『VAIO Prototype Tablet』。プロトタイプの名の通り、開発途中のタブレットだが、VAIOは積極的に各種イベントにVAIO Prototype Tabletを展示し、さまざまなユーザーから意見を得て、それを反映させようとしている。週アスLIVEの前日、つまり設営の中で漫画家・颯田直斗先生によるガチチェックが行なわれたので、そのようすをお伝えしよう。ガチチェックに至る流れとしては、Twitterで颯田直斗先生がVAIO Prototype Tabletに超反応をしているところを週アス編集部が捕捉。以前にも『Dell Latitude 10』でガチチェックをしていただいたこともあり、するっと実現したわけだ。
まず行なったのは完成データの表示。ラスト・クロニクル第五弾『皇護隊の教導官』のPSDファイルをPhotoshopで開いた。スペック的に足りていれば、ファイルはすぐに開くし、レイヤーの表示や非表示などで挙動を確認できるからとのこと。159MBの巨大なファイルだが、ラクに開けたため、まずはクリアといったところ。
またこの時点で色のチェックも実行。VAIO Prototype Tabletは、“AdobeRGB 95%以上”の広色域に対応しており、モニターベースだけでなく、紙媒体にも耐えるパネルをもっている。颯田直斗先生のインプレッションとしては問題ナシ。筆者も写真を扱うので、別途チェックしてみたが良好な発色。色重視で、かつ持ち運びと現場での数人で、のぞき込んでのチェックを考えているのであれば、まったく問題のない状態だといえる。
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↑ラスト・クロニクル第五弾『皇護隊の教導官』のデータを開いたところ。なにやら左側にデバイスが見えているが、それは以降で活躍する。颯田直斗先生自作の一品だ。なお原稿作成中にバージョンアップが行なわれ、トラックボールが搭載された状態になっている。 |
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↑InterBee 2014のパネル。“AdobeRGB 95%以上”とある。またカラーマネージメントにも対応予定とあり、映像や写真、グラフィックス方面もチェックすべきタブレットになりそうだ。 |
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↑颯田直斗先生近影。CLIP STUDIOで二次元vs日本刀展用に描いた国宝『九鬼正宗』を表示したところ。ファイルサイズは159MB。これもあっさりと開いていた。なお大阪歴史博物館で特別展“―現代刀匠二番勝負―お守り刀展覧会×二次元vs日本刀展”が12月23日まで開催。 |
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さて、自作の左手デバイスをセットして、実際にペン入れを開始になるのだが、その前にハードウェア的な確認をしていたようだ。ガジェットというよりは、道具として見ることになるため、インターフェイスのレイアウトも重要な要素になる。まず12.3インチというサイズ。10.1インチが主流なので大きく見えてしまうが、図書館やファミレスでもギリギリ許されそうなサイズではないかと颯田直斗先生は語った。
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↑検証を通してベタ褒めしていたスタンド。颯田直斗先生曰く、「えも言われぬ艶めかしい追従感」。押したらちょっと下がり、引いたらそれについてくる感じ。これは実物で体験してほしいレベルで、すっごくイイ。 |
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↑動きすぎてイヤンと感じた場合は、写真のように完全固定モードもアリ。 |
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↑キーボードは分離型だが、写真のように必要なキーだけ顔を出した状態で操作することも想定されている。 |
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↑筆者は写真をレタッチする際、筆圧がちょっと高め。スタンドが動きすぎる感が少しあったので、写真のような配置で腕で、本体を少し固定するレイアウトがいい感じだった。 |
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↑そして「試す以上、いつもの環境であるべきですよ!」と持ち込まれた颯田直斗先生の左手デバイス。 |
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↑バージョンは7.01。基板から設計して、CEATEC2014で都合のいい部材を見つけたため、その場で発注したそうだ。 |
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次に注目したのは、本体上部に用意されているカスタマイズキー。右上のキーにはタッチ入力を無効化する機能が割り振られており、オンにした場合はスタイラスでしか入力を受け付けなくなる。多くのタブレットPCは、パームリジェクションによって、手のひらが触れたことによる誤入力を抑制しているが完璧ではないので、この切替機能については、大きく評価すべきだろう。
ただ、颯田直斗先生的には、オンなのかオフなのか明示的なアナウンスがないため、スライド式スイッチにしてくれたほうが、触感だけで判断できるのではないかといった意見もあった。
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↑上部左右にあるカスタマイズキー。右上のキーはタッチ入力オンオフが割り当てられていた。 |
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細かい部分では、有線LANの存在やSDXCカード対応といった部分も注目だ。タブレットPCはSSDを採用する製品ばかりなので、総じて容量不足との戦いになる。自宅であればローカルネットワーク上のNASへ、出先ではSDXCカードへと保存できるのは、Ultrabookなどと同じく重要な部分。もちろん、USB3.0を備えるため、外付けHDDもOKだ。有線LANがフルポートであるのは邪魔なアダプターもなく、無線が使用できない環境にも対応できるために、これも需要である。
さて、颯田直斗先生だけでなく筆者が求めた部分としてはHDMI入力。道具としてみた場合、ときにはセカンドディスプレーとして活用できるのであれば、使用する幅が広がる。ようすを見守っていた開発者さん曰く、「接点を追加するだけでいいハズだから、対応は可能かも」とのことだった。
