ソニーが2月4日に開催した2014年度第3四半期の業績説明会では、今後のXperiaシリーズを予測する上で興味深い数字が示されました。今から3年後、2017年度のモバイル事業の売上高は9000億円~11000億円規模にまで“縮小”するというのです。
↑ソニーの業績説明会では、モバイル事業の売上高を縮小する見通しを発表した。2月18日の経営方針説明会で、さらなる詳細が期待される。 |
世界的なモバイル市場の拡大に伴い、どの企業も売上高の増加を見込むいっぽうで、なぜソニーは逆に減らすという選択に至ったのか。約3週間後に迫ったMobile World Congress 2015(MWC2015)直前の状況をまとめてみたいと思います。
■ソニーモバイルの3年後の事業規模は実質半分?
まず押さえておきたいのは、少なくともこれから数年間に渡って、スマートフォン市場は確実に拡大を続けていく傾向にある、という点です。
たとえば米IDCが2014年12月に発表した調査によれば、2014年のスマートフォン出荷台数は13億台でした。その後2015年には14億台、2018年には19億台に到達し、その間の伸び率は9.8%と予測されています。26.3%という2014年の伸び率に比べれば勢いは落ちるものの、今後も市場が拡大していくことは確かといえるでしょう。
拡大していく市場でシェアを維持し続けるには、市場全体の伸び率と同じだけ成長していく必要があります。毎年9.8%ずつ出荷台数を拡大することで、シェアはようやく“横ばい”となるのです。
そんな中、ソニーは2017年度のモバイル事業の売上高として9000億円~1兆1000億円を見込んでいます。これは2014年度の1兆3200億円と比べて、2200億円~4200億円も小さな数字です。モバイル市場が拡大を続けていく中で、もしソニーモバイルが市場平均と同じ年率9.8%で成長したとすれば、2017年度の売上高は1兆7500億円規模になっているはずです。
このことから、ソニーモバイルは3年後の事業規模として、実質的には半分程度にまで縮小する可能性を示唆した、といってよいでしょう。
■利益率重視の体制を目指すも、MWCはどうする
とはいえ、現在のスマートフォン市場を出荷台数や売上高だけで語ることはできません。ハイエンドとローエンドのスマホを同じ1台とカウントすることには、明らかに無理があります。
この点について昨年末からソニーモバイルが強調しているのは、“数を追わない”という戦略です。実際に2017年度の数値目標として、営業利益率として3%~5%という数字を挙げました。そのことから、売上高は下がっても、他の事業と同程度の利益率はしっかり確保する、という狙いが見えてきます。
では早速、3月にバルセロナで開催されるMWC2015から反撃を始めるのかどうか、が気になるところですが、業界では、ソニーがXperia Zシリーズの次期フラグシップの発表を見送るのではないか、との見方が出ています。たしかに、これまで維持してきた“1年に2回”というフラグシップの投入は見直すべき、との声は多く、その“見直し”がMWCのタイミングで行なわれても不思議ではありません。
■Xperiaは年1回の大型アップデートになるのか
これまでにソニーは、短い間隔でフラグシップ端末を投入していくことで前モデルの値下がりを防ぐ、という戦略を打ち出したこともあります。しかし年末年始の日本では、2015年冬モデルのXperia Z3 Compactが一括0円で販売されているのが現実です。
端末を販売しているのがドコモである以上、ソニーモバイルにとってどうしようもない部分はあるでしょう。しかし、一般消費者の立場からすれば、スマホを買うなら一括0円になるまで待つのが当たり前になりつつあるのも事実です。
↑ドコモから発売された冬モデルのXperiaも、すぐに一括0円になってしまった。 |
正直なところ、筆者もXperiaシリーズは購入するタイミングがつかめずにおり、これまで個人的に購入したXperiaはグローバル版に先駆けて登場した『Z1 f』だけ、という状態です。
その一方で、もしフラグシップが不在となれば、ソニーブランドの世界的な存在感が薄れてしまうのでは、といった不安が生まれてくるでしょう。
↑欧州のスマートフォン売り場でも依然としてサムスンの存在感は大きい。 |
世界中のモバイルユーザーが注目するMWC2015では、サムスンがふたたび大規模なイベントを予定しており、すでに“エッジ”を連想させるティザー画像も公開しています。このままでは、会場の話題をサムスンに持っていかれる可能性が高まってきました。
↑“WHAT’S NEXT”というキャッチコピーと共に公開された、新端末を思わせるティザー画像。 |
■国内ではMVNO展開に期待
国内でソニーは、また違った動きを始めています。ソニーグループのSo-netとの提携により、“高付加価値の”XperiaシリーズをMVNO向けとして発売すると発表したのです。業績説明会の質疑応答でもこの件に言及し、いわゆる“格安スマホ”ではなく、高付加価値モデルとなることを強調しました。
↑So-net版のXperiaは高付加価値モデルになるという。とはいえ、これまでのほとんどのXperiaシリーズにはキャリアロゴが付いており、そのままでは売れないはず。どうなる? |
最近、国内の量販店では、SIMフリー売場が拡大しており、キャリアの売場以上に、店員と来店客のやりとりも活発な印象を受けます。果たしてMVNO向けのXperiaは、既存キャリア向けモデルそのままなのか、それともグローバル端末の転用なのか。いずれにしても、SIMフリー売り場をさらに賑やかにする選択肢となりそうです。
【2月10日10時28分修正】モバイル事業の売上高について数値を一部修正致しました。お詫びして訂正させていただきます。
山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります