5月13日にNTTドコモ、14日にKDDIと連続して開催された夏モデル発表会が終わり、本日19日には久しぶりにソフトバンクの発表会が予定されています。
石川温氏の記事にもあるように、ドコモはローソンとの業務提携の話が、KDDIは物販事業“au WALLET Market”の発表が中心になり、かつて発表会の主役だった新端末の存在感は、すっかり後退してしまいました。
ドコモの発表会では、ローソンとの業務提携の内容や新たなポイントシステムの発表が中心になった。展示会場には夏モデルの新端末が並んだものの、最も目立っていたのはローソンの店舗を模した展示だった。 |
KDDIはCMキャラクターとのトークセッションを先頭に持ってきた上に、発表会の目玉は物販事業“au WALLET Market”の紹介になったことでモバイルやIT系の記者からは不満の声も上がった。 |
果たして今後、キャリア発表会において、端末が主役になることはあるのでしょうか。
■“ツートップ買い替え”需要は本当にあるのか
2015年夏といえば、2013年夏に話題となったドコモの“ツートップ”から2年が経過し、大きな買い替え需要があると言われてきました。
これに対して、たしかにドコモは低価格モデル『AQUOS EVER』や、コンパクトモデル『Xperia A4』を投入してきました。しかしAQUOS EVERは、最近のスマホとしては分厚く、安価に振りすぎた印象があります。型落ちのハイエンドAQUOSを安く購入する機会があるならば、そのほうが満足度は高いでしょう。
一方、Xperia A4(エースフォー)は、ベストセラー端末であるXperia Aの後継機であることがひと目で分かるものの、ハードウェアはXperia Z3 Compactと同等。さらに本体サイズなどの基本設計は2013年冬の『Xperia Z1 f』から引き継いでおり、“今さら”感は否めません。
まだまだ国内ではiPhoneの勢いが衰えないことも相まって、2年契約の満了を迎えるツートップユーザーの視線は、安くなったiPhone 6や2015年版の次期iPhoneに向けられる可能性が高いといえます。
■技術が先行した感のある“虹彩認証”スマホ
そんなキャリア発表会の中でも、注目の端末がなかったわけではありません。ドコモの発表会で、端末紹介のわずかな時間枠の中でデモを行ったのが、虹彩認証スマホ『ARROWS NX F-04G』でした。
発表会で虹彩認証を実演するなど、ドコモは富士通の『ARROWS NX F-04G』を大きく取り上げた。 |
富士通は虹彩認証技術を3月のMWC2015で披露し、「なるべく早くコンシューマー製品に搭載して発売したい」と意気込んでいました。それがさっそく夏モデルとして登場したわけです。
たしかに虹彩によるロック解除や、ID/パスワード入力の便利さは分かります。ただ、ARROWS NXが魅力的なスマホかどうかは別問題です。大画面にも関わらず本体厚は8.8mmもあり、しっかりとしたボリュームを感じます。眼球の”虹彩”という概念も、一般には馴染みが薄く、技術が先行しすぎた感があります。
指紋認証では、先に実用化していたのは富士通だったにも関わらず、まるでアップルが発明したかのようなイメージが、グローバルでは作られています。技術だけでなく、スマホとして魅力あるパッケージに仕上げることができなければ、虹彩もまた他社に手柄を横取りされるのではないでしょうか。
■既存モデルが無難にバージョンアップしたKDDI
KDDIの夏モデルは、これまでに発売してきた全スマホブランドを更新するという、一見するとインパクトのある構成でした。ただ、その中身を見てみると、ほとんどが手堅いバージョンアップにとどまった印象があります。
いずれも前モデルの時点ですでに完成度は高かっただけに、慌てて買い換えるほどの目新しさがないのが残念なところ。強いていえば、既存モデルへのアップデート提供が進まないAndroid 5.0を使ってみたい人に、訴求するくらいでしょう。
その中でも確実に面白い端末が、海の中で使えるという『TORQUE G02』です。スマホ用の防水ケースは存在するものの、装着時にはなにかと不便になるものでした。しかしTORQUEなら、そのまま海に持ち込んで写真を撮影・共有することが可能。夏休み前に投入するというタイミングの良さも、好印象です。
京セラによるタフネススマホ『TORQUE G02』は、新たに海中での動作に対応。展示会場では熱帯魚が泳ぐ水槽の中でデモを行った。海で落としても沈まないよう、ストラップ穴に取り付ける“浮き袋”などのアクセサリーも魅力。 |
■キャリア端末が果たす役割は限定的になる
もはや携帯キャリアの競争は、端末やネットワークにとどまらず、決済やコンテンツ配信、全国のリアル店舗などを組み合わせたプラットフォームレベルの争いになりつつあります。その中で端末の果たす役割は、ごく限定的なものになっていくでしょう。
最新機能を横並びで搭載するキャリア端末は、どれを選んでも大きく失敗することがない、という安心感が特徴といえる。 |
しかし最新スマホを追いかけているユーザーにとって、これは面白くない傾向です。この点について両キャリアは、MVNOや格安スマホ市場の動向も注視しており、それらをラインアップに採り入れたり、場合によってはKDDIのFirefox OSのように別プロジェクトとして立ち上げることもある、としています。
今後は、万人向けのキャリア端末とSIMフリー市場の“とがった”端末とのコントラストを楽しむのが、正解かもしれません。
山口健太さんのオフィシャルサイト
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