検証はペン入れで実行するとのことで、まずは“CLIP STUDIO”で、10885×7569ピクセル、600dpiのモノクロ原稿を開いた。カラーよりもモノクロ原稿作業が多いため、ペン入れの具合を見たかったそうだ。さて、気になるのはメモリー。用意されていたVAIO Prototype Tabletはメモリー8GB。20万円~40万円するものであれば、最低でも3年は耐えてくれないと厳しいし、購入決断もしにくい。必要なのは道具としての完成度とレスポンスだ。
そのため、メモリ8GBでは足りなくなる可能性がある……というか、まず足りない。さらに16GBで足りなくなったら、32GBに増設可能といった配慮はほしいところになる。この点に関して開発者さんは理解しておらず、よくある作業をお伝えしたので、メモリーについては増量されてほしい。なおよくある作業とは、300MB前後のTIFFファイルを10枚ほど開いて並行処理をしたり、現場でゴリゴリとレタッチしていく場合だ。作業途中のファイルサイズは2~3GBになるなど、16GBでも厳しく、クリエイティブに応じるというのであればやはり32GBはほしくなる。
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↑10885×7569ピクセル、600dpiのデータを読み込んだ状態でのメモリ使用量。ここからもりもりっと増えていくので、8GBでは厳しいわけだ。 |
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↑スタイラスペンは、『VAIO DUO 13』のものを流量している。TabletPC形式を採用するため、Wintab形式のみをサポートしているペイントツール“SAI1”はVAIO Prototype Tabletでの筆圧検知が機能しない。“SAI2”はTabletPC形式をサポートしているが、今回は時間の関係もあり、“CLIP STUDIO”でのチェックとなっている。 |
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では、描画チェックに入ろう。1コマぶんのペン入れで入り抜きや、連続した斜線の描画などを確認しながらとなった。「すっごくいい!」といいながら、ペンを進める颯田直斗先生だったが、気になる部分はやはりあったよう。入り抜き時の線の歪みは少ないが、大きくペンを寝かせる人は厳しいかもと発言。このあたりはチューニングアプリケーションを用意することで回避可能である。
次に追従性は、開発機ということもあるがときおり追従しなくなるシーンが見られた。もうひとつ、筆圧が急に変化する現象も確認。これは、インクがぼとっと落ちた状態といえばわかりやすいだろうか。チェック時点では原因不明だったが、熱心に写真を撮影していたので、この部分は対処されるだろう。
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↑というわけでペン入れ開始。左ページ最終コマがその対象だ。 |
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↑ファイルのレイヤー構造。ヘタなPCだとキツい数だが、VAIO Prototype Tabletではもたつきは確認できず。 |
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↑さらに左手デバイスによるガチ操作にもしっかりと追従。そのようすは下記動画でよくわかるハズ。 |
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↑パームリジェクションでは対応しきれないケース多々の服の袖も、ハードウェアスイッチでタッチパネルをオフにできるため、接触を気にせず済む。 |
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↑髪の毛へのペン入れ風景。入り抜きの具合がよくわかるほか、拡大縮小、アンドゥの応答性もわかる。それにしても左手デバイスは便利だなぁ……。
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↑上記した筆圧検知にエラーが出て、インクがぼとっと落ちた直後の状態。発生タイミングに規則性はなく、チューニングの問題だと思われる。発売までまだ先なので改善されるだろう。 |
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↑入り抜きの際に、先端部が歪む現象はあまり発生せず。ただ起きないに越したことはないので、これも改善されてほしいポイントだ。 |
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↑連続で斜線を入れているところで追従性を確認。颯田直斗先生的にもとくに問題は感じていなかったようだ。ただ上記のように、追従が一瞬止まることがあった。開発機として見ればチューニングが相当がんばっているともいえるのだが。
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↑上記動画での作業後のカット。意図どおりに線を引けたとのこと。 |
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↑ペン入れが終了したところ。1時間ほどあれこれ試しながらとなったが、途中でアプリケーションが落ちることもなかった。 |
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といった具合に、抜き打ちチェックのようすをお伝えしてきたが、VAIO Prototype Tabletは開発過程の状態ながら、良好な性能を見せてくれた。この点は作業途中のようすからもよくわかっていただけたと思う。発売まではまだ先だが、VAIOは多くのイベントで、VAIO Prototype Tabletのタッチ&トライを実施している。その都度、ユーザーの意見を取り入れるためアンケートを採ったり、使用感をダイレクトに質問してきたりと積極的だ。今回もその都度その都度で、颯田直斗先生に質問を投げかけていた。この動きは、日本国内でみると、CREATE NOW "BEST of MAX"から始まり、週アスLIVE、InterBee 2014と続いており今後もいろいろなイベントで見かけるものと思われる。道具を求めているのであれば、見かけたときは遠慮なくタッチアンドトライをして、率直な意見を出してあげてほしい。
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↑それにしても自作左手デバイスがかっこいい……。 |
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●関連サイト
―現代刀匠二番勝負―お守り刀展覧会×二次元vs日本刀展