「THE 世界名作劇場展」池袋で開催
↑ラスカルのキャラクターシート。かわいすぎ。 |
門外不出の貴重な資料がズラリ
世界名作劇場は、1975年の『フランダースの犬』を皮切りに、毎年1作ずつ、1年をかけて児童文学の名作をアニメーションで丁寧に見せる人気シリーズでした。その歴史は、1997年放映の『家なき子レミ』まで、実に22年の長きに渡って、日曜日のお茶の間の楽しみでした(2007年にBSフジにて『レ・ミゼラブル 少女 コゼット』、2008年『ポルフィの長い旅』、2009年に『こんにちはアン~Before Green Gables』にて一時復活)。世代によって名前の挙がる作品は違えど、少年・少女時代に、このシリーズで児童文学の世界に感銘を受けたという人は多いでしょう。
このシリーズを手掛けていた日本アニメーションは、創業時から「世界中の子どもたちと家族に向けた、心を豊かに育むアニメーションづくり」を標ぼうする老舗のアニメスタジオ。名作劇場のシリーズ以外にも、『ちびまる子ちゃん』や『みつばちマーヤの冒険』、『未来少年コナン』など、多くの子ども向け作品を世に送り出しています。
世界名作劇場の放映開始、あるいは日本アニメーションの創業から数えて40周年にあたる今年、東京・池袋にある東武百貨店 池袋店で、7月30日より、『THE 世界名作劇場展 ~制作スタジオ・日本アニメーション 40年のしごと~』が開催されます。
↑「みつばちマーヤの冒険」のイメージボード。遠藤政治によるもの。 |
↑「あらいぐまラスカル」のイメージボード。こちらも遠藤政治。 |
この企画展では、これまで門外不出とされてきたキャラクター設定の原画や初期のイメージボード、あの宮崎駿が描いた『赤毛のアン』のレイアウト原画、美術監督・井岡雅弘、椋尾篁による背景画など貴重な資料が展示されるとか。これは見たい!
↑井岡雅弘による「赤毛のアン」の背景画。グリーンゲーブルズの馬車道。 |
世界名作劇場制作秘話
世界名作劇場の制作に関する逸話は多くあります。
『フランダースの犬』の有名なラストシーン、教会のルーベンスの絵の前でネロとパトラッシュが天使に連れられ天へと昇っていくあのラスト。原作ではネロとパトラッシュは同じ墓に入れられる、というシーンで終わります。しかし、これではあまりにも無慈悲過ぎると、メインスポンサーであるカルピス(当初はカルピス劇場といい、1社提供だった)の当時の社長であった土倉冨士雄氏の提案により実現したものなのだとか。土倉社長は熱心なクリスチャンで、キリスト教では死は終わりを意味せず、神のもとに召される通過儀礼として存在するため、あのような表現になったのだといいます。
↑「フランダースの犬」のワンシーンの原画。 |
↑ネロのキャラクターシート。「なんだかとっても眠いんだ…」 |
↑こちらはヒロインのアロア。「ネローっ!!!!!!!!!!!!」 |
また『母をたずねて三千里』は、実は『クオレ』という小説の中に登場する劇中劇で、主人公の少年が学校の教師から聞かされた話のひとつとして書かれ、原作ではわずか30ページしかなく、それを1年間のアニメーションにしてしまうという、ものすごい力技でつくられた作品なのです。『クオレ』は、名作劇場にはラインアップされていませんが、『愛の学校クオレ物語』として、やはり日本アニメーションによりアニメ化されています。
↑こちらは椋尾篁の「母をたずねて三千里」背景画。ジェノバの港町かな? |
もうひとつ、世界名作劇場の中でも、特に名作と名高い『赤毛のアン』。私もいちばんのお気に入りです。この作品も逸話が多いですが、実はこの作品を手掛けていたスタッフは、いまいちアンのキャラクター性が理解できず、あまり思い入れがなかったのだとか。そのため、ほぼ原作に忠実に製作し、それがかえって良作となった所以であると言われています。
また、この作品、最初はあの宮崎駿氏が参加していましたが、途中の第14話で降板してしまいます。降板理由は諸説ありますが、宮崎さんが抜けてもアンは無事名作中の名作として完結しましたし、宮崎さんは、降板直後に『ルパン三世 カリオストロの城』の監督に就任し、結果的にアニメ界の金字塔が2つも立ったのですから、これはこれで良かったのかも?
