コア数倍でもTDPが据え置き
Threadripper 3990Xのスペックは、すでに報じられた通り。cIOD(Client I/O Die)に接続される(動作する)CCDの数が4基から8基に増えたただけで、設計的な変更点もない。cIODから8基のCCDはsすべてが独立したInfinity Fabricで連結され、各CCDからメモリーを読み書きするには、等しくcIODを経由してアクセスすることになる。
第2世代Threadripperの2990WX/2970WXのようにNUMA(Non Unified Memory Access)ではなく、UMA(Unified Memory Access)であることがThreadripper 3990Xの大きな強みとなっている。ライバルであるXeonでThreadripper 3990Xと同規模のコア数を得ようとすれば、CPUは2ソケット。必然的にNUMAとなってしまう。ここがThreadripper 3990Xの強みといえるだろう。
すでに発売済みのThreadripper 3970Xとスペックを比較すると、コア数は単純に倍となっているものの、TDPは280Wで据え置かれているため、既存のTRX40チップセット搭載マザーボードでもBIOSさえ更新していれば問題なく使用できる。ただベースクロックは2.9GHzとかなり控えめになっているため、コア数よりもクロックが効くような処理では格下のThreadripper 3970Xや3960Xの方が速くなることは容易に想像がつく。
だが動作クロックの差異以上に気をつけねばならないのは、「プロセッサーグループ」と呼ばれるWindows(7より盛り込まれた)の仕様だ。Windowsでは論理64コアを1つのプロセッサーグループとみなす。つまりThreadripper 3970Xは論理64コアだから1プロセッサーグループに収まるが、3990Xは論理128コアだから2プロセッサーグループとOSから扱われる。そして困ったことに、基本的に1つのプロセスが使えるのは1プロセッサーグループのみだ。つまりアプリによっては、3990Xのコアの半分しか使えないこともあり得る。
もちろんこれはアプリ側で対処することによりプロセッサーグループの壁を越え、論理128コアすべてを使用することが可能だ。ただ論理65コア以上の展開を見据えた設計になっているアプリはそう多くない。今回試した限りでは、CG系アプリでのみ確認できた。
そのため、AMDもThreadripper 3990Xを“史上最強のCPU”というストレートな押し出し方ではなく「猛烈な処理性能を求めるクリエイター向けCPU」とアピールしている。価格が高いので買う層もプロクリエイターに絞られるが、特にクロックよりもコア数が生み出す膨大な計算量がモノを言う作業のためのCPUといってよい。
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