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日本アニメーション『THE 世界名作劇場展』が素晴らしすぎてヤバい

2015年08月02日 10時00分更新

「THE 世界名作劇場展」が良すぎて困る

日本アニメーション「世界名作劇場展」に行ったらやっぱり良すぎた件
↑会場入り口ではラスカルがお出迎え。

300点を超える原画や資料を一挙公開

7月のイベントに行くならこれ一択!日本アニメーション「世界名作劇場展」池袋で開催

 東京・池袋にある東武百貨店 池袋店で、7月30日より開催中の『THE 世界名作劇場展 ~制作スタジオ・日本アニメーション 40年のしごと~』を早速見てきた。

 率直な感想をと問われたら、もう「良かった!」としか言いようがない。それがノスタルジーによるものか、美しいものを見た、という感動から出るものなのか定かではないのだけれど、ただただ「良かった」。ものすごく興奮した!とか、ワクワクした!とか、そういうのともちょっと違う。強いて言うなら、昔好きだった子に会うのに少しだけ似ているかもしれない。しかも当時の姿のままで。

 公開された資料は300点を超え、見ごたえは十分。ただし、世界名作劇場は長く続いたシリーズだけに、人によって思い入れのある作品に違いがある。お目当ての1作品に限っていえば、少々もの足りなさも感じてしまうかもしれないが、それでも、各作品ごとに用意された資料は、その作品が好きな人ならきっと喜んでくれるに違いない、と、スタッフが頭を悩ませて選び抜かれたものだと思える。

日本アニメーション「世界名作劇場展」に行ったらやっぱり良すぎた件
↑『フランダースの犬』の展示コーナー。ネロ、アロア、パトラッシュの原画がメイン展示。
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↑「赤毛のアン」のレイアウト画。日曜学校へ行くはずのアンが、途中に咲いていたきれいな花で帽子を飾りたて、遅れて教会に参列し、周囲がざわつくシーン。
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↑ペリーヌは写真屋として旅していた。まだ珍しかった“写真”がどんなものかを説明するために用意されたのが、自身をモデルに撮ったこちらの写真。額縁の裏まで細かな設定が。
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↑「あらいぐまラスカル」の作品展示。こちらは、ラスカル、スターリング、アリスの設定画が中心。
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↑ラスカルの歩みを指定した原画。今にも動き出しそう!
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↑「トムソーヤの冒険」より、トムのキャラクターシート。子供のころには気づかなかったが、今見ると、いかにもアメリカンな少年の風貌を見事に表現したキャラクターだ。デザインは関修一氏。
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↑もちろん、ベッキーもいます。こちらもだいぶんアメリカンの少女を意識してデザインされている。この子、何人だと思う?と問われて、すぐにアメリカ人!と答えられる。それでいてステレオタイプでない、オリジナリティが随所に見られるのが素晴らしい。
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↑「牧場の少女カトリ」。カトリのキャラシートは、全方位版が飾られていた。さきほどのトムソーヤたちと比べると、キャラクター性に重きが置かれて、お国柄は衣装デザインなどに反映されているのがわかるだろう。こちらは高野登氏のデザイン。
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↑「南の虹のルーシー」のキャラ比較表。ルーシーは、オープニングの家族の集合写真が記憶にあるので、こういったキャラの集合絵を見るだけで「おおっ」となるね。
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↑「わたしのアンネット」のキャラ比較表。この段階では、まだ原題の「雪のたから」と表記されている。放映当時から、「雪のたから」は有名な原作であったように思うけど、タイトルを変えることで、より作品のメッセージ性が濃くなっていることが、今ならわかる。「雪のたから」は、神に許される子らの話なのだ。

世界名作劇場展の魅力

 この展示会の魅力を語るのはなかなか難しいのだけれど、私なりに感じたことをちょっと書いてみたい。

 まず、もっとも多く展示されているのが、キャラクターの設定画や原画だという点。

 昨今のアニメ作品は、1クール、あるいは2クールと、割と早いスパンで入れ替わる。その点、世界名作劇場は、1作品に1年を掛けて放映され、その間に、登場人物のキャラクター性を子供ながらに理解し、こういうところが好き、ここはちょっと……といった、キャラに対する、いわゆる愛着を育む時間が多くあった。例えるなら、新しいクラスで同窓になった友達と、1年を掛けて仲良くなるような感覚に近い。先ほど、昔好きだった子に会うような感覚、と書いたのはそのためだ。

