米GoogleのMVNO(仮想移動体通信事業者)サービス『Project Fi』の利用申し込みが開始されている。Googleが開始するということで注目を集めているこのMVNOサービス、利用登録するためにインビテーションが必要で、まずはその申し込みからスタートしており、ここ数日で順次インビテーションが送付されているようだ。
筆者も気軽な気持ちで申し込んでいて、7月2日にそのインビテーションが到着。実際に利用登録をしてみようとしたら、意外に難易度の高いものだったのだ……。
そもそも“Project Fi”とは?
↑Project Fiのページ。右上にある“REQUEST INVITE”からインビテーションの申し込みが可能。 |
Project Fiは、Googleによる携帯電話サービスで、米SprintとT-Mobileの2社の回線を借り受けるMVNOサービス。2社の回線を使うことで、その時に最も速い回線を利用し快適な通信が期待できる。公衆無線LANスポットにもシームレスでつながることで、その時々で最適な通信回線を利用できる、というのがメリットだ。
音声通話も可能で電話番号も発行され、MNP(ナンバーポータビリティー)も可能なようだ。月額料金は、基本料金として20ドル(約2500円)が必要で、さらに毎月のデータ容量1GBごとに10ドル(約1200円)が加算されるため、最低料金は1GB/月で30ドル(約3700円)になる。音声通話は米国内で無制限、SMSは米国内でも海外でも無制限となる。
契約したデータ量のうち、使わなかったぶんの料金が返金される仕組みで、1MBが1セント(約1.2円)の計算になる。20ドルあたり2GBの契約して1.5GBしか使わなかったら、5ドルぶん(約600円)が値引きされる。ただ、今ひとつGoogleの説明が明らかではないので、当月ぶんが値引きされるのか、翌月の料金から値引きされるのかはわからない。
国際ローミング料金が抑えられているのも特徴で、日本を含む世界120ヵ国で、米国内と同じ1GBあたり10ドルの料金で利用できる。つまり、国際ローミング料がない、ということになる。ただし、通信速度は上下ともに256kpsに制限されるため、実際には低速で回線コストを下げつつ、米国と同じ値段にしている部分で国際ローミング料金をまかなっているということだろう。
まずはインビテーションを受け取ろう(要・米国拠点)
さて、そんなGoogleのProject Fiだが、Googleの新サービスらしく、まずはインビテーションの申し込みをするところから開始する。法人や個人事業主が導入している“Google Apps”のアカウントでは非対応なので、通常のGmailで使っているGoogleアカウント(●●●@gmail.com)があれば、申し込み自体は誰でも可能。申し込み後、しばらくするとインビテーションが到着することになる。
筆者は4月23日に申し込みをして、6月26日に“インビテーションのステータスを確認できるようになった”というメールが来て、3〜4週間で招待できる、という案内だった。実際にインビテーションが来たのは1週間も経たない7月2日だった。
↑Project Fiのインビテーションメールからアクセスしたページ。この“LET’S GET STARTED”がグレーアウトしていて、先に進めなかった。 |
毎月、基本料金がかかるため、日本在住ではあまりメリットのないサービスではあるが、せっかくなので申し込みをしてみようと思ったのだが、ここでつまずいた。
申し込みページに進んでみると、“米国のGoogleアカウントでないと申し込みはできない”という警告が表示され、先に進めないのだ。Googleアカウントは、作成時に拠点を指定できて、通常はここを現在住んでいる国(筆者の場合は日本)にしているはずで、そういうユーザーは申し込みができないわけだ。
米国で作成したアカウントを持っていても、インビテーションは申し込みに使ったGoogleアカウントにひも付いているため、そのままでは申し込みができない。つまり、日本のアカウントでインビテーション申し込みをしてしまった場合、そのアカウントを米国のアカウントに切り替えなければならないのだ。
ところが、この方法がよくわからない。ネットを検索すると、Googleウォレットサービスから住所を米国の住所に変更すればいい、という方法が検索できるが、筆者は最初から米国の住所を登録しており、それでもダメだった。
もうひとつの方法が、同じくGoogleウォレットから“米国発行のクレジットカードを登録する”方法だ。これがハードルが高い。米国発行のクレジットカードを取得する理由がなかったので、手元にはもちろんそんなものがない。
