週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

減収減益から脱却の兆し? 今年は“ドコモ光”や協創がテーマの“+d”サービスを柱に

2015年04月28日 22時30分更新

 ドコモは28日、2015年3月期決算を発表した。連結決算は、営業収益が前年度比1.7%減の4兆3834億円、営業利益が同22%減の6391億円で減収減益。下方修正したあとの数値目標である利益6300億円は達成したが、大幅な減益となった。

 営業数値は改善しており、新料金プランの契約者や端末販売数は増加。コスト削減も進捗し、今期は営業収益が4兆5100億円、営業利益が6800億円の増収増益を見込む。

 同社の加藤薫社長は「中期目標の達成に向けて確かな一歩を踏み出す年にする」と意気込み、目標達成に向けた施策を打ち出していく方針だ。

ドコモ
↑ドコモの加藤薫社長。

 同期の減益要因は、主力の携帯事業の通信サービス収入が999億円減少し、さらに月々サポートの影響が1170億円に達したことによるもので、これにモバイル向けマルチメディア放送(NOTTV)を担当するmmbiの減損302億円を計上したことなどが利益を圧迫。コンテンツサービスなどによる利益を吹き飛ばした。

ドコモ
ドコモ
↑決算の概要。
ドコモ
↑セグメント別の実績。
ドコモ
↑営業利益の内訳。

 足元の指標は改善しており、純増数は前年度比2.2倍となる349万契約、MNPは70%の改善となる38万減、解約率は16ポイント改善の0.71%となった。ただし、純増数には、内訳非公開ながらスマートメーターやMVNO分も含まれ、MNPは純減である点は変わらないことから、収益改善へのインパクトは未知数だ。

ドコモ
ドコモ
↑純増数などの数値は改善。

 端末販売数は5%増の2375万台。そのうち新規販売数は12%増の898万台となり、「iPhone 6や冬春モデルが好調だった」と加藤社長。スマートフォン販売数は6%増の1460万台、そのうちタブレット販売数は75%増の173万台に増加。2台目需要が拡大しているという。

 通信単価の高いLTEスマホは、全スマホの92%に拡大し、利用数も18%増の2875万契約まで拡大。それにともない、ARPU(1ユーザー当たりの月間平均収入)は改善の傾向があり、第4四半期で比べると前年度比70円の減少ながら、音声、パケットいずれも前期比では下げ止まり「底打ちした」との認識だ。

ドコモ
↑スマホ利用者数は拡大。LTE比率も順調。
ドコモ
↑ARPUは減少傾向に歯止めがかかった。

 新料金プランは4月5日の段階で1800万契約を突破し、順調に拡大。同プランは特に音声ARPUへのインパクトが強く、当初は減収要因になることが想定されており、同期は予想よりも大きい1070億円の影響となった。しかし、昨年11月を底に状況は改善しており、今後減益幅は小さくなる見込みだ。

ドコモ
ドコモ
↑新料金プランが順調に拡大し、収支影響も改善傾向に。

 NTT東西の光回線卸である“光コラボレーション”を利用した“ドコモ光”は、3月1日の開始から1ヵ月で23万契約を突破。NTT東西、ドコモ、ISPと3社が関係するサービスのため対応の遅れが目立ち、開通数は半分にも満たないというが、今後改善していくと加藤社長は強調する。

 ドコモ光の割り引きを利用するため、3割の利用者がモバイルの新規契約をするなど、携帯事業への好影響もあったとしている。

ドコモ
↑ドコモ光利用者のモバイルへの影響。

 コンテンツサービスなどの新領域事業は“スマートライフ領域”に名称を変更し、ケータイ補償サービスやM2M事業などのその他の事業と合わせた売上は7568億円で15%増。スマートライフ領域ではmmbiの減損のため39億円の赤字だったが、その他の事業は黒字化している。

