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ソニー共同開発で話題『Qrio』日本と海外の違いに苦しんでいた 西條晋一代表 Makuakeセミナー

2015年03月23日 15時00分更新

Qrio
スマホがカギになるスマートロック『Qrio Smart Lock』(1万6200円)

 ソニーと共同でクラウドファンディングに登場し、世間を驚かせたスマートロック『Qrio』(予約価格1万6200円)。開発元の西條晋一代表が今月11日、クラウドファンディングのMakuakeが開催したセミナーに登場、開発の苦労を語った。

 司会はMakuakeを運用するサイバーエージェント・クラウドファンディングの中山亮太郎代表。『週刊アスキー』伊藤有編集長代理も座談会に参加した。

 ウェアラブルデバイス「雰囲気メガネ」白鳥啓代表、ホームセキュリティー「Safie」佐渡島隆平代表との対談は座談会記事に。

 

LIXILのショールームでも行ってみるか

中山 開発で苦労したことがあったら教えていただけますか。

西條 苦労話としては、スマートロックって結局鍵というか、内側のサムターンって回すところに取り付けるんですけども、これが結構曲者で。将来的には海外にも出そうと思っているんですけども、本当いろんな形状があるんです。

 (ソニーは)基本的にオーディオビジュアル系が多いので、何かに取り付けてモーターの足でそれを動かすとかはあまりやっていない。昔はソニーもロボットやってましたけど、実は今の時点ではそんなに得意ではないですね。

 なので、そもそもカギの業界ってどうなってんのみたいなことを言って。ドアノブではどこが6割くらいのシェア持っている、なんてところから始まって、LIXILのショールームでも行ってみるか! みたいな話になったりして。まずカギに関してみんな素人だったので、カギを知るところから始めたっていうのがすごく大変でした。

 ユーザーのみなさんからも問い合わせを受けるんですけど、ドアに直接サムターンがついているケースもあれば、取っ手についているケースもある。20~30年くらい経っているアパートだと、回るドアノブにつけられますかって相談も来る。つけられないことはないけど、つけたら回せなくなりますよ……みたいな感じだったり。

 どこまでの適用範囲で作るのか、まだちょっと苦労してるんですけど、将来的には3Dプリンタとかで取り付け部分の形状は出力して作ったりもできるようにするつもりです。

 (取り付け部分を)取り換えられるように設計してますので、もし取り付けられなかったら、違う形状のものを取り付けるとか、あとは高さを調整できるものを同梱するようにしているので。

 とにかく、そこが大変ですね。電子基盤とかは全然苦労してないんですけど、カギが苦しいところです。

saio
キュリオ(Qrio)西條晋一代表

 

アメリカ人はドライバーを普通に使うが

伊藤 アメリカでは去年からスマートロックが増えている印象がありました。アメリカのユーザーは取り換えるのが当たり前という考えをしている。日本との環境の差って、ありますか?

西條 おっしゃる通り、文化的な違いがあって。アメリカ人は自分でやる方も多いので、もともとはドライバーを使って外して入れ替えるみたいなものが主流だったんですね。ぼくは日本でも自分でも「それはちょっとないな」と思って。なので(キュリオは)ドライバーを使わずに取り付けできるというところが最初に決めたポイントではあります。

伊藤 IT業界は電波を出すモノの取り扱いが難しいじゃないですか、技適(技術基準適合証明)とか。その辺も頑張ってやられたんですか?

西條 電波法ですね。苦労しました。モジュールを提供してくれている企業などに聞きながら、申請自体は全部自分でやったんで、結構大変でした。

中山 海外との違いなんかもあるんですか?

西條 カギの形状が苦労しました。ヨーロッパって、ホテルでは気づかないと思うんですけど、鍵を2回転させたりするんですよ。あと、カギを壊されないようにカギ穴が異様にでかくて長かったり。日本とかの基準でモーターを作るとトルクが足りないという問題がある。なのでヨーロッパは絶望視してます……(笑)。

 

製造面で「企業秘密だから教えない」はほとんどない

中山 今後、IoTベンチャーが出てくるにはどういった要素が必要だと思われますか?

西條 ベンチャーの経営とか、事業計画の立て方とか、基本的なスキルは僕らそんなに変わらないですよ。

 ただ、たとえば金型っていくらかかるのとか、部品ごとの納期がどうなるかとか。スマートロックを作るとなったとき、じゃあモーターいるよね、そもそも日本でモーター作ってるメーカーってどこがあったっけ、必要なトルクとデータとサイズはどこのどれが……とかいうのは、僕はさっぱりわからないんです。

 そこは聞ける人がいれば聞けばいい話なんで、割と知らなくてもいい。たとえば僕に聞きに来たとき、「それは企業秘密なんで」とは、よほどのことがない限り言いません。知っていることは知らせる。少なくともインターネット業界ではそんな感じなので。

 具体的なプロダクトは申し上げられないんですけど、僕の知り合いでIoTの魅力的なプロダクトを作っている20代の社長がいるんです。彼は文系ですし、ただ作りたいっていう思いで、大企業の扉をたたいたところ、「まさにそういうものを作りたかったが、誰もできなかった。うちの研究開発費である程度負担してあげるよ」とやってたりするんですね。

 彼はほぼ一人でやっていて、お金もない。それでも、アメリカで何億円も調達してやっているところと同じ領域に取り組んでいます。できないことはない、要は行動力の問題じゃないでしょうか。

写真:編集部

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