2019年11月8日のCybozu Daysでは「今、自治体に求められる「働き方改革」「DX」 担当職員が語る先進事例」と題したセッションが開催された。サイボウズ 営業本部営業戦略部 蒲原大輔氏のファシリテートの元、兵庫県神戸市と千葉県市川市が自治体におけるITの現状とkintone活用のキモを語った。
ITスキルが高くなく、効果がわかりやすい部署での成功事例から始めた神戸市
冒頭、登壇したサイボウズ 営業本部営業戦略部 蒲原 大輔氏は、kintoneのLGWAN(総合行政ネットワーク)への対応について説明した。kintoneのLGWAN対応はサードパーティである両備システムズが、LGWAN連携基盤 R-Cloud Proxyを開発。これによりLGWANからインターネットを経由せずにkintoneを使えるようになった。それと前後してサイボウズは2019年4月に兵庫県神戸市と、同年7月には千葉県市川市と事業連携協定を締結した。kintoneをどのように導入し、業務改善につなげていったのか、両市の担当者が語った。
神戸市から足を運んで講演したのは、神戸市役所 情報化総務部でICT専門官を務める砂川 洋輝氏だ。「神戸市が目指す自治体業務の変革 〜全庁の業務改革をボトムアップで推進〜」題して、神戸市で進行中の働き方改革と、そこでのkintone活用について紹介してくれた。
「情報化総務部は、いわゆる情シスの役割を担っています。現場からアイディアを募集したり、こちらから提案して売り込んだりしつつ、担当課とともに業務改善を進めています。2019年4月からはサイボウズ社と事業連携協定を締結し、庁内でのkintoneセミナーや課題の発掘から一緒にやってもらっています」(砂川氏)
神戸市役所で最初にkintoneを使い業務改善を行なったのは、保健福祉局保健課だ。ExcelとAccess、大量のFAXが飛び交う乳幼児歯科健診の日程調整を、kintoneでペーパーレス化した。使用したプラグインはフォームブリッジとkViewerのふたつ。歯科衛生士はフォームブリッジを通してスマートフォンやPCからシフトの希望を入力する。直接kintoneにデータが入力されるので、保健課職員は何十枚ものFAXを確認してAccessに転記する必要がなくなった。シフトが確定したら、歯科衛生士はkViewer経由でスマートフォン、PCから確認できる。歯科衛生士、保健課職員ともに手間と人的ミスが大幅に減り、外出先からでも情報を確認できるようになった。健診実施後の報告もFAXからkintoneへ移行し、脱FAXを果たした。
この成功例を砂川氏は、全庁に向けて広報した。最初の導入先に保健課を選んだのも、庁内への拡散にはプラスに働いた。ペーパーレス化や業務効率化など、わかりやすく大きな効果をあげている。しかももともとITスキルが高かった訳ではないごく普通の職員が使えて、効果を上げている。これには他部署の職員も触発されたようで、kintoneによる業務効率化への取り組みは全庁へ広がっていった。
「神戸市だけで終わるのはもったいないので、周辺自治体の職員も招いて自治体横断のワークショップも開催しました。あらかじめアンケートを行なって、似た課題感を抱えている人でチーム分け、kintoneとプラグインを使ったアプリ作成まで実施しました」(砂川氏)
ワークショップでの学びはそれぞれの参加者が持ち帰るものだが、砂川氏はここで作ったアプリを神戸市の実際の現場に導入。実際に業務に使えるところまでブラッシュアップしていった。こうして現場にkintoneを浸透させることに並行して、ナレッジの共有にも力を入れている。なにしろ砂川氏は任期付き職員なので、砂川氏自身にナレッジが溜まってもいなくなってしまったら意味がない。これからも現場で働く人にノウハウが溜まるよう、kintone利用者間のTips共有スペースを開設している。これらの活動が実を結び、今では13部署17業務でkintoneが使われている。また12業務でPoCまたは導入検討中だという。
「神戸市役所で持続可能な展開を推進していきたいと思っています。これまでシステムは外注するしかありませんでしたが、庁内ギークを発掘することで内製化できるようにしていきます。スーパー公務員ではなく普通の公務員がテクノロジーを使えるようにして、業務効率化で生まれた余裕を、もっと市民の方々と協働する時間に充ててもらえるようになるといいですね」(砂川氏)
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