しかし、ここで使えたのが米国発行のVisaギフトカード。スーパーなどで購入できるプリペイドカードで、あらかじめ購入したぶんを限度額として、クレジットカードと同様に使えるプラスチックカードだ。米国で購入しているため、米国発行のクレジットカードとほぼ同じように使える。
Googleウォレットの支払い方法にこのVisaギフトカードを登録したが、やはりダメ。それまでウォレットに登録してあった日本発行のクレジットカードをすべて削除して、Visaギフトカードのみにしてみる。それでもダメ。
また、ネット検索してみたところ、“Google Playでアプリ購入の支払い画面まで行き、カード選択の画面を出した上で購入せずにそのまま戻る”という方法が見つかり、これを試してみるが、これもダメ。
ところが、言語設定を英語にしてみたり、Googleウォレットからカードの請求住所を米国の住所にしてみたり、いろいろ試していると、いつの間にかProject Fiの申し込み画面から次の段階に進めるようになっていた。正直、どの設定をしたら米国アカウントに切り替わったのかわからない。ただ、少なくとも、米国発行のクレジットカードまたはプリペイドカードが必要なのは確実なので、申し込みをする人は注意してほしい。
ZIPコードやMNPの有無などを確認
さて、実際の申し込みは、まずZIPコードの指定をする。日本在住であれば、これはよく行く地域のZIPにするといいだろう。続いて、MNPにするか、新たな番号を取得するかを選択する。そしてデータ容量の選択画面になる。
↑まずはZIPコードを指定。インビテーション申込時にもZIPコードの登録があるが、それとは特に関係していないので、新たに自由に設定できる |
↑MNPを選ぶか、新たな番号を取得するかが選べる。エリアコード(市内局番)の選択はできるようだ。 |
最低料金は1GB/10ドルで、10GB/100ドルの選択もできるが、とりあえずこれは1GBを申し込む。基本料金20ドルとあわせて30ドル/月(税別)になる。
↑データ容量の選択画面。税金は、各州で異なるので曖昧な表示。 |
そして、再び難所。米国の住所を入力する画面が現れる。たとえば、米国本社に出張が多い人なら、その出張先を指定するといいだろう。
↑住所の指定をする。 |
利用にはNexus 6が必要、SIMだけの注文も可能
さらにNexus 6の購入画面になる。Project Fiは、現時点で“米国版Nexus 6しか対応していない”とされており、32GB版で499ドルの一括払いか毎月20.79ドルを24回払いする分割払いが選択できる。端末が不要ならば、SIMだけを注文することもできる。この場合はすべて無料だ。
↑米国版Nexus 6にしか対応していないため、端末の購入画面になる。下のリンクからSIMカード単体の購入画面に移動できる。 |
↑SIMカード自体は無料なので、この段階で料金は発生しない。 |
その後、支払い情報を入力する。ここで、先ほど登録した米国発行のクレジットカード/ギフトカードが再び必要になる。日本発行のクレジットカードも試してみたが、支払いには利用できなかった。配送先の指定もできるが、ここも米国の住所が必要になる。
↑そして請求先の登録を行なう。米国の住所、米国発行のクレジットカード/プリペイドカードが必要だ。 |
ようやくProject Fiの申し込みが完了。数時間後、無事にSIMがGoogleから発送されたことが確認できた。Nexus 6購入はしていないので、現時点では無料で申し込みできたことになる。
米国外からの申し込みのハードルは高い
↑ようやく申し込みが完了。 |
必要なのは、米国を拠点に設定したGoogleアカウント、米国発行のクレジットカード/プリペイドカード、米国の住所の3点。いずれも、用意できないことはないが、それなりに準備が必要だ。
Project Fi自体は、毎月の基本料金があるため、そもそもよほど頻繁に米国に行くのでなければ安価なサービスとは言えない。実質的にはローミング料金がないとはいえ、256kbpsに制限されるので、あくまで一時的な用途でしかないだろう。
米国のプリペイドカードは、追加チャージするには米国在住者の必要があり、そもそも使い切りのため、毎月の支払いをするためには、そのぶんのプリペイドカードを購入しなければならないというのもハードルが高い。もともと米国ユーザー向けにサービスを構築しているため、国外からの申し込みを想定していないのは当然といえば当然なのだが。
というわけで、Google期待のProject Fi。現時点で、日本から申し込むにはいろいろと難しいサービスということになりそうだ。なお、SIMカードが手元に届き次第、設定や通信速度など細かいところを今後レビューしたいと思う。
●関連サイト
Project Fi(英文)
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