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任天堂に転職したウェブ出身者が驚いたこと:Atmoph Window姜京日代表

nintendo
写真:Janine

「NHN Japanに4年間勤め、『LINE』が誕生してからしばらくして任天堂に転職した。全然違う」

 任天堂『Wii U』でゲーム内オンラインショップなどのユーザーインターフェース開発(デザイン)をしていた姜 京日(かん きょうひ)さんだ。

「一番違うのはハードウェアを扱うところ。ウェブはまず出して反応を見て改良をくりかえしていくが、ハードは故障があるといけないため、ものすごい回数のチェックを繰り返す」

 ユーザーインターフェースの開発にもハードならではの特性が影響したそうだ。

「ゲームは『すべての層』が対象になる。ウェブはおおむね15歳以降を相手に、一定のスキルがある人を相手にしているところがある。一方、ゲームは3〜4歳の子から、お年寄りまで使えなければいけない」

 グローバルで展開している任天堂のゲーム機は、国によって異なる文化や価値観も反映させる必要がある。言語の違いで文章が長くなっても崩壊しないようなデザインを心がける必要があったのだいう。

Kickstarterで2000万円

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Atmoph Window

 ハードとソフト、そしてインターフェースを高度に融合させた任天堂の開発姿勢に深く影響を受けたという姜さん。

 姜さんは任天堂 UI開発の中野恭兵チームリーダーとともにハードウェアスタートアップを立ち上げ、「デジタル窓」こと『Atmoph Window』を開発中だ。27インチ画面に4K解像度の美しい風景を表示し、仮想の窓景をつくるもの。

 家庭、また企業向けに普及を狙う。来年3月の発売に向け、29日から国内のクラウドファンディングMakuakeで資金募集を始めている。価格は6万5000円から。

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スマホで好きな風景を選んで表示する

 国内に先がけてKickstarterで資金募集を始めたところ、今年5月から6月までのわずか1ヵ月で、300人以上から約2000万円もの出資が集まった。世界中の出資者からフィードバックを受けたことは開発の励みになっているそうだ。

「ぼくたちは日本に住んでいるから『海外の風景が見たい』と思っているが、ヨーロッパからは『京都が見たい。京都の風景をもっと撮ってほしい。むしろ日本の風景しかいらない』くらいのことを言われた」

 意外なところで、こんなこともあったという。

「面白いところでは、ハワイの人が3台セットを買ってくれた。風景をずっと見ていると飽きてしまうかもしれない」

任天堂直伝のビジネスモデルで勝負

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27型の窓に世界の絶景が映る

 ハードとあわせ、窓に映す風景を“ソフト”として1枚5〜10ドルで購入させるプラットホームモデルは任天堂の直伝だ。

「映像を追加購入できて、ストリーミングですぐ見始められるようにしている。裏側でダウンロードしておくようにした。任天堂も方式は違うが、ほかのことをしているうちにダウンロードされていて、待つことなくすぐ遊べるのが素晴らしい」

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リアルタイムで風景を表示することもできる

 10年ほど前、住んでいた部屋からビルの壁しか見えなかったことで鬱々としていたという自身の体験から、今までなかった製品の開発を決めた姜さん。初のコンセプトということで、映像もゼロからつくりだしていくのが大変だと話していた。

「『窓のための映像』という概念はない。しかも4Kで、となると一切なかった状態。カメラが動かず、編集されず、という映像はなかったため、水平線の位置などを実験しながら撮影している」

 ハード設計も苦労したそうだ。

 デジタルアートを表示する『FRAMED*』のような先行者はあるが、やはり窓というコンセプトを満足させるハード設計のノウハウはない。キーは発熱だ。

「アートだと額縁のように斜めに立て掛けるが、窓なので密着させないといけない。そうすると熱がこもって基板が熱くなる。なるべく熱くならないようにボードを配置したり省電力になるようなプログラムを心がけている」

日本での展開に期待

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窓枠はオークかウォールナッツ

 ディスプレイをあえてアンチグレアにして“窓が開いてるという開放感”を表現するなど、デジタルならではの面白味にこだわった。

 Makuakeで日本の支援者を募ることで「大都市圏に3000万人もいるとさまざまなストレスの問題があると思う。都市から入ってくる声が楽しみ」と姜さん。

 余談だが、日本のMakuakeがアメリカのKickstarterと違うのはあれこれと企業側のアフターフォローをしてくれる部分だとか。基本的に“放置"のKickstarterに比べてMakuakeは“おもてなし”を重視している側面があったそうだ。

 現在はプロトタイプ制作をすべて完了し、量産のための製造段階に入ったところ。これでついに本当のスタートが切れると姜さんは言う。

「ずっと暖めていたアイデアをようやく世に出すことができる。Makuakeから出資者のみなさんのフィードバックを受けて常に改良・改善を続けていきたい」

写真:Atmoph Window

■関連サイト
Atmoph Window

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