ドコモ
↑スマートライフ領域の収入は順調に拡大。
ドコモ
↑dマーケットの取扱高。

 dマーケットは取扱高が32%増の728億円、契約数は1188万契約、ひとりあたりの利用料は35%増の1014円と順調に拡大。dTV(旧dビデオ)、dヒッツ、dアニメストアに続き、dマガジンが好調だった。

ドコモ
ドコモ
↑dマーケットやその他のd系のサービスも好調。

 通信サービスでは、LTE対応基地局を前年度末の5万5300局から9万7400局まで拡大。下り100Mbps以上の速度に対応した基地局も同3500局から5万7700局まで急拡大しており、ネットワーク環境の改善を継続している。

ドコモ
↑LTE基地局の推移。

 それにも関わらず、設備投資は効率化などによって前年度7031億円から6618億円に縮小。計画を上回るペースで設備投資額の適正化を図っている。

ドコモ
↑設備投資は効率化。
ドコモ
↑全体のコスト削減も進展。

 今年度は、営業収益で1266億円、営業利益で409億円を積みまして増収増益を目指す。月々サポートや端末販売コスト、トラフィック増によるコスト拡大などの減益要因に対して、通信、スマートライフ事業の増益に加えて、1200億円のコスト削減を実施して目標を達成したい考えだ。

ドコモ
ドコモ
↑今年度の業績予想と各種指標。

 そのために、ドコモ光によるユーザー層の拡大、新料金プランのさらなる利用増により、ARPUの反転、顧客の拡大を目指していく。増益の鍵となるコスト削減では、14年度は1200億円ながら早期にできるものに取り組み、削減に時間がかかるものを今年度に回したことで、2100億円の削減達成は可能という判断。

ドコモ
ドコモ
↑さらにコスト削減を積み増し、収益を改善する。

 その中でもネットワークの拡張は継続し、現在の下り最大225Mbpsに対して、今年度中に300Mbpsまで増速。2020年度に次世代の5Gを導入する計画で、順次ネットワークの進化を続けていく意向だ。

ドコモ
↑2020年の5G導入に向けてネットワークを拡張する。

 加藤社長は「結果にこだわる年」と話し、今度の通期計画の達成を確実にしたい考え。14年度は中間決算で業績予想を下方修正した経緯もあって、今期は手堅い数値目標の達成を優先する。

 2017年度に向けた中期経営計画では、通信事業では競争力の強化を図って事業の回復を急ぐとともに、スマートライフ領域では新たな施策を打ち出して拡大を図る。

ドコモ
ドコモ
↑2017年の中期目標とその取り組み。

 加藤社長は新たなキーワードとして“協創”という言葉で表現しており、さまざまな企業とコラボレーションして、新たな取り組みを実施する考え。IoTや医療、教育、農業といった社会的課題の解決、地方創生、2020といった分野での取り組みを強化していく戦略で、具体的な施策は順次発表していくという。

ドコモ
ドコモ
↑“協創”をキーワードにさまざまなコラボレーションでサービスを創出する。

 協創のキーワードに合致するサービスに向けて“+d”というブランドを打ち出し、既存サービスでは“ドコモポイント”を“dポイント”、“ドコモプレミアムクラブ”を“dポイントクラブ”、“DCMX”を“dカード”、“docomo ID”を“dアカウント”と名称変更。今後もサービスを拡大する。

ドコモ
ドコモ
↑新たなブランドとして“+d”を立ち上げ、各種サービスを提供する。
ドコモ
↑例えば“2020”を見据えたビジネス創出では、TOEIC 800点以上の精度を目指す翻訳サービスなど、先進性の発信と新しいビジネスの創出を推進する。
ドコモ
↑ドコモのサービスだけでなく他社サービスの“触媒”(加藤社長)としてのサービス創出も手がける。

 加藤社長は「イノベーションが生活の中に当たり前に存在する、そんな日を目指して、イノベーションに積極的に挑み続けていきたい」と話し、通信事業だけでなく、幅広い事業を拡大していきたい考えを示している。

ドコモ
↑新たなブランドスローガンとして“いつか、あたりまえになることを。”を設けてアピールしていく。
この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります