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Googleが子会社になる理由 世界最大級の「大企業病」対策へ by 石川温

 8月10日(現地時間)、Googleの創業者であるラリー・ペイジ氏がブログを更新。Alphabet(アルファベット)社を設立し、CEOになるとともに、Googleを子会社化し、サンダー・ピチャイ氏が新CEOに就任すると発表した。

 サイトには「G is for Google」として、26個のAlphabetのうち、GはGoogleの頭文字であるとした。つまり、ラリー・ペイジ氏は、Alphabet社を企業の集合体とし、今後、Googleに匹敵するような会社を25個近く作りたいという意思表示と見てとれる。
サンダー・ピチャイ氏が昇格し、CEOになるGoogleには、検索や広告、地図、Androidといった既存のGoogleサービスを扱うことになる予定だ。

 一方で、現在のGoogleには自動運転やNestやFiber、さらに研究機関であるATAPなど、ウェブ向けビジネスとはやや距離を置く、研究開発中の事業も数多い。これらをGoogleと引き離し、Alphabet社の子会社扱いすることで、自由度を増し、開発を加速させたいという狙いがありそうだ。

Alphabet

 Googleの共同創業者であるラリー・ペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏はどちらかといえば開発者気質であり、自分が開発したいことに集中していたいというのが本音なのだろう。

 ブリン氏が世間で初めてGoogle Glassを発表した2012年のGoogle I/Oを取材したことがあるが、ブリン氏は、自らGoogle Glassを着用し、スカイダイビングをして、基調講演の会場にやってきたのだった。端から見ても「Google Glassを開発するのが楽しくて仕方ない」という感じであったが、一方で「この人が経営陣でGoogleは大丈夫かな」と不安になったものだ。

 現在、Googleの会長であるエリック・シュミット氏がCEOに就任していた頃は、シュミット氏が経営における重要な戦略を担当する一方で、ペイジ氏とブリン氏は技術的な側面を見る、という役割分担がされていた。2011年にシュミット氏が会長となり、ペイジ氏がCEOとなったものの、ペイジ氏はおそらく、GoogleのCEOという肩書きよりも、開発者としての立場に戻りたかったのだろう。

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セルゲイ・ブリン氏

 ペイジ氏はブログで「Google is not a conventional company. (Googleは普通の会社ではない)」と語っているが、もはや世界中の人が使う巨大なウェブサービスとなってしまった。ちょっとでもやんちゃことをすれば、メディアに叩かれ、時には政府ともめることもある。

 いまのGoogleはユーザーのプライバシーもきっちり守る“優等生”として振る舞わなくてはいけない義務がある。

 ペイジ氏としては、かつて自分たちが作ったGoogleではなくなってしまった感があり、何のチャレンジもできない“窮屈さ”を感じていたのではないか。

 また、いまのGoogleは様々なものを研究開発しすぎていて、やや肥大化してしまった感は否めない。新たなサービスを次々と投入する一方で、組織が大きくなりすぎて、小回りが効かなくなる危険性があった。

 現状はまだその雰囲気がないが、さらに肥大化が進むと、スピード感の要求されるIT業界ではたちまち時代に置いてきぼりを食らうことになるだろう。

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ラリー・ペイジ氏

 そんな危機感から編み出されたのがAlphabet社ではないか。

 Googleを子会社化し、稼ぎ頭として位置づけつつ、自分たちは、いろんな子会社を作って好きなようにやれるというわけだ。

 Googleとしての責任はすべて、ピチャイ氏に押しつける形となるが、ピチャイ氏としても、自動運転やATAPといった研究開発まで見るよりも、検索や広告、Androidといったプラットフォームに集中した方が、やりやすいと感じているはずだ。

 今回、ペイジ氏が作ったAlphabet社という枠組みは、ペイジ氏、ブリン氏、ピチャイ氏の3人がぞれぞれ適材適所で、自分のパフォーマンスを発揮できる最高な枠組みような気がしてならない。

Alphabet
サンダー・ピチャイ氏

 ウェブサービスやスマートフォンが世界に行き渡りつつあるなか、これらで今後、爆発的な成長を目指すのは難しい。しかし、これらはすでに我々の生活に根ざしたライフラインであり、Googleにとっても安定した稼ぎ頭であることは変わりない。

 IT企業が新たな成長を目指すには、ウェアラブルやIoT、ロボット、自動運転、ヘルスケアといった、スマホ以外の周辺産業に触手を伸ばす必要がある。すでにGoogleは自社内で開発していたが、今回、組織を変えたことで、さらに周辺産業への開発がやりやすくなるだろう。

 一方、マイクロソフトは『HoloLens(ホロレンズ)』といった新規デバイスへの開発に注力し、Windows 10ではIoT対応も積極的ではあるが、まだ自ら周辺産業に乗り出すというところまでいっていない。

 Appleもスマホ分野では絶大な影響力を持つが、新規事業への参入は、水面下で準備は進んでいるだろうが、表には何も出てきていない状態だ。

 果たして、Alphabet社は、Googleに匹敵するような全く新しい産業を作り出すことができるのか。

 2人の天才の“開発者魂”に期待したいところだ。

■関連サイト
G is for Google(Google Official Blog)
Alphabet

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