↑宮崎駿による「赤毛のアン」のレイアウトシート。アンのセリフは長いので割愛。 |
世界名作劇場は、長らく続いたシリーズだけに、こういったエピソードには事欠かないわけですが、漏れ伝わってくるのは制作にまつわるエピソードだけ。1970年代に起こったアニメブームの際には、当時放映されたさまざまなアニメ作品の設定画や原画などが世に出回りましたが、世界名作劇場に関連するものは、あまり見かけることはありませんでした。その、幻の資料が一挙に公開されるというのですから、これはもう見ないわけにはいかないでしょう!
↑「愛少女ポリアンナ物語」の設定画。良かった探し。 |
↑「私のあしながおじさん」の主人公ジュディ・アボット。 |
↑「愛の若草物語」次女のジョー。若草物語は本来ジョーが主人公なのに、アニメ版は末っ子のエイミーが主役だった。 |
今思えば、自分の子供時代は本当に幸せだったのだと思います。当世では視聴者におもねったアニメ作品も多い中、当時は子供や家族のためのこうした作品がテレビを彩っていたのですから。私事で恐縮ですが、自分に子供ができたとき、世界名作劇場シリーズがテレビ放映されていないことを、本当に残念に思いました(仕方ないのでDVDを買って見せましたが)。しかし、自分が子供のときには、当たり前のようにテレビの中にあるものだから、その有難さには気づかなかったのです。私が世界名作劇場の世界に真に魅せられたのは、実は大人になってからでした。今もって色あせない柔らかな線と動き、世代を超えて愛されるキャラクター、いつ見ても涙腺を崩壊させるストーリー…等々。
この夏、たったひとつしかイベントに行けないとしたら、私は迷うことなくこの企画展を見に行きたいと思います。子供の頃の宝物の秘密を覗きに行くような気持ちで。
併せて観ておきたいこの夏の映画
もしあなたが、この企画展に大いに興味を抱かれたのなら、こちらの映画もおすすめです。
日本アニメーション40周年記念作品
『シンドバッド 空とぶ姫と秘密の島』
キャラクターデザイン・作画監督に多くの世界名作劇場作品に原画マン、作画監督として携わってきた佐藤好春、監督は「ドラえもん のび太の恐竜2006」の宮下新平。アニメーション制作は、もちろん日本アニメーション。こちらは、7月4日(土)より公開。世界名作劇場の新作と思って見に行けば、楽しさも倍増すること間違いなしですよ!
THE 世界名作劇場展
~制作スタジオ・日本アニメーション 40年のしごと~
■会期
2015年7月30日(木)~8月18日(火)
午前10時~午後8時
(最終日午後5時閉場、入場は各日閉場30分前まで)
■会場
東武百貨店 池袋店 8F催事場
■入場料
一般・大学生800円、中・高校生600円、小学生以下無料
■問合せ先
東武百貨店 池袋店
TEL.(代表)03-3981-2211
© NIPPON ANIMATION CO., LTD.
© NIPPON ANIMATION CO., LTD. “Anne of Green Gables” ™AGGLA
© プロジェクト シンドバッド
■関連サイト
日本アニメーション OFFICIAL SITE
東武百貨店 池袋店
シンドバッド 空とぶ姫と秘密の島
35,126円
11,340円
13,608円
19,656円
29,534円
15,807円
11,340円
11,340円
11,340円
2,413円
13,654円
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