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「ネットのハードコアポルノに誰もがアクセスできる一方、セックスについてまともに話す場所がない。現在のインターネットは、『悪い意味での性教育』になっている」
11日、東京・大手町。メディアの未来を考えるシンポジウム『iMEDIA SUMMIT』は、セックスを連呼する基調講演で幕を開けた。
セックスについて語るパンキッシュな女性はシンディ・ギャロップ(Cindy Gallop)。広告業界からIT業界に入り、ウェブサービスを立ち上げている。
Cindy Gallop |
1つは『If I ran the world, I would...』。「もし自分が世界を牛耳ったとしたら?」と、人生観と仕事観を問い直すサイトだ。そしてもう1つが『make love not porn』。セックスについてあけっぴろげに教える場として2009年にオープンした。
「ポルノの世界ではこれが起きている、現実ではこれが起きている、と言うためにサイトを立ち上げたの。私たちは実世界のセックスについて話したり、情報をシェアできるべきよ。ふだんTumblr、Facebook、Twitterで話してるようにね」
ビデオ屋が作ったポルノと現実のセックスとはまったくちがうのに、なぜそれを誰もまともに言わないの。それは男たちが、男たちのために、男たちの欲望にもとづいて作ったセックスの世界だって。そう思ったシンディは、TEDで講演したこともある。
「現状をわかってもらうにはハッキリ言わなければいけないと、世界に向けて『セックス』を連呼したわ」
TEDでの講演後にはサイトを通じて何千通ものメールを受け取ったそうだ。
「ストレート、ゲイ、すべての人から。もちろん、日本人からもね」
最初は普通のメディアサイトだったが、最近はユーザー投稿型の有料アダルト動画レンタルサービス『makelovenotporn.tv』も立ち上げている。投稿者と同社のレベニューシェアで、動画は同社の審査あり。いまではユーザー数にして35万人、米国5割・中国5割の国際的なサイトになっているらしい。
「ポルノと競争しているわけではなく、これは自己表現ができる場所。実世界で起きていることを共有できる」
とはいえ、まあ傍目にはエロ動画の共有サイト。銀行がお金を貸してくれることはなく、資金繰りに奔走する毎日とのこと。けれども、セックス・コミュニケーションをベースに収益化をはかれば、将来の利益規模は大きいはずだとシンディは見ている。
「利益をあげる余地はある。実世界でのセックスを公にすることで、新しいビジネスになる。社会的に受け入れられるセックスは大きい。利益は今後2~4倍になるはずよ」
振り返れば日本にも投稿エロ雑誌の文化はあったわけだし、それがインターネットに入ってきたと思えば自然なことだ。要は、知るべき情報が知るべき場所に置いてあればいいという話であり、既存のプレイヤーが解決できていない問題だ。
問題なのはまとめサイトに表示される露骨なエロ漫画バナーや、グーグル検索結果にずらずら出てくるエロ情報。知るべきではない情報が出てきてしまうことだ。
ともあれシンディが未来のメディアを作るために必要と考えているのは、自分のやり方を貫く覚悟が必要だということ。既存ビジネスの枠組みを超えてものごとを考えるには、他人の視線を恐れないことが必要だ。
「他人にどう思われるか意識すると、ビジネスの感覚がマヒしてしまう。気にしてはだめ。自分を世界に合わせるのではなく、世界を身の丈にあわせて変えていけばいいじゃない。世界を変えよう、とジョブズは考えた。わたしたちも同じように考えているの」
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