10の賛成と反対(ReadWrite Japan提供記事)
ゲスト執筆者のスコット・ガーバーはYoung Entrepreneur Councilの創立者である。
給与や収入その他、昔から秘密にされてきた情報を公開するべきかどうかということについては、多くの議論がある。Bufferなどの企業は全てを公開しているが、他のスタートアップ企業についてはマチマチだ。
賛成する側も反対する側もいる。そこでYECから創業者を選び、情報の完全公開はいいジャッジなのか、それとも結局はビジネスにおいてダメージになるのか意見を求めた。以下、その中で得られた回答を選んでみた。
1. 賛成:オーナーシップと責任感覚を生む
もし誰かにビジネスオーナーとして動いてほしいのであれば、彼らに今ビジネスがどのようになっていて、いい所、悪い所はそれぞれ何かという情報を提供しなければならない。もし情報から隔離されて、ビジネス上の基本的なオペレーションや収入、成長について何もわからなければ、オーナーだという感覚を持つことは非常に難しい。これらの数字をシェアし、相手を秘密が守れる一人前の大人だと扱うことで、その人にオーナー感覚を身につけさせることができる。毎日の仕事に変化が見え、損益計算書の数字が好転すれば、あなたのチームは喜ぶ事になる。
—マット・ ミツキェーヴィチ, Hired
2. 反対: コンテキストを伴わない情報はスタッフを混乱させる
多くの場合、私は財務情報を外部に漏れないようにしている。大事なことは、スタッフはオーナーではなく、また彼らは財務状況の数字をオーナーと同じレベルで見ないということだ。支出や給与、顧客が支払う額などについての大きなビジョンを理解しない。つまりこれらの情報を開示したところで、自分なりに解釈したうえで、置かれている状況に勝手に悩むだけなので、開示の必要はないということだ。彼らがこれらの数字を見る必要があるのだとしたらそれは彼らがビジネスオーナーの経験がある場合であり、ただのスタッフにとって必要なことではない。
—カシー・ペトレイ, Crowd Surf
3. 賛成:問題がある従業員を排除できる
スタートアップ企業で働くということは、従業員は通常と異なる状況に置かれるということだ。ある人はその環境は少々透明性が過ぎると感じるかもしれない。会社に長く在籍し、現状(および収入の)維持に努めたい人たちにとって、このことはマイナスに思えるかもしれない。透明性は従業員に競争を促す。競争をやめさせる自由は経営者にないが、その結果がどうであれ従業員のモチベーションを保ち続け、再挑戦を促させる事は経営者の責任だ。雇用者として改善を評価し、優秀な人材を評価するべきである。
—コーディ・マクレーン, SupportNinja
4. 反対:給与の透明性はいざこざを助長する
企業がどれほど収入をあげ、キャッシュフローがどうなっているかについて顧客、出資者、従業員が把握していることは素晴らしいことだ。しかし給与の情報についてまではやりすぎだ。全員がまったく同じというわけではなく、給与は部門によっても異なる。
給与の透明性はイノベーションやチームワークの助けになるどころか、いさかいや争いを助長するものだ。どのような仕事の結果が評価されるのかを明らかにしてしまえば、新しい従業員はやはり功績を認められ、昇給が期待できるよう頑張るのは自然なことだ。唯一違う事は、給与の情報をプライベートにしておけば、彼らはチームメートと足を引っ張り合うのではなく協力するようになるという点だ。
—ジャレッド・ブラウン, Hubstaff
5. 賛成:給与の透明性は男女の平等性上好ましい
歴史的に技術セクターにおいて女性は給与交渉に不利な立場にあり、時には不当に差別されているということは、多くの人々が知るところだ。しかしスタートアップ企業が皆の給与を全員が知るようにすれば、同じ職級、専門能力、学歴にある男女スタッフは等しく給与を支払われていることを知ることになるため、企業のことをより信頼することにつながる。
反面、給与面での不当な差を隠蔽する事ができなくなり、男性スタッフが他の女性スタッフ全員より多くの賃金を受け取ることになれば、それはすぐに明らかになる。小さなことだし他にやるべき事はある。しかし給与の透明性は賃金の平等性に一役買うだろう。
