楽天市場が出店者の利用する銀行口座を、楽天銀行に統一した。その措置についてサウンドハウスとの間で起こったトラブルのような展開について、先月週アスPLUSで取り上げた。
出店者の銀行口座を楽天銀行に一本化した楽天銀行。 |
楽天市場側はあくまでトラブルの際の管理が行き届くようにし犯罪被害を防ぐことが目的であるとしている。記事の中では併せて銀行の一本化は独占禁止法にあたらないかという疑問を、掲示板アプリ『LINE Q』に投げかけた顛末を掲載。ちょうど『LINE Q』では、キャンペーンで本職の弁護士である『弁護士ドットコム』の元榮太一郎さんが質問を受け付け中だった。
「楽天市場は独占禁止法に当たらないでしょうか?」
という『LINE Q』で投げかけた質問には回答期間中に反応はなかった。
だが!
後日になるが週刊アスキー編集部あてに『弁護士ドットコム』より連絡があったのだった。
いただいたメールには、「当日は時間の関係上、頂戴したご質問にお答え出来かねましたこと、恐れいります」ということが書かれてあった。 『弁護士ドットコム』の元榮太一郎さんの代理人によると、やはり『LINE Q』という掲示板アプリの限られた回答タイムの中では、返答が難しかったそう。そこで「折角なので、ご質問の件について以下にて元榮より法的見解を述べさせていただきます」と、改めて公式に回答してくれたのだ!
以下に、楽天市場の銀行一本化について独占禁止法にあたるか、『弁護士ドットコム』の元榮太一郎さんの見解を掲載する。
楽天市場が、各店舗が購入者との取引に使う銀行口座を『楽天銀行 楽天市場支店』に限定したことの独禁法上の問題点」について、 以下のとおりご回答させていただきます。
本件について独禁法上問題となるとすれば、「優越的地位の濫用」に該当するかどうかがポイントの1つとなります。
優越的地位の濫用の濫用とは、
◆自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が、取引の相手方に対し、その地位を利用して
◆正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えること
をいいます。
したがって、
◆楽天市場が優越的地位にあるといえる状況にあるといえるか
◆振込口座の限定が正常な商慣習に照らして不当といえるか
のどちらにも当てはまる場合に、優越的地位の濫用に該当することになります。
ただ、実際の判断に当たっては、
◆サウンドハウスの収益が楽天市場での取引にどの程度依存しているか
◆楽天市場がネットショッピング業界でどの程度シェアを占めるか
◆サウンドハウスが条件を甘受してでも楽天市場と取引しなければならない状況にあるか
等の、詳細な各種事情を踏まえて総合的に判断する必要があります。
加えてさらに「振込先口座の限定が公正な競争を阻害するおそれがないか否か」という観点からも検討する必要がございます。
このように、今回の楽天市場による振込先口座の限定が、独禁法違反になるか否かについて適切な判断を行うためには、上記のように詳細な具体的事情を検討する必要がございます。
楽天も今回の措置に踏み切るにあたっては、社内や取引先の具体的な事情等を踏まえた上での弁護士確認を行っている可能性が高いと思われます。
よって、それらの事情を把握しきれない第三者的な立場からは、あくまでも「『優越的地位の濫用』に該当するかどうかが独禁法への抵触の有無を判断する1つのポイントとなる」 という点を指摘させて頂くに留めさせて頂きたいと存じます。
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つまりは、事情をもっと検討しないとなんともいえないということだ。
“優越的地位の濫用”であるかどうかがポイントであるようだが、どちらが優越的立場であるかを法的に見定めるのも簡単ではないようだ。
というわけで、独占禁止法であるかどうかという疑問については簡単には何とも言えないということがわかったわけだが、『LINE Q』での質問に改めてしっかり回答をくれた『弁護士ドットコム』に御礼を言いたい。『弁護士ドットコム』は法律相談サービスを展開する日本最大級のサイトである。
■関連サイト
HOME - 弁護士ドットコム株式会社
優越的地位の濫用 - Wikipedia
独占禁止法とは:公正取引委員会
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