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「10年に1回訪れるドラスティックな転換期」を“謙虚”に伝える孫社長 ソフトバンク決算

2015年02月10日 22時15分更新

 ソフトバンクは、2015年3月期第3四半期の決算を発表した。売上高は前年同期比41%増の6兆4311万6700万円、営業利益は同16.2%減の7880億4500万円だった。ただし、前年にはガンホーとウィルコムの子会社化による一時益などがあったため、それを除くと14%増になり、その観点からは増収増益になるとしている。年間目標の売上高8兆円、EBITDAは約2兆円、営業利益9000億円は据え置いており、孫正義社長は「予定通り推移している」と強調する。

ソフトバンク 決算
↑ソフトバンクの孫正義社長。

 その他の指標では、純利益は同15.9%増の5794億4600万円、EBITDAは同22%増の1兆6096億8400万円となった。主力の携帯事業では、売上高が同40.1%増の3兆874億5800万円、利益が同9.7%増の5717億8300万円となった。米ブライトスター社と米スーパーセル社の売上高が3四半期全体に計上されたことによって大幅な売上増となったが、国内携帯事業の売上も、契約数増などにともなって592億1200万円増加した。それに加え、販売手数料の減少などが利益増につながった。

ソフトバンク 決算
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↑売上高とEBITDAの推移。
ソフトバンク 決算
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↑営業利益は減益だが、一時益を除くと増益となる。

 ソフトバンクモバイルの契約数は、第3四半期だけで147万7000件増となり、累計は3740万1000件だった。ARPU(1ユーザー当たりの月間平均収入)は前年同期比240円減の4250円で、LTEスマートフォンの販売数や利用数は増加したものの、ARPUの低い端末も増加したため、全体としてはARPUを押し下げた。第3四半期の端末販売数は同7000増の989万3000台。解約率は同0.06ポイント増の1.34%だった。

ソフトバンク 決算
↑その他の指標。
ソフトバンク 決算
↑「iPhone一辺倒と思われがち」と孫社長。しかし、Androidスマートフォンの販売もワイモバイルを中心に前期比63%増と伸ばしている点をアピール。
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↑NTT東西の光コラボレーションを利用した固定と携帯のセット割も提供。ただし、当面は「様子を見なければ分からない」と慎重。
ソフトバンク 決算
↑通信4社の合併では、経営資源の効率化が主目的。各ブランドは存続し、店舗などの統廃合もしないが、周波数などネットワークの統合や管理部門の一本化などでコスト効率化を目指す。

 米スプリント社の事業では、売上高は同66.8%増の2兆8098億5700万円、利益は1053億3000万円改善して548億2800万円と黒字転換。売上高の急増は、今期は3四半期累計で計上されたためで、利益の増加は旧式の通信設備の償却が一部終了したこと、ネットワークの改善で費用が減少したこと、割賦販売方式へ移行したことで販売奨励金が減少したこと、などが理由としている。

 スプリントは、第3四半期に減損を計上しているが、ソフトバンクの決算に反映されていない。これは、スプリントが米国会計基準を採用しているのに対して、ソフトバンクは国際会計基準を採用しており、その場合は減損として計上しないためだという。孫社長は、「社内でもだいぶ議論したが、国際会計基準では減損したくてもできない」と、会計基準上の処理だったと説明。それでも孫社長は、「会計基準はどうあれ、減損計上したつもりで経営すべき、と厳粛に受け止めている」とコメントしている。

ソフトバンク 決算
↑米国での減損処理は会計基準の違いでソフトバンクには反映されなかった。
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↑スプリント自体は純損失でフリーキャッシュフローもマイナスだが、改善の兆しはあるという。

 実際、純利益では33億ドルの純損失となっており、減損分の14億ドルを差し引いても19億ドルの純損失となっており、経営再建はまだ遠い状況。それでも孫社長は、新CEOのマルセロ・クラウレ氏率いる新体制の手腕を高く評価しており、ポストペイ契約が増加に転じ、改善の兆しが見え「一歩前進」と指摘する。

ソフトバンク 決算
↑新経営陣の手腕でさまざまな改善策を打ち出しており、状況は好転しつつあるという。
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↑経営へのインパクトが大きいポストペイユーザーが増加。
ソフトバンク 決算
↑ポストペイは純増に転じている。
ソフトバンク 決算
↑ネットワーク品質も改善。

 孫社長は、スプリント買収時に「米国で上位2社と拮抗して競争していくためには、スケールが必要である、合併が必要であると主張してきた」としつつ、米政府がそれを拒否したため目論みが外れたことを認めつつ、「一歩一歩改善しなければならない。改善の兆しが出てきている」と強調する。

ソフトバンク 決算
↑コスト削減も進めているほか、米国に設置したソフトバンクの拠点も縮小する。

 固定通信事業は売上高が同1.8%減の4000億1700万円、利益が同9%減の813億2100万円。インターネット事業は広告の増加で売上高が同1.9%増の3037億1200万円となったものの、同4.9%減の1364億5900万円だった。

 今後、さらに海外のインターネット事業を強化する方針で、Eコマースの中核に育った中国アリババに加え、インドのスナップディール・コム社、インドネシアのトコペディア社というそれぞれの地域で1位の企業の筆頭株主になり、今後も成長を目指す。タクシーなどの交通配車サービスでも、インド、東南アジア、中国の各企業に投資をしている。東南アジアを中心に、スマートフォンの登場でインターネット普及が加速しており、ここでインターネット事業に注力して収益拡大を図る考えで、孫社長は「海外に植えた種が着実に大きくなってきている」とアピールする。

ソフトバンク 決算
↑海外を中心としたインターネット事業をさらに強化していく。
ソフトバンク 決算
↑重点分野は4つのジャンル。

 経営の課題となるスプリントは、改善の兆しはあるとはいえ、合併戦略が不調に終わって当てが外れたかたちだが、一部観測にあった売却に関してはコメントを避けた。保有する周波数を売却するという予測に対しては、「2.5GHz帯を世界一持っている会社かもしれない」ため、将来を予測して余るような場合は「一部売却することも選択肢から排除しない、それも含めて検討に値する」と慎重なコメント。

 会見で孫社長は、“謙虚”や“一歩一歩”という言葉を多用し、慎重な口ぶりだったが、現在は「10年に1回訪れるドラスティックな転換期」(孫社長)の合間にあり、無理してニュースを作らない、と話す。「波乱に強いソフトバンク、平時は寝たふり」と冗談めかして言いつつ、今後、そうした転換期が来たときにはまた攻勢をしかける意気込みを語った。

●関連サイト
ソフトバンク 説明会資料・動画配布ページ

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