2014年、鳴り物入りで登場したアップルのモバイル決済”Apple Pay”は、米国や英国で広まっているとの報道があります。しかし、日本ではまだ知名度は低い状態です。
すでに鈴木淳也氏のレポートにあるとおり、国内版の『iPhone 6』でもApple Payを使えることはわかっています。ただ、そのためには“米国で発行されたクレジットカードまたはデビットカードが必要”という点が、Apple Pay利用にあたっての非常に高いハードルになっています。
そこで筆者は、なるべく普通の日本人でもApple Payを試せる方法を編み出すべく、日本語で銀行口座開設ができるというハワイに行ってきました。
↑日本人の家族連れでごった返していた、お盆休みのワイキキビーチ。ほとんどの商店やレストランで日本語が通じる中、なんと銀行口座も日本語でつくれてしまうという。 |
もっとも手軽に米国で銀行口座をつくるには?
現時点でApple Payを利用するためには、米国で発行されたクレジットカードまたはデビットカードが必要です。これは、銀行口座をつくると発行してもらえる、VisaやMasterCardの付いたデビットカードを入手するのが簡単です。デビットカードなら、クレジットカードと違って与信審査が不要です。
一般に米国で銀行口座をつくるには、米国に住所があることや、ソーシャルセキュリティーナンバー(SSN)が求められます。しかし、米国の銀行の中にもSSNなしで開設できるところがあり、Apple Payに対応している銀行として日本から最も近いのがハワイの銀行です。
ほかにも、三菱東京UFJ銀行のユニオンバンクや、米国銀行のグアム支店という手も考えたものの、現時点ではいずれもApple Payに非対応とのこと。しかしハワイなら、海外旅行で訪れる機会も多く、かつ日本語での口座開設が可能というハードルの低さがあります。
ハワイの銀行の中でApple Payに対応していたのは当初“バンク・オブ・ハワイ”のみでしたが、後に“セントラル・パシフィック・バンク”や“ファースト・ハワイアン・バンク”も新たに対応しています。今回はファースト・ハワイアン・バンク(FHB)で口座を開設することにしました。
口座維持費の不要な銀行口座を開設
筆者が訪れたFHBのワイキキ支店は、日本人スタッフが複数常駐していることで知られています。さっそく日本語で口座開設を依頼しました。パスポートに加え、口座に入金するために最低100ドル以上の現金を持っていきましょう。
↑ホノルルにあるファースト・ハワイアン・バンク(FHB)の支店。 |
FHBで開設できる口座にはいくつか種類があるものの、筆者は最も基本的な“トータリーフリー・チェッキング口座”を選択しました。この口座は、米国の銀行によくある預金残高に応じた口座維持手数料がなく、わずかな残高であっても1年に1回以上何らかの利用をすることで無料で口座を維持できます。オンラインバンキングやMasterCardのデビットカードはしっかりついてくるため、Apple Payの利用には十分な仕様です。
口座開設に必要な書類の書き方についても日本語で説明を受けられるため、不安はありません。ただ、気を付けたい点として、英語でのサインを2〜3ヵ所に求められます。いつも日本語のサインを使っている人は、英語でサインする練習をしておくとよいでしょう。
デビットカードやオンラインバンキングのアカウントなどは、口座開設から1週間程度で、日本の住所に郵送で送られてきました。
↑日本に帰るとFHBからの郵便物が届いており、IDやパスワード、PINコードなどが個別の封書に記載されていた。 |
登録は簡単だが、電話による本人確認が必須に
デビットカードが届いたら、実際にiPhone 6に設定していきます。アメリカのApple IDを用いて、iPhoneの地域設定をアメリカに変更すれば、PassbookアプリにApple Payの機能が表示されます。あとは画面の指示に従ってデビットカードを読み取らせれば、登録完了です。
ただ、これだけではApple Payを利用できません。Apple Payの仕組み上、カード番号や有効期限などの情報さえあれば、第三者のiPhoneに勝手にカードを登録される恐れがあります。そこで電話によるアクティベーションが必要とされています。
FHBの場合、Passbookアプリに表示された番号に、ハワイのビジネスアワー(日本の早朝から午前中)に国際電話をかけます。この番号はApple Payなどモバイル決済に特化した窓口になっており、状況説明を省けるのは有難いところ。ただし、日本語のオペレーターはいないとのことで、英語での本人確認をクリアする必要があります。
↑Apple Payを使うためには電話でのアクティベーションが必要。第三者による不正利用を防ぐための、重要な手順だ。 |
カード番号など基本的な情報の確認に加えて、本人確認のための質問にいくつか答えることができれば、確認は完了。オペレーター側の操作でアクティベートが完了すると、直後にiPhoneの画面が切り替わり、Apple Payが利用可能になりました。
↑オペレーターが「いまアクティベートしたよ」と言った直後に、iPhoneの画面も切り替わり、利用可能になった。 |
現時点で日本国内での実用性はほとんどない
さっそくApple Payを日本で試したいところですが、利用できるのはMasterCardの“PayPass”や、VISAの“payWave”に対応した店舗のみ。現時点で利用範囲は極めて限られており、実用的といえる状態ではありません。
そこで筆者は、PayPassを導入している舞浜のイクスピアリに行ってきました。イクスピアリではApple Payが使えなかったとの報告もあるものの、筆者の場合、スターバックスコーヒーと成城石井での決済に成功しました。
↑MasterCardの“PayPass”による非接触決済を導入しているイクスピアリ。本来はPayPass対応の『オリコイクスピアリカード』の利用を前提にしているが、Apple Payも一部で利用できるようだ。 |
↑スターバックスコーヒーや成城石井での決済に成功。ファースト・ハワイアン・バンクの口座からも利用代金をドル換算した額が引き落とされた。 |
一方、イクスピアリのフードコートでは決済に失敗しました。iPhone上では決済が完了したように見え、“前回の取引”の時間も更新されるものの、実際には決済が処理されていないという結果になりました。フードコートのスタッフによれば「イクスピアリが発行したカードなら使えるはず」との説明でした。
↑フードコートではApple Pay決済に成功したような挙動を示すものの、決済は行われなかった。 |
ひとまずApple Payとしてきちんと使えることが確認できたのはよかったものの、日本でも数少ないPayPass対応の施設だけに、なんとかApple Payにも完全対応してほしいところです。
海外ではPayPassが普及を始めており、ロンドンでは交通ICカード“オイスターカード”の代わりにApple Payが使えるなど、本格的な展開が始まっています。筆者も9月にはロンドンを訪問できそうなので、実際に試してくる予定です。
●関連サイト
Apple Pay(英文)
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