 アニメーション作品の展示会だというのに、セル画はほとんど飾られていない。話を聞いたスタッフさんによれば、これは、やはり訪れた人が見たいだろうと思うものを厳選した結果なのだという。

 ただし、セル画がないわけではない。展示されているのは、誰しもが目にしたであろうオープニングアニメのワンシーンだったりするのだ。

日本アニメーション「世界名作劇場展」に行ったらやっぱり良すぎた件
↑「赤毛のアン」のオープニングのひとコマ。絵を観ているだけで脳内に歌が流れだす。

 これなら、その作品をすべて通して観ていなかったとしても、「ああ、あの歌のあのシーンか!」とわかってもらえるのではないだろうか。もちろん、会場に設置されたモニターには、名作劇場の各種オープニングが絶えず流れている。セル原画を観た後、もう一度、思い出の歌に浸ってみるのも悪くない。

日本アニメーション「世界名作劇場展」に行ったらやっぱり良すぎた件
↑背景美術のコーナー。目を凝らしてよく見ると、まっすぐな線は定規で引いたようにまっすぐに描かれ、またそのシーンのカメラの動きによって、微妙なパースがつけられていたりする。まさに職人芸。

 背景美術を集めたコーナーも、また見逃せない展示のひとつだ。

 緻密に描かれた美麗な景色を眺めていると、アニメーションの背景美術の偉大さに気づかされる。アニメの背景画は、いわゆる風景画とは根本的に違う。その風景を、著者の印象ではなく、写実的に、しかし写真のようであってはならず、作品世界にマッチした形に昇華して描かれる。

 特に、世界名作劇場は、景色そのものが主役になることもある。
 寂しい孤児院で暮らしていたアンが、プリンスエドワード島のあまりの美しさに、「まぁダイアナ!なんて素晴らしいんでしょう!私、この湖をきらめきの湖と呼ぶことにするわ!」と叫んで、その眼前に広がる美しい湖が画面いっぱいに広がる。マルコが旅する荒野、ペリーヌが訪れた村々、スターリングとラスカルが舟遊びをしたロックリバー……。キャラクターのみならず、背景にまで演技をさせる。それが世界名作劇場だ。現在のアニメーションでこのテの手法を取り入れているのは、ジブリ作品くらいではなかろうか。

日本アニメーション「世界名作劇場展」に行ったらやっぱり良すぎた件
↑アンを絶叫させたきらめきの湖。これだけでも美しい絵なのだが、これに視覚効果などを加え、画面上では得も言われぬ美しさを魅せる。この手法にやられて、プリンスエドワード島に憧れた少年少女も多かろうと思う。

 日本アニメーションを支えた巨匠たちの仕事を、人物に寄って紹介するコーナーもある。

 多くのキャラクターデザインを担当した関修一氏。たった一人の手から、こんなにも作風の違うキャラクターが生み出されるものか、と思えるくらい、作品によって特徴的なキャラクターたちの原画が並ぶ。

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↑本展覧会のために関氏が描き下ろしたオリジナルイラスト。関氏がキャラデザインを担当した名作劇場作品は、6作品もあり、そのどれもがまったく違う基準でデザインされている。しかし、こうして1枚の絵の中に収まると、まったく違和感がないのがすごい。

 アニメーションの神様と称される森やすじ氏のそれは、ディズニーアニメのようなタッチを思わせる。

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↑「シートン動物記 りすのバナー」。生き生きとして、キャラシートを見ているだけで、どんなキャラクターなのかが想像できる。

 『あらいぐまラスカル』を担当した遠藤政治氏の展示は、イメージボードによる初期のラスカルのデザインから、今なお多くの人に愛されるあの可愛らしいキャラクターが生み出される過程も垣間見え、大変興味深い。幼いころ、ラスカルの姿こそがアライグマだと信じていたが、動物園でタヌキのような生き物だと知ったときにはショックだった(笑)。

日本アニメーション「世界名作劇場展」に行ったらやっぱり良すぎた件
↑キャラクターとして完成前夜のラスカル。まだ本来のあらいぐまに近い?
日本アニメーション「世界名作劇場展」に行ったらやっぱり良すぎた件
↑スターリングのデザインも固まりつつある段階。ラスカルも、最終版にかなり近い。

 宮崎駿氏の『赤毛のアン』レイアウト原画のコーナーは、壁1面を占める大ボリューム。27点に及ぶその展示は、どれもこれも「流石!」と思わせるものばかり。ここでは、中でも私が気に入った何点かをご紹介させていただこう。

