日本最大の同人誌即売会『コミックマーケット』が、12月28日から東京・有明の東京ビッグサイトで開催される。今回で87回目となるコミケだが、前回の入場者数が55万人を数える圧倒的な規模。そこで問題になるのが携帯電話の利用で、狭いエリアに大人数が集結するため、携帯キャリアの既存の設備ではトラフィックをさばくのが難しい。そこで各社とも、臨時で移動基地局車を出すなどの対策を打ち出している。今回、ソフトバンクが移動基地局車設置の様子を公開した。
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↑出動したソフトバンクの基地局車。ちなみにラッピングはまだのようだ。 |
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↑基地局車の上部。各アンテナが設置されている。 |
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移動基地局車は自走式の基地局で、基本的には災害時の通信復旧までの臨時の基地局だが、一度に人が集まるイベントなどでは、輻輳対策として出動する例が増えている。イベント会場は普段の人出が多くないために恒常的な対策が難しく、移動基地局車がイベント期間中だけ設置されて通信環境の改善を図っている。
NTTドコモ、KDDI、そしてソフトバンクは、コミケにあたって複数台の基地局車を展開しており、今回ソフトバンクは5台の基地局車を出動させた。他の一般的なイベントでは1~2台出せば十分だが、コミケの規模では5台が必要になるそうだ。
基地局車の通信回線は、光回線や衛星回線があるが、光回線の場合はケーブルを敷設する必要がある、衛星回線は速度や帯域が限られる、という点から、今回ソフトバンクでは無線エントランス(FWA)を活用。26GHz帯を用いて基地局からの電波を受け、それを基地局車が携帯向けの電波として発射する。
ソフトバンクの基地局車では、900MHz帯の3G、2.1GHz帯のLTE、さらにワイモバイルの1.8GHz帯のLTEとAXGPという4バンドに対応。iPhone 6もあってAXGP(TD-LTE)のトラフィックも増加していることから、基地局車でもAXGPに対応した。なお、現時点で900MHz帯のLTEの免許が交付されていないが、設備的には900MHz帯でのLTEとキャリアアグリゲーションには対応しているそうだ。
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↑中央の台形の3つのアンテナが900MHz帯の3G用。その下の円柱が2.1GHz帯・1.8GHz帯のLTE用。その左下にあるの別のアンテナがAXGP用。 |
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周辺にある基地局(親局)にもFWAのアンテナを設置してあり、そこに対向する位置に合わせて基地局車上のFWAアンテナを調整して通信経路を構築する。発信側の親局には十分な余力があり、基地局車に帯域を割り当てても運用に支障はないという。
東京ビッグサイト西側の屋外駐車場に設置された基地局車は、ビッグサイト東側駐車場入口にある親局とペアになっており、親局上にあるFWAアンテナと通信を行う形。公開された作業は基地局車上で携帯用のアンテナを伸ばし、FWAアンテナの向きを調整するだけで、時間的には10分ほど。FWAアンテナを数mのポールに設置しなくても親局のFWAアンテナと対向できるため、ポールを伸ばす必要がなく、設置が早期に完了していた。
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↑柱の横から見えるのが親局。 |
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↑最上部にある菱形がFWAアンテナ。 |
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FWAのアンテナは、基地局の座標を基にコンピュータで向きを変え、電界強度を測定して最も良好な向きに微調整する。手動でも可能だが、人間の手だと向きの微調整に時間がかかること、アンテナをポール上に設置した場合に人の手が届かないことがあるため、コンピュータによる自動方向調整機能を採用しているそうだ。
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↑稼働のためにアンテナを伸ばす。 |
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↑まだ伸ばす。 |
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↑もっと伸ばす。 |
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↑これが伸びきったところ。 |
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↑菱形の部分がFWAのアンテナ。 |
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↑前述の親局の座標に向かって自動で回転する。 |
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基地局車は、人が集中するビッグサイト西側の駐車場にも3台(FWAアンテナは5つ)あり、これは親局があるビルに設置された5つのFWAアンテナと通信し、コミケ来場者に対して通信サービスを提供する。
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↑基地局車の内部。 |
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ソフトバンクでは、コミケでのトラフィックをこれまでも解析しており、5台の基地局車や無線LAN対策によってコミケでも対応できると見込んでいる。
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↑これは西側駐車場にある基地局車。ここには2台を設置。 |
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↑中央後方のパラボラアンテナのあるビルにFWAアンテナがある。 |
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↑こちらには6mのポールにFWAアンテナを設置していた。 |
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今回設置された各社の基地局車は、ドコモが『艦これ』、KDDIが『デュラララ!!×2』、ソフトバンクが『黒子のバスケ』と3社3様のラッピングで競っている。普段は携帯電話の通話や通信を支える縁の下の力持ち的な基地局車だが、コミケではすっかりその存在をアピールする場になったようだ。