みなさん、こんばんは。週刊アスキー/ASCII.jp編集部の吉田でございます。さて、ここ数カ月追いかけている「Airウェイト」が、新たな場所に導入されると聞いたので早速取材に行ってきましたよ。
今回の導入先は高千穂峡!! |
AirウェイトとはiPad専用の無償で利用できる順番待ち受け付けシステム(整理券を発券するプリンターは別売り)。飲食店やアミューズメント施設などに設置することで、行列の順番待ちを管理できます。具体的には、iPadに表示される指示に従って人数を入力することで、順番待ちの何組目なのか、予想される待ち時間は何分なのかなどを瞬時に算出してくれます。
「Airウェイト」は、受付時間や待ち時間、人数、ステータスなどを一元管理できるシステムです。呼び出し中の番号も確認できます |
Airウェイトはこれまで、東京都新宿区の地域振興券の販売や福岡市博多区のキャナルシティ博多のリアル脱出ゲームセンター、群馬県富岡市の富岡製糸場、そしてビックカメラグループの一部店舗で採用・試験導入されています。
キャナルシティ博多ではPepperと連動したAirウェイトの実証実験が行われました |
新宿区役所や区内の出張所で販売された地域振興券の順番待ちも「Airウェイト」で管理されていました |
富岡製糸場でも実証実験済み |
今回の新たな導入先は、宮崎県にある高千穂峡。高千穂といえば、天孫降臨の地とされる日本でも有数の超絶パワースポットですね。国の名勝、天然記念物にも指定されている場所です。
究極のパワースポットである高千穂峡にiPad専用順番待ち管理システム「Airウェイト」が導入されました |
ここでは、真名井の滝を見られる遊歩道が整備されており、休日は日本人はもちろん海外からの観光客でごった返すのですが、ここ最近は高千穂峡の峡谷(五箇瀬川峡谷)を這うように観光できる貸しボートが大人気です。ボートは20艘しかないため予約必至で、繁忙期には朝8時30からの受け付けで17時までの営業時間内のボートが瞬殺で埋まり、9時前には受け付け終了というケースもあるとのこと。ボートの乗船時間は30分程度なので乗り降りなどの時間を入れて単純計算で1時間で2組とすると、営業時間の7時間半で15組、20艘あるので、300組の予約が瞬殺で埋まるわけです。ボートには大人3人まで乗れるので、ボートを体験できる観光客は900人程度という狭き門。実際にはボートの乗り降りの時間や、次の利用者が来るまでの待ち時間などがあり、ボートに乗れる人数はさらに少なくなります。
ボードのチケット売り場には天候が悪くても朝早くから行列ができます |
また、ボート乗り場は峡谷の下、ボートのチケット販売場所は峡谷の上で、これまではこの2拠点を数分おきにトランシーバーで結んで予約客の情報共有を実施していたそうです。さらに、昨年のボート乗り場近くで落石があったそうで、落石防止工事が終わるまでは仮設の階段でボート乗り場にたどり着く必要があります。この仮設階段が結構な急勾配なので昇降に時間がかかるため、予約客をよほど効率的に回転させないと、待ち時間のロスが増えてしまいます。
ボート乗り場を運営する高千穂観光協会は旅行雑誌・予約サービスの「じゃらん」でつながりのあったリクルートからAirウェイトというサービスを紹介され、今回導入に至ったそうです。実証実験ではなく本格導入ということでした。
運用方法としては、チケット売り場では予約客に人数(大人、こどもの別も)と電話番号を聞き、それをスタッフがAirウェイトに入力し、QRコード付きの整理券を予約客に渡します。プリンターはコンパクトなので狭いチケット売り場の小屋に置いても邪魔になりません。
基本的にはスタッフが人数や電話場号を入力していきます |
予約客は、チケット売り場の小屋内に設置されたプリンターから出力された整理券を受け取れば予約完了 |
今回のAirウェイトが新しいのは、多言語に対応している点。英語モードを搭載したことで、日本語がわからない予約客でもiPadを見せながら説明することで、スムーズに受け付けを済ませられます。実際に韓国から来た予約客がiPadで予約を済ませていました。Airウェイトの責任者であるリクルートライフスタイルの渡瀬氏によると「高千穂峡は九州にあることもあり、韓国や台湾、中国本土から訪れる観光客も多いので、英語の次は中国語や韓国語に対応させたい」とのことでした。
表示言語はボタン操作で切り替えられます |
Airウェイトが英語対応したことにより、外国人観光客の多い施設での導入が進みそうですね |
実際に韓国から来たカップルがiPadの指示に従って予約していました |
ちなみにこの日は3連休初日の土曜日でしたが、ボートのチケットは13時25分で売り切れとなりました。
取材当日は13時25分で受け付け終了。繁忙期には午前中での受け付け終了もよくあるとのことで、予約したあとで一度熊本に戻るという人もいたそうです |
予約客は、整理券を受け取ったあと、遊歩道を散策したり、少し離れた高千穂神社に参拝したりして待ち時間をつぶします。QRコードをチェックして待ち時間が2時間以上ならちょっと離れたところにある天岩戸神社や天安河原などに車で向かうというのもアリです。
整理券にはQRコードが印刷されており、スマホやケータイで読み込むと待ち時間がわかるウェブページに移動します |
多くの観光客は、高千穂峡を間近に臨める遊歩道を散策していました。
遊歩道を歩いて行くと半端ないパワースポット感を味わえます |
上の橋は車道になっており巡回するシャトルバスなどから高千穂峡を眺められます |
時間があれば、遊歩道を先を進んで高千穂神社まで足を伸ばすのがお勧め。
遊歩道を先に進むと高千穂神社にたどり着きます |
高千穂神社の鳥居を抜けると狛犬が出迎えてくれます。遊歩道は神社の裏道につながっていますが、シャトルバスを使えば正面の鳥居から神社に行けます |
整理券と一緒に、売店で販売されている「高千穂峡ソフト(ソフトクリーム)」が100円引きの250円で食べられるクーポン券が配布されており、Airウェイトを導入することで周辺地域の回遊率を高める役割も持たせられます。実際に売店の従業員の方にクーポン券を使った購入がどれくらいあったかと聞いたところ、13時半ごろに時点で50組程度とのこと。多いか少ないかという問いかけに対しては、「いつもより出ていると思うけど、おいしいからクーポンなくてもみんな買うわよ」ということでした。ちなみに、アイスクリームを売ってる売店はほかにもあり、客がクーポンが使えないない店に間違えて行ったということもあったそうです。それをきっかけに、別の売店でもクーポン券の導入に興味があるということで後日打ち合わせをするとのことでした。
予約してスグにボートに乗れることまれなので、まずは腹ごしらえ。冷や汁とヤマメの塩焼きをいただきました |
食後のデザートには「高千穂峡ソフト」がお勧め。ボートの予約時にもらえるクーポンを使えば、350円のところを250円で購入できます |
話を元に戻すと、予約客はスマホのQRコードリーダーアプリを使って整理券に印刷されているQRコードを読み取ると、リアルタイムの待ち時間をチェックできます。もちろん、QRコードを読み取らなくてもOK。予約の順番が回ってくる前に、予約時にチケット売り場で伝えた電話番号に自動音声で呼び出しがかかる仕組みです。これまでは、ボート乗り場の階段を降りる入り口付近に設置されたスピーカーで予約番号を呼び出すシステムだったため、予約客が高千穂峡から離れてしまうと呼び出しに気付かないという欠点がありました。電話による呼び出しは効果てきめんのようで、実際に高千穂峡から離れたところにいた予約客が電話呼び出しを受け、ボート乗り場入り口までタクシーを横付けするという光景もみられました。まぁ、高千穂峡のボートはそれだけ魅力のあるスポットですからね。
QRコードにアクセスするとリアルタイムの待ち時間をチェックできます |
順番が来たら呼び出しがかかります。電話やメールのほか、ウェブページにも表示されます |
では、渓谷の下にあるボート乗り場でどういうことをやっているかというと、チケット売り場で入力された予約客情報(大人、こどもの人数)が、iPadにリアルタイムでリストアップされていき、予約客の人数に合わせて20艘あるボートに順番に割り当てていくという作業をしています。ボートに乗った予約客をチェックする(消す)ことで待ち時間がリアルタイムで再計算され、チケット売り場のiPadに伝わるという仕組みです。ちなみに、これらの情報はクラウド上で管理されており、ボート乗り場とチケット売り場ではセルラー版のiPadを利用して情報をやり取りしていました。これまでは、紙ベースで予約管理していたため、待ち時間を正確に出せずに結果的に回転率が落ちることもあったそうですが、Airウェイトの導入でこれが解消されたようでした。
担当者はボートに乗った予約客をiPadのリストからチェックして消していきます |
実際にボート乗り場でのオペレーションについて担当者に話を聞いたところ、「初日ということありiPadでの操作に戸惑う部分があるものの、リアルタイムで待ち状況を把握できるので、ボート乗り場付近で予約客が十数分待つというケースがかなり減った」とのこと。今後の課題としては、「現在はAirウェイトの標準機能を使って運用しており、予約客とボート番号を紐付ける作業についてはスタッフの手作業が残っている」そうで、改修ポイントに挙げていました。リクルートの渡瀬氏にあとから聞いたところ、「別案件で、金融機関の窓口の順番待ち管理システムを手がけており、整理券を受け取った人が何番の窓口に行けばいいかということも管理できるので、これを応用できるかもしれない」とのことでした。
現在の課題は、予約客とボート番号の紐付けが手動になっている点。ボート番号は黄色と赤色のプレートで管理します。今後のアプリの改修で対応する可能性もあります |
ボート乗り場の近くには鴨の大群が。ボートに乗った際に鴨に包囲されることもあります |
さて、首都圏から高千穂峡に行くには、JALもしくはANAの早朝便(JALは6時台、ANAは7時台)で羽田空港から熊本空港(阿蘇くまもと空港)までの2時間弱の空の旅のあと、10時すぎに空港から出発する延岡行きのバスに乗車して2時間程度のバスの旅を経て高千穂バスセンターに到着。バスセンターから高千穂峡までは車で5分程度です。注意したいのは、空港から高千穂バスセンターまで行くバスは1日2便しなかく、ボート乗り場の営業時間内にたどりつくには10時すぎのバスに絶対に乗る必要があります。羽田空港から熊本空港へは10時前に到着する便もあるのですが、到着時間が10分でも遅れるとバスには乗れませんので注意。
取材当日は、6時25分羽田発のJAL便を利用。この飛行機に乗るには5時台の東京モノレールや京急線を利用する必要があります。つまり、郊外に住んでいる場合は空港近くで前泊するか車での移動が必須 |
8時10分ごろに熊本空港に到着。くまモンだらけでした |
くまモンが目に付く屋内とは打って変わってスタイリッシュなデザインの外観。木製のファサードがいい感じです |
ちなみに九州唯一のいきなりステーキの店舗は、この熊本空港内のレストラン街にあります |
午前中を除くと、高千穂バスセンターから熊本空港へ向かうバスは16時30分ごろの1便のみなので、基本的には高千穂で1泊する必要があります。高千穂内での移動は車となりますが、お勧めはレンタカーよりタクシー。実はバスセンターから高千穂峡の往復にタクシーを使ったのですが、ドライバーのみなさんはたった5分程度の乗車時間であっても高千穂の歴史などをマシンガントークで教えてくれます。なんの予備知識もなく訪れても、現地に着くまでにはざっくり理解できるわけです。地元のタクシー会社は1万円前後での観光タクシーのサービスも実施しているので、高千穂に訪れた際はぜひ利用してみてください。
高千穂バスセンターを中心にパワースポットだらけ。地元では毎晩、神楽が開催されているのも魅力 |
今回の取材を通じて、高千穂峡のような交通の便やネット環境が悪いところでこそ、iPadなどのタブレット端末を活用したソリューションの威力を実感しやすいと思いました。ボート乗り場のスタッフはシニアの方が多いのですが、Airウェイトの導入前にiPadを自宅に持ち帰って操作方法をチェックしていたとのこと。その事前準備が功を奏したのか、大きなトラブルもなかったそうです。
●関連サイト
リクルートライフスタイル
Airウェイト
高千穂峡
特急たかちほ号(阿蘇くまもと空港から高千穂峡までのバス)
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