1月21日(米国時間)に行われたWindows 10のイベントでは、スマートフォンや小型タブレットに最適化されたバージョンが登場することが明らかになりました。
しかしマイクロソフトはこれを“Windows Phone 10”とは呼ばず、Windows 10という名称をPC、タブレット、スマートフォンで横断的に用いる構えを見せています。
↑Lumia 1520で動作するスマートフォン版Windows10。しかしこれはWindowsPhone10ではないという。 |
果たしてWindows Phoneはなくなるのか、そして日本での発売はあるのか、について考察してみたいと思います。
■Windowsとの統合を進めてきたWindows Phone
Windows 10にはユーザーインターフェイスの改善や、1年間無償というアップグレード形態、新Webブラウザーなど話題は多いものの、大きな目玉はデバイスを超えたユーザー体験の統一と考えられます。
これまでも、シェアードコアと呼ばれるOSのカーネル部分がWindows Phone 8とWindows 8とで共通化し、両者はOS内部において、大きく歩み寄る形をとってきました。さらにWindows Phone 8.1では両者で共通のアプリ実行環境として“ユニバーサルアプリ”を導入、APIの共通化が進められるなど、Windows Phoneは段階的にWindowsとの統合を進めてきた背景があり、Windows 10はその延長線上に位置づけることができます。
■スマートフォン、小型タブレット向けWindows 10とは?
このような段階を経て、2015年1月21日(現地時間)のイベントで登場したのが、PCや2in1、通常のタブレット向けのWindows 10とも異なる、スマートフォンや小型タブレットに特化したWindows 10です。
小型タブレットの定義について、マイクロソフトは“under 8 inch”と説明しています。このことから、日本でも人気の8インチ以上のWindowsタブレットでは、これまで通りPCと同じWindowsが使えることがうかがえます。
8インチ未満のタブレットはたしかに存在するものの、かなりの少数派です。実質的にスマートフォンや小型タブレット向けのWindows 10は、Windows Phone 8.1の後継OSという位置付けになるでしょう。
ただ、マイクロソフトはこれを“Windows Phone 10”とは呼んでいません。あくまでWindows 10のスマートフォン、小型タブレット向けバージョンです。最終的な呼び名はまだわからないものの、ひとまず“Windows 10スマートフォン”とか、“Windows 10小型タブレット”とでも呼ぶべきものになるでしょう。
■PC版のWindows 10とどれくらい機能差があるのか?
Windows 10スマホの詳細は、2月後半にも登場するという最初のテクニカルプレビューを待つ必要があります。最大の目玉は、Windows 10と同じユニバーサルアプリが動作するという点。Windows 8世代の用語でいえば、“ストアアプリがWindows Phoneで動く”、ということです。
ただ、それ以外の点において通常版のWindows 10とどれくらい同じ機能が搭載されるかは、現段階では未知数です。
たとえばWindows Phone 8.1からWindows 10に無償でアップグレードすることはできますが、CPUがx86ではなくARMアーキテクチャであることに変わりはありません。そのため、x86版のWindows向けに作られたデスクトップアプリや、周辺機器のデバイスドライバーが動作することはないでしょう。
また、Windowsの機能をフルに搭載すれば、Windows Updateで配布されるパッチも、PC並みのボリュームになります。再起動中のスマートフォンを見つめながら、アップデートの適用が終わるのを長時間じっと待つ、というシーンはあまり想像したくありません。
何より、PCとスマホではスペックが違いすぎます。Windows Phone 8.1ではローエンドの端末をサポートしたため、Snapdragon 200、512MBのメモリー、4GBのストレージといった端末でWindows 10が動作する必要があります。これはWindows 8.1 Updateの最低要件である、1GBのメモリー、16GBのストレージを大きく下回るものです。
現実的には、Windows Phone 8.1と同じくらいコンパクトなサイズまで、搭載する機能を絞り込む必要があるはずです。OS内部を見ていけば、それはほとんど“Windows Phone 10”と呼べるものになっているかもしれません。その上で、ユニバーサルアプリを中心としたPCと共通のユーザー体験を実現していくというのが、Windows 10スマホの狙いとなるでしょう。
■Windows 10スマホの日本発売に期待大
気になるのは、このWindows 10スマホやWindows 10小型タブが、日本でも発売されるのかどうか、という点でしょう。
これまでは、日本でWindows Phone端末の発売を検討しても「そもそもアプリがないので、売れないのでは?」という問題が持ち上がり、一方でアプリ開発を検討すると、「そもそも端末がないので、需要がないのでは?」という壁に突き当たる、といったジレンマに悩まされてきました。そのため、Windows Phoneの国内発売にあたっては、アプリと端末を同時に立ち上げる強大なリソースが必要であり、そのためには大手キャリアの全面的な協力が必要不可欠な状況にも関わらず、その協力がいまだ得られていないのは周知の通りです。
Windows 10スマホではPCやタブレット向けに開発されたユニバーサルアプリの動作が期待できるため、Windows Phone専用のアプリを別途作ってもらう必要性はありません。ユーザーインターフェイスを工夫すれば、スマホでも十分に使えるアプリとなるでしょう。
さらに、Windows 10スマホや小型タブには、ユニバーサルアプリ版の『Office for Windows 10』が標準搭載されます。これはiPad版やAndroid版に匹敵する機能を備えており、これまでのWindows Phone標準のOfficeと比べても、かなり実用的なものとなりそうです。
↑発表会場ではOffice for Windows 10について、WordやPowerPointの画面が披露された。iPad版やAndroid版に近い機能を備えているとみられる。 |
↑Outlookによるカレンダー。Windows Phone 8.1のカレンダーよりも本格的な機能を搭載している印象だ。 |
このようにWindows 10では、小型デバイスを市場に投入するハードルが大きく下がることになります。たとえばヤマダ電機が販売している独自ブランドのWindowsタブレットのように、SIMフリー市場やWiFi運用を前提としたWindows 10の小型デバイスがあっさりと発売されるのではないかと、筆者は考えています。
もっとも、日本でWindows 10スマホが発売されることはゴールではなく、むしろスタート地点といえます。シェアとしてはほとんどゼロに近い状態から、どのようにして新たなOSを立ち上げていくのか。改めて日本における戦略が問われることになりそうです。
■関連サイト
Windows 10: Briefing
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります