西宮市ツイッター“乗っ取り”との発表も、ゲーム内のツイート機能の可能性大
6月18日に、神戸新聞・時事通信などが「公式ツイッター乗っ取られる=無関係の書き込み−兵庫県西宮市(時事ドットコム)」と報道しています。
↑西宮市の公式Twitterアカウントから6月17日19時47分に流れたツイート。ゲームアプリの宣伝ツイートだった。 |
17日夜に、西宮市の公式ツイッターから「【緊急速報】我がサークルの姫、心なしか可愛くなった件」との題名と、ゲームアプリのURLが流されたためです。時事通信は“兵庫県西宮市は18日、公式ツイッターが一時何者かに乗っ取られ、無関係の書き込みがされたと発表した。”と流しましたが、この発表自体が間違っている可能性が強くなっています。
乗っ取りではなく、“ゲーム自体にあるツイート機能”である可能性が強いのです。
人気アプリ『オタサーの姫〜僕らの姫はデリケート〜』のツイート機能
↑短縮URLの飛び先は、アプリストアへのダウンロードリンク(不正な連携アプリは経由していない)。『オタサーの姫〜僕らの姫はデリケート〜』という育成系ゲームアプリだ。 |
問題のツイートにあった短縮URLは、育成系のゲームアプリ『オタサーの姫〜僕らの姫はデリケート〜』のダウンロードリンクでした。このゲームアプリは、以下のように動作します。
『オタサーの姫〜僕らの姫はデリケート〜』では、ゲーム内の“オタク”を集めると成長する。 |
まずは“オタサーの姫”を育成するために、ファンとなるゲーム内の“オタク”を集めます。最初のオタクを集めると、成長してグレードアップします。この時に次のように表示が出ます。
グレードアップするために、TwitterやFacebookで宣伝すると、より早く成長できるようになる。 |
「現実世界に勧誘(シェア)すると、普段よりたくさんのオタクが現れます!」
つまり、ツイートやシェアをすると、より早く育成できるわけです。TwitterやFacebookで宣伝してくれたら、早く育成できるというわけで、スマホゲームによくあるパターンですね。この時にTwitterを選ぶと、以下のような画面になります(iOSの場合)。
iOSで“ツイートする”を押した場合の画面。iOSに登録されているアカウントから流される。西宮市の担当者が、この画面で間違ってツイートした可能性が高い。 |
iOSにTwitterアカウントが登録されている場合、このままツイートボタンを押せば、宣伝ツイートが流れます。ここで表示されている短縮URLは、西宮市がツイートしたものとまったく同じもの。
つまり西宮市のTwitterアカウントは乗っ取られたのではなく、“担当者がゲームをやっていた”可能性が高いのです。
西宮市のTwitter担当者が、自分のスマホでゲームをやっていたのでしょう。その時に間違って、西宮市の公式アカウントを選んでツイートしてしまった、というのが真相だと思われます。
何でも“乗っ取り”のせいにするのはやめましょう(笑)アカウント運用にはご注意を
Yahoo!リアルタイム検索で、該当のツイートを検索すると、まったく同じタイトル・同じURLのツイートが多数見つかります。1時間に数百件流れることもあります。これは、ゲーム利用者によるツイートだと思われます。
Yahoo!リアルタイム検索で、同じツイートを検索した結果。まったく同じURLのツイートが、多い時で1時間に500件以上も。ゲーム利用者によるツイートだと思われる。 |
Twitter連携アプリによるスパムの可能性も考えられましたが、書かれている短縮URLは、アプリストアへのダウンロードリンクへ直接飛ばすものであり、不正な連携アプリは導入されません。そのため、今回の西宮市のツイートは、不正な連携アプリのせいではなく、上記のようなゲームの機能である可能性が強くなっています。
それにしても西宮市のTwitter担当者は、なぜスマホに公式アカウントを入れていたのでしょうか? スマホに公式アカウントを登録していたために、このようなトラブルが起きてしまいました。
また、西宮市による報道発表も、よく調べずに発表している可能性大です。発表では“乗っ取りの可能性があるのでパスワードを変更した”とされていますが、乗っ取りではないので、見当違いです。それよりも“担当者が間違えてゲームのツイートをしてしまいました。ごめんなさい”と発表するべきですね(笑)。
今回は笑い話で済みましたが、複数のTwitterアカウントを利用している方はどうぞご注意を。iOSでは、OS自体にTwitterのID・パスワードを登録するため、今回のゲームのようなツイート機能では、別のアカウントから流れるミスが起きるかもしれません。
複数のTwitterアカウントを運用する方は、ぜひとも“1クライアント1アカウント”にしてください。ひとつのクライアントアプリごとに、登録するアカウントを変更すれば、間違える可能性が低くなるからです。企業などの公式アカウントを運用する方は、パソコンや端末ごと専用にしたほうが無難です。
(2015年6月18日23時10分追記、タイトルも一部修正しました)
なお、この件について、アプリの開発元のピッタイト(PITTITE)は、公式Twitterアカウントで以下のようにツイートしています。
“アプリ「オタサーの姫」は自動でツイートされません。 ツイートでシェアするとボーナスがもらえる機能があるだけですし、するかしないか自分で選べます
— ピッタイト《オタサーの姫公式》 (@pittite3) 2015, 6月 18
“アプリ「オタサーの姫」は自動でツイートされません。 ツイートでシェアするとボーナスがもらえる機能があるだけですし、するかしないか自分で選べます”とのことで、自動的にツイートするわけではないとのことです。
また筆者に対して、西宮市議の川村よしと氏から、以下のようなご指摘をいただきました。
@mikamiyoh はじめまして。 西宮市議の川村と申します。 今日担当課に確認したところ「担当者のせいではないと証明できます」と言われたのですが、調査を続けてみます。 Twitter導入の提案は、数年前に自分が行ったという経緯もあるので…。 情報提供ありがとうございました。
— 川村よしと (@kawamurayoshito) 2015, 6月 18
“今日担当課に確認したところ「担当者のせいではないと証明できます」と言われたのですが、調査を続けてみます。” とのこと。
(2015年6月19日10時17分追記)
19日9時に、西宮市役所広報課に電話取材したところ、以下のようなコメントが得られた。
18日に記者クラブで、Twitterで意図しない書き込みがあったことを発表しましたが、市役所としては“原因が乗っ取り”だとは発表しておりません。「ログインパスワードの問題なども考えられるが、詳細はまだわからず調査中です」という発表をさせていただいております。週刊アスキーの記事にあることも含めて、詳細を調査・確認中です。
“乗っ取り”との表現は、新聞社などの報道によるもの。広報課では「乗っ取りとは断定していない。原因を調査中」というのが事実のようだ。筆者の推定にはなるが、コメント取材時の伝達ミスなのかもしれない。
なお、広報課によると、Twitterの運用は「外部には委託しておらず、広報課の職員が運用している」とのことだ。西宮市役所による発表を待ちたい。
【ITジャーナリスト・三上洋】セキュリティ・ネット事件・携帯料金が専門。テレビ・ラジオでの専門コメント多数。ITジャーナリストと称しているが、実際は“IT野次馬”であり、ツイッターやツイキャスを用い、事件現場から速報するのが趣味。
(C)PITTITE
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