさせるものでした。

指針式メーターを採用。ガソリン残量も指針メーターだ

グローブボックスの右側にUSBとHDMI端子を配置。その上にあるノブはエンジンフード用だ

 コペンGRスポーツのメーターは指針式。140km/hまでしかスケールが刻まれていないのは、軽自動車の制限速度(リミッター)が135km/hまでだから。室内を見回すと、S660の方にはセンターコンソール付近にスマホを置くスペースが用意されていますが、コペンGRスポーツにはそれがありません。USBやHDMIはS660の場合、標準でスマホ置き場の近くにありますが、コペンGRスポーツはオプション設定で、位置もグローブボックスの中となります。

サイドブレーキとシフトレバー

 シフト操作はCVT仕様で比較すると、コペンGRスポーツはジグザグにレバーを動かすゲート式に対してS660はシンプルなストレート式。気になったのは、コペンGRスポーツにシフトポジションを照らすイルミネーションなどがなく、不慣れなうちはメーターパネルの表示を見ないと入っているシフトポジションがわからないこと。そしてマニュアル操作時にシフトアップが前方、ダウンが後方と最近では珍しい位置関係になっています。

 シフトレバー近くのサイドブレーキは、コペンが車体中央に対してS660は助手席側に配置。隣に女子が座った際にシフトレバーに触れると、思わず太ももにタッチしてしまうセクハラ行為の危険性があります。引いた感触はコペンの方が引きしろが大きい印象でした。

 シフト関係で話を進めると、どちらもハンドルにシフトパドルを用意しますが、S660はノーマルモードでも動作するのに対して、コペンGRスポーツではスポーツモードでしか反応しないようです。スポーツモードにした際のマニュアル操作の解除も、S660の右パドル長引きに対し、コペンGRスポーツは一度ノーマルモードにしなければなりませんでした。実際に運転するとS660の方がシフト操作に関してはドライバーフレンドリーのように感じます。

サイドブレーキの隣にルーフ開閉ボタンを置く

アームレスト内にトランク開閉ボタンを配置。ちなみに写真には写っていないが給油リッドもこの場所にある

 総じて「日常生活で使いやすいのはどっち?」というと、コペンGRスポーツと言わざるをえないのですが、逆にS660は「ドライバーを中心とした、ストイックに走りに目を向けている車種」ともいう位置づけになりそうです。では走りはその通りなのでしょうか。特にGRのエンブレムは伊達なのか、それとも本物なのか。気になるところです。

ボディー四隅に設けられたGRエンブレム

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