—デイブ・ネヴォト, Hubstaff.com
6. 賛成:平等性を保つことにつながる
透明性を持つということにより、従業員が自分に期待されることを知ることができる。経営陣および自分のいる集団について知ることはいいことである。例えば営業部の場合、競争を促進するために各従業員のゴールと達成率は透明であるべきだ。スタートアップにとってはこれは特に重要なことだ。小さな企業にいる従業員が大事にされ、隠し事がないと感じるからだ。
—ジャイナ・クック, Eventup
7. 反対:データ過剰の状態に陥りかねない
創業者と管理チームは全体的な透明性とはどういうことを言うのかについてコンセンサスを得る必要がある。そうすることで情報の整合性は会社全体で保たれ、情報は限られた個人か部門でのみ共有される。
完全な透明性はデータがあふれかえる状態を招くだけでなく、それが適切かどうかという問題もまねく。結果として情報が中途半端に理解され、ひいては中途半端な透明性しか実現できない。
例えば財務関連の情報(収入、COGS、支出および売り上げ) を従業員とシェアしていたとしても、給与などを含んだすべてをシェアするわけではない。そうすることが適切でない場合が多いだけでなく、従業員がそれら概要の中で重要な点を見落とすことにも繋がるからだ。
—アンドリュー・ファイアド, eLearning Mind
8. 反対:破滅的な影響を及ぼしうる
会社にもよるが、多くの人がストレスに思うような大きな問題を抱えていることもあるだろう。資金集めなんかは最もいい例だと思う。200万、あるいは20万ドルのファンドを集めることに気をとられているときに、2万ドルの商品を売ることに集中できるだろうか。だが周りの人間の目はそこに向く。そして多くの人はその困難がどの程度のものなのかということを正しく理解しない。
投資を受ける前の会社は一時悪い状態に見えるかも知れない。ひょっとすると大きな投資の話は流れてしまうかも知れない。これらの条件は従業員、それも売り上げがほとんどない状況に慣れていない人を滅入らせるものだ。
—ヴィレ・レートネン, LabMinds
9. 反対:揉め事の種になりうる
コミュニケーションや信頼がはぐくまれていない環境での透明性はグループとの間で多くの揉め事を起こしうる。あるスタートアップ企業が資金集めの段階にあり、それをチームに伝えたらチームはエキサイトするだろう。そして資金投下の提案を彼らにはよくわからない理由で断わり、その理由を彼らが聞ける感じでないとしたら、雰囲気は台無しになる。そのため、会社が立ち上がり、周りの環境が成熟してから情報は安全な形で共有したほうが良い。
財務関係のデータ全てにも同じことが当てはまる。もし不確定要素があるのであれば職場の雰囲気を守るためにも情報は秘密にしておいたほうが良い。情報共有するのは全てが確実になり、どんな質問にも答えられるようになってからだ。
—ヤニス・ジオカス, Crypteia Networks
10.反対:いろいろ試す余地がなくなる
コストの最適化を計るスタートアップ企業を考えた場合、教育レベルの異なる従業員でいろいろ試して最もコストパフォーマンスが良くなるパターンを実験してみたくなることもあるだろう。
例えば営業スタッフを雇う場合、MBA所有者とそうでない者のパフォーマンスを比べてみたいといった場合だ。もちろん彼らの給料は異なるし、給与が完全に公開されていれば従業員は不満を覚える事になりえる。
収益についても似たようなことがいえる。何を収入源とするかについて実験するとき、それが失敗したら従業員は不信感を覚えるのではないかと思い、経営者はいい気はしないだろう。
—プラタム・ミッタル, VenturePact
画像提供:Shutterstock
Scott Gerber
[原文]
ReadWrite Japan
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※本記事はReadWrite Japanからの転載です。
完全な透明性は本当にいい事なのか?
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