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日本人は“大人”になるとローマ字入力になるらしい by遠藤諭

2015年03月25日 10時00分更新

 週刊アスキー本誌では、角川アスキー総合研究所・遠藤諭による『神は雲の中にあられる』が好評連載中です。この連載の中で、とくに週アスPLUSの読者の皆様にご覧いただきたい記事を不定期に転載いたします。

文具とパソコンの話

 本誌編集部のYくんから「角川アスキー総研でキーボードのアンケート調査できないですかね?」と言われた。「なんで?」と返したところ“JISかな配列”で日本語入力している人がどのくらいいるのか知りたいのだが、古いデータしか見つからないのだとか。

 どれどれとネットで検索してみると、“JISかな”55.1%、“ローマ字”30.9%、“親指シフト”15.1%、“その他”1.8%……えっ? JISかなが半分以上もいるの?と思ったら、確かにこれは'90年発表のワープロ保有世帯へのアンケート結果でした。

 なにしろここ5年ほど日本はスマホのタッチUIが全盛。その前はフィーチャーフォンのテンキー入力が話題だったので、誰もキーボードの使用状況について調べていないようなのだ。ということで、さっそく角川アスキー総研の総力をあげてアンケート調査を実施してみた(週アスPLUSで募集し、総研モニターにネット調査。調査期間:2015年1月16日~26日、n=1529人)。

  結果は93.1%が“ローマ字”で、“JISかな”は5.1%しかいない。世代別に見ると20代は96.3%が“ローマ字”で、ほとんどローマ字しかやっていない(グラフ1=基点が75%なので注意)。年齢が高いほどJISかなが増えるのだが、興味深いのは10代のJISかな率が高いことだ。これは、前述の'90年の調査結果でJISかなが半数を超えていたのに似た現象だと思う。

遠藤 キーボード
↑グラフ1。

 '90年頃の日本語ワープロユーザーは、それまでタイプライターやPCを使ったことのないオヤジたちが多かった。その結果、刻印されているとおりに“かな”でポチリポチリとやっていたわけだ。同じように素直な10代の子供たちはJISかなで始めてしまう。逆に、JISかなで始めた10代は、20代になるまでに“ローマ字”に宗旨替えをしている可能性があるということだ。仮説としてだが“大人になる”とローマ字になるらしい。

 今回の調査では、キーボードをどのように使っているかやキーボードへの不満点についても聞いた。グラフ2は、日本人がどれだけキーボードに習熟(?)しているかをまとめたものだ。かつて日本には“キーボードアレルギー”という言葉があったが、これを見ると80%くらいの人たちが十分にキーボードを使いこなせているようだ。

遠藤 キーボード
↑グラフ2。

 米国でタイプライターが注目されるきっかけになったとされる『Scientific American』誌の1867年6月の記事を、最近になってネットで閲覧できた。それによると、人々の考えを“書く”よりも2倍のスピードで“印刷”できることが強調されている。今回の調査では“親指シフト”が1.2パーセントと意外なネバっこさを見せている(テーマを掲げたアンケートなので、意見のある人の票が多くなりがちではあるのだが)。

  キーボードに関するほかの調査で比較的新しいのは、'07年に楽天リサーチ社が全国3000人に聞いたものがあるが、“ローマ字”86.3%、“JISかな”7.6%、“親指シフト”は0.7%と今回の半分くらいの数値だったのだ。'86年に標準化された“新JIS配列”は、'99年に人知れず廃止されていたが、これは、ローマ字に対する敗北宣言なのだろうか。知的生産のボトルネックと言える日本語の入力方式ってこれからどう検討されるのか?

 本誌のYくんこと“週間リスキー”のACCN氏の野望は“かな刻印なし日本語キーボード標準化委員会”の設立だそうだ。調査によると「ローマ字しか使わないのでJIS かな刻印のないものも選べるとよい」と答えた人は49%もいた。ちなみに、自分で購入したキーボードのメーカーでは“ロジクール”がトップで13.9%。私も同社の『Bluetooth Illuminated Keyboard K810』を使っている。

【筆者近況】
遠藤諭(えんどう さとし)
株式会社角川アスキー総合研究所 取締役主席研究員。元『月刊アスキー』編集長。元“東京おとなクラブ”主宰。コミケから出版社取締役まで経験。現在は、ネット時代のライフスタイルに関しての分析・コンサルティングを企業に提供し、高い評価を得ているほか、デジタルやメディアに関するトレンド解説や執筆・講演などで活動。関連する委員会やイベント等での委員・審査員なども務める。著書に『ソーシャルネイティブの時代』(アスキー新書)など多数。『週刊アスキー』巻末で“神は雲の中にあられる”を連載中。
■関連サイト
・Twitter:@hortense667
・Facebook:遠藤諭

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