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TITAN Xより断然お得!『GeForce GTX980Ti』速攻レビュー

2015年06月01日 07時00分更新

 2015年6月1日、NVIDIAは3月に投入したTITAN Xをベースにした新しいハイエンドGPU『GeForce GTX 980Ti(以降GTX980Ti)』を発表しました。最近のGeForceしか知らない人にはピンと来ないかもしれませんが、製品型番につく“Ti”は無印よりも高スペックなことを示します。つまりGTX980より上だけど、NVIDIAの最高峰であるTITAN Xよりは下、という位置づけになります。言い換えればGTX900シリーズの新フラッグシップというところでしょうか。

 TITAN Xは“4Kでもゲームを最高画質で楽しめる”ことを狙ったコア中のコアなエンスージアスト向けの製品であるため、実売価格は最低でも14万円(アメリカでは999ドル)と異次元の価格設定でした。一方GTX980Tiの予価は649ドルという設定で、日本円で8万円前後ですが、為替の影響で9万円〜10万円になるのではないでしょうか。GTX980が499ドルという設定で、現在発売中の安価なモデル6万円台後半から、高級OC版が8万円からという現状を考えると、結構頑張った感じです。

GeForce GTX980Ti
↑開発コード「GM200」のコアを使ったGTX900シリーズの新たな最速モデルが『GTX980Ti』です。

■メモリー6GB搭載だがクロック周りはTITAN Xと全く同じ
 GTX980Tiの開発コードは“GM200”、すなわちTITAN Xの設計をそのまま転用しつつ、SP(CUDAコア)等を少し削ってコストダウンしたもの、ということになります。ここで重要なのは“何が減り、何が増えたのか”ということ。まずはGTX980Tiのスペックを比較してみます。

  GeForce GTX 980Ti GeForce GTX TITAN X GeForce GTX 980
アーキテクチャー GM200(Maxwell) GM200(Maxwell) GM204(Maxwell)
製造プロセス 28nm 28nm 28nm
SP数 2816基 3072基 2048基
コアクロック 1000MHz 1000MHz 1126MHz
ブーストクロック 1075MHz 1075MHz 1216MHz
メモリー転送レート(相当) 7GHz相当 7GHz相当 7GHz相当
メモリー搭載量(バス幅) GDDR5 6GB(384bit) GDDR5 12GB(384bit) GDDR5 4GB(256bit)
TDP 250W 250W 165W
外部電源 8ピン+6ピン 8ピン+6ピン 6ピン×2

 

GeForce GTX980Ti
↑「GPU-Z」でGTX980Tiの情報を見てみましたが、アプリ側の情報更新が追いついてないためか、情報がかなり欠けていたり、誤記もみられます。

 SP数はTITAN Xの3072基から2816基へ、搭載メモリー(VRAM)は12GBから6GBへ大幅に減りましたがその一方でメモリーバス幅は384bitのまま。さらにベース(コア)クロックとブーストクロック、TDPや補助電源といった仕様はTITAN Xと全く同じ、という点に注目です。上位GPUをスペックダウンして下位モデルを作る場合、クロックは上がることのほうが多いものですが、今回はTDP的に250Wに収めるのが難しかったのか、クロックも完全に据置かれています。

 ユーザーとして気になるのはVRAMの搭載量が半分になった点でしょうが、実際問題VRAMが12GBもあっても、大抵のゲームは4~6GB程度消費して頭打ちになる(それ以上使おうとしても描画能力が追いつかない)ため、これは適性な変更といえるでしょう。ボードの裏にもメモリを搭載したTITAN Xの場合、裏面メモリーチップがかなりの熱をもつ(軽く80℃位まで上がる)ため、むしろ裏面のメモリーチップが消えてくれたことでかなり扱いやすくなった、といえます。

GeForce GTX980Ti
↑GTX980Ti(上)とTITAN X(下)の比較。クーラーのカバーが違うだけで、両者は全く雄ねじ大きさです。
GeForce GTX980Ti
↑TITAN Xは裏面にもメモリーチップがありますが、GTX980Tiにはありません。なお、GTX980では標準装備だったバックプレートはSLI構成時の放熱性を上げるため省略されました。
GeForce GTX980Ti
↑TDPはTITAN Xと同じ250Wに据え置かれたため、外部電源も同じ8ピン+6ピンという構成です。
GeForce GTX980Ti
↑端子部の構成もチェックすると、HDMI2.0対応やDisplayPortが3基並ぶ構成も同じです。

 さてGTX980Tiのカードは発表と同時に発売が開始されますが、初期流通分は全て今回試したものと同じリファレンス仕様です。ただし今後やや遅れて(噂では1ヵ月程度?)各メーカーから独自クーラーを搭載したモデルが投入される予定です。おそらくCOMPUTEX TAIPEI 2015で各メーカーの動きが判明することでしょう。リファレンスクーラーは高性能ではありますが、せっかく第2世代MaxwellベースのGPUを使うなら準ファンレス仕様の製品を使いたいものです。

ベンチ環境は?
 それではテスト環境を紹介します。今回は機材調達の都合上比較対象としてTITAN XとGTX980と対決させます。GTX980は売れ筋上位のMSI製OC版ですが、GTX980Tiがこれをどの程度引き離せるかが見どころです。

●検証用PC構成 CPU:Core i7-4670K(3.4GHz、最大3.8GHz)、マザーボード:ASRock Z97 Extreme6(Intel Z97)、メモリー:Corsair CMY16GX3M2A2133C11(DDR3-2133で使用、8GB×2)、SSD:Crucial CT512M550SSD1(512GB)、電源ユニット:Corsair RM650(80PLUS Gold、650W)、OS:Windows 8.1 Pro(64ビット)、ドライバー:GeForce 352.90(GTX980Ti)、GeForce 352.86(それ以外)
●比較用グラボ GeForce GTX TITAN Xリファレンスカード、MSI『GTX980 GAMING 4G』(GeForce GTX 980)

■GTX980を大きく突き放す!
 手始めに定番『3DMark』のスコアーを比較してみます。テストはフルHD想定の“Fire Strike”と、4K想定の“Fire Strike Ultra”を使用しました。

GeForce GTX980Ti

 スペック最強のTITAN Xがトップなのは当たり前ですが、そのすぐ後にGTX980Ti、GTX980はかなり後ろという印象です。負荷の強烈なFire Strike Ultraでは接戦の印象がありますが、負荷の比較的軽いFire StrikeではGTX980TiがいかにTITAN X寄りなのかが分かります。TITAN Xベースの設計は伊達ではない、ということですね。

 次はリリースが直前に迫った『ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド』公式ベンチを試してみます。解像度はフルHDと4K、画質は一番上の「最高品質」に設定しました。無論描画APIはDirectX11を指定しています。

GeForce GTX980Ti

(2016年2月18日修正:初出時、グラフの画像が間違っておりました。お詫びして訂正いたします)


 描画が比較的軽めなせいか、3DMarkのFire Strikeの結果を裏付けるような結果になりました。SP数が256基減ったところで、スコアーはほとんど減りません。むしろTITAN Xは3072基もSPがあっても持て余している感すらあります。GTX980Tiなら4K解像度でも快適に遊べそうです。

 続いては世界的なヒットとなった『Grand Theft Auto V(GTAV)』で試してみます。このゲームはベンチマーク機能を備えていますが、今回はこれを使わず実際にゲーム中に『Fraps』でフレームレートを計測してみました。解像度はフルHDと4Kの2通り、画質については以下のスクリーンショットをごらんください。

GeForce GTX980Ti
↑フルHD検証時の設定。“高度なグラフィック”設定は全て最重になるよう設定してあります。
GeForce GTX980Ti
↑4K検証時の設定。
GeForce GTX980Ti
GeForce GTX980Ti

 画質設定をMax近くまで上げたせいか、4Kではどのカードも平均30fpsいかない非常に厳しい結果が出ましたが、ここでGTX980がひときわ低いフレームレートである点に注目です。これはSP数が少ないことよりも、VRAM使用量が5.8GB程度まで膨れ上がってしまうため、VRAM4GBのGTX980ではデータのやりくりに足をとられてしまうためです。その点GTX980Tiはこの条件でもVRAMにはわずかな余裕があるため、描画性能は高くなります。

 ここでもSP数が一番多いはずのTITAN Xと980Tiの差がほとんどない点に注目しましょう。VRAM12GBあっても、重いModをテンコ盛りにしない限り4Kゲーミングでは無用の長物です。ただ筆者の経験上『アサシンクリード ユニティー』は素の状態でも4K+最高画質にするとVRAM消費量は7.8GBあたりまで来るため、GTX980Tiなら何でも安心、という訳ではなさそうですが。

 最後に消費電力をチェックしてみます。『Watts Up? PRO』を使いシステム起動10分後および3DMarkのFire Strikeデモ実行中の同一シーンにおける消費電力を計測しました。

GeForce GTX980Ti

 SP数がちょっと減ったところでベンチスコアーに大差が出ないのと同じように、980Tiの消費電力は上位のTITAN Xに迫る勢いです。とはいえ、600W程度の電源ユニットでも余裕で養えるあたりはさすが第2世代Maxwellといえるでしょう。

■まとめ:6GBの効果は絶大。4K狙いならGTX980Tiをファーストチョイスにすべし

 予想価格9万円~という時点で「カンタンには買えないでしょ!」という声も聞こえてきそうですが、純粋に性能だけを考えればGTX980の弱点、メモリーバス幅の狭さと搭載量の少なさを補ったまごうことなき新ハイエンドモデルに相応しい内容である、といえます。フルHD~WQHDならGTX980でも十分渡り合えますが、今どきのグラフィック重視ゲームだと4K解像度ではVRAM6GBというスペックは非常に魅力的。VRAMが大幅に不足すると読み込みは遅くなるわ、フレームレートも下がるわで全く良いところがありません。超高画質でゲームを楽しみたいなら、GTX980Tiをファーストチョイスにすべきでしょう。

 ただし気になったのは発熱量が多いせいか、動作中のGPUコアクロックがおおよそ1037MHzとかなり低めで安定していたことでしょうか(HWiNFO64での実測値)。TITAN Xも発熱量の大きかったGPUですが、今回のGTX980Tiもリファレンスクーラーではちょっと冷却が間に合ってない印象。GPUの性能をフルに発揮させたいなら思い切って水冷にするか、後々出てくるであろうオリジナルクーラー搭載モデルを待つのもアリでしょう。

■関連サイト
NVIDIA

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