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↑宮崎駿氏作画のレイアウトシート群。やはり宮崎さんの画面構成はピカイチ。
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↑今でも宮崎作品によく見られる人物を真横から捉えたシーン。舞台劇を見ているような効果が得られる。
日本アニメーション「THE 世界名作劇場展」に行ったらやっぱりすごく良すぎた件
↑チョコレートキャンディーを食べるアンとダイアナ。もう単純に絵として素晴らしいです、ハイ。

 展示はこれだけに留まらず、当時のプライズ商品や、主題歌の作詞の走り書き、台本になる前の草稿など、さらに貴重な資料まで用意されている。

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↑当時流行ったとびだす絵本の「母をたずねて三千里」版。華やかな彩りがとびだす絵本にマッチしている。
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↑メインスポンサーであったカルピスのプライズ類。名作劇場の前身、カルピス劇場シリーズとして、「アルプスの少女ハイジ」、「山ねずみロッキーチャック」(共にズイヨー制作)などのキャラクターも見える。
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↑ラスカルの木。「あらいぐまラスカル」は実話をもとにした小説で、実際にラスカルの巣穴があった樫の木の一部がこれ。2010年の嵐で倒れてしまった後、スターリング・ノース協会より日本アニメーションに寄贈されたもの。
日本アニメーション「世界名作劇場展」に行ったらやっぱり良すぎた件
↑脚本家、宮崎晃氏による「愛の若草物語」、「ペリーヌ物語」の脚本構成。構成台本は全52~53話分が放送開始前から用意されていたという。カルピスの1社提供であった当時は、夏のプロ野球シーズンでも野球中継などで休むこともなく、毎週きちんと日曜日の夜に放送されていた。
日本アニメーション「世界名作劇場展」に行ったらやっぱり良すぎた件
↑渡辺岳夫氏作曲による、「あらいぐまラスカル」主題歌「ロックリバーへ」の譜面。当時の譜面が清書版でなく手書き譜面で残っていることに驚く。

必ず手に入れておきたいお土産品

 さて、だいぶ個人の趣味に偏った紹介になってしまったが、ここで紹介した以外にも多くの資料が展示されている。紹介しきれなかったお目当ての作品資料については、実際に足を運び、その目で見てほしい。きっとどの世代の方でも、誰しもが満足いく内容になっている。

 そして、帰りがけには、ぜひ物販コーナーも覗いてほしい。見ていると端から欲しくなるからほどほどにしておいたほうが良いと思うが、ひとつだけ、これだけは買っておきたい、という品がある。

日本アニメーション「世界名作劇場展」に行ったらやっぱり良すぎた件
↑最も多いのが、やはりラスカル商品。この展覧会のために用意された会場限定品も多い。

 それがこちらの「THE 世界名作劇場展 展覧会図録」。
 

日本アニメーション「世界名作劇場展」に行ったらやっぱり良すぎた件

 会場に展示された資料を、ほぼすべて網羅したこの図録、会場内にある解説パネルの内容もそのまま収録されている大満足の1冊だ。場内は撮影禁止だが、これさえあれば、いつでもこの企画展の内容を思い出せる。ただし、今手元でこの図録を開いてみても、やはり印刷されたものと、会場で間近に見る生の線では、まるで別物のようにも感じてしまう。 会場を訪れた際には、ぜひ、アニメーションの匠たちが描いた生きた描線を堪能してもらいたい。それを見るだけでも、十分な価値がこの展示会にはある。

 会期は8月18日(火)まで。東京近郊にお住まいの方は、ぜひこの機会に。また、当企画展は、今後2年をかけて国内を巡業する予定だ。地方在住の方は、近隣で開催の報を聞いたら、ぜひ足を運んでみてほしい。きっとそこで、今の自分の中にある大切なものを教えてくれた何かに再会できるだろう。

THE 世界名作劇場展
~制作スタジオ・日本アニメーション 40年のしごと~


■会期
2015年7月30日(木)~8月18日(火)
午前10時~午後8時
(最終日午後5時閉場、入場は各日閉場30分前まで)
■会場
東武百貨店 池袋店 8F催事場
■入場料
一般・大学生800円、中・高校生600円、小学生以下無料
■問合せ先
東武百貨店 池袋店
TEL.(代表)03-3981-2211

© NIPPON ANIMATION CO., LTD. 
© NIPPON ANIMATION CO., LTD. “Anne of Green Gables” ™AGGLA 

■関連サイト
日本アニメーション OFFICIAL SITE
東武百貨店 池袋店

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