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アマゾンのジェフ・ベゾスのiPhoneがクラック 米国やサウジアラビアを巻き込んだ世界的事件に?

2020年01月29日 09時00分更新

WhatsAppを所有するFacebookはアップルに責任があると責める

 と、このように、政治的なものを含め、ここには書ききれないほどスケールが大きな話になっているようだが、ベゾス氏が個人的に依頼した調査に対しての疑問も出ている。そのFTI Consultingのフォレンジック調査では、ベゾス氏のスマートフォンは皇太子に近くアドバイザーも務めるSaud al Qahtani氏が調達したツールを介して不正アクセスされたと思われるとしている。当時Qahtani氏はサウジアラビア連邦サイバーセキュリティーのプレジデント兼チェアマンを務めていたという(https://assets.documentcloud.org/documents/6668313/FTI-Report-into-Jeff-Bezos-Phone-Hack.pdf)。

 ここでようやく冒頭の話に戻る。皇太子のアカウントからWhatsAppで動画ファイルが送られ、ベゾス氏のスマートフォンの振る舞いがおかしくなったという件だ。それ以前の6ヵ月は平均して1日430KBのデータが送信されていたのに対し、動画を受け取って数時間後から126MBに急増し、その後も1日100MBレベルでデータを送信していたという。

 そのほかにも、皇太子のアカウントからローレン・サンチェス氏に似た女性の写真が送られた(2018年11月8日と交際が公に明かされる前の時期)という。当時のベゾス氏は離婚に向けて話し合いを進めていた最中だそうで、「女性と議論することは、ソフトウェアライセンス利用許諾契約を読むようなもの。最後には全てを無視して”合意します”をクリックするしかないのだ」というキャプションがつけられているスクリーンショットもある。

 こうした調査内容に対し、Facebookの幹部のNick Clegg氏は、WhatsAppはエンドツーエンドの暗号化を使っているのでハッキング不可能であると反論。アップルのiOSに問題があると語っている(https://www.bbc.com/news/technology-51235815)。

 一方、元Facebookの最高セキュリティー責任者だったAlex Stamos氏(スタンフォードの国際安全保障協力センターの非常勤教授)はWall Street Journalに対し、FTIが調査にあたって脱獄をしていなかったり、ダウンロードしたファイルの中身を解読できないため悪意あるコードが含まれているかがわからないと主張していることを疑問視している(https://www.wsj.com/articles/report-alleging-saudi-hack-of-bezos-phone-puzzles-security-experts-11579865394)。

 このように、ベゾス氏のハッキング事件は非常に複雑で、今後も真相が見えてくるかどうかはわからない。ところで、Amazonは「Fire Phone」でスマートフォンに挑戦した過去がある。Fire Phoneはすぐに撤退したものの、Amazonはこの市場をまだ諦めていないとの見方も根強い。せっかくなら、自身の教訓を生かしたスマートフォンを開発してほしいところだが、Alexaを活用するとなると、逆にまたユーザーに盗聴問題を蒸し返されそうだ。

 

筆者紹介──末岡洋子

フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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