NTTドコモが研究している通信技術やサービスなどを一般公開する『DOCOMO R&D Open House 2014』が、神奈川県の横須賀リサーチパーク(YRP)で開催された。例年開催されているイベントだが、今年のメインテーマは“5G”。2020年を見据えた次世代通信技術を、ドコモは積極的にアピールしていた。
↑YRPにあるドコモR&Dセンター。 |
5G(第5世代通信)は、現在のLTE、LTE Advancedの次世代となる通信方式。現在は仕様も策定されておらず、各社が技術開発を行なっている段階。ドコモでは、「容量1000倍の大容量化」、「ユーザー体験スループット100倍の高速化」、「同時接続端末数100倍の多端末対応」、「無線区間の遅延1msの低遅延化」、そして「低コスト・省電力化」の達成を目指している。
これを実現するためには、利用できる周波数帯をさらに拡大しなければならない。このため、3GHz以上、10GHz以上といった現在よりも高い周波数帯を利用することを想定している。例えばノキアとともに70GHz帯、サムスンとともに28GHz帯、NECとともに5GHz帯、といった具合に、さまざまな周波数帯で実験を行なっている。この高周波数帯を活用する技術として、スモールセルやMIMOなど、新しい技術を導入していく。
↑ドコモが各社と行なっている高い周波数帯での技術開発。 |
すでに技術コンセプトは検討し、リアルタイムシミュレーターの開発や研究プロジェクトが開始されており、今年度は5Gの伝送実験や要素技術検討が始まる。東京五輪が開催される2020年には、少なくとも5Gの技術の一部を使ったサービスを開始するのが目標だ。
リアルタムシミュレーターは、今年のIT展示会『CEATEC JAPAN 2014』でも展示されていたもの。これに加えて会場では4×4MIMO構成のマルチアンテナ伝送技術実験を展示。5Gbps超のピークデータレートを達成しており、NTTぷららの4K映像配信を4台のテレビに表示するデモを実施していた。今後は超多素子アンテナによるMIMOビームフォーミングを実現することで、エリアの拡大と周波数利用効率の改善を行なう。
↑CEATECでも展示されていたリアルタイムシミュレーター。スタジアムに多数の人がつめかけ、同時に通信を行まった場合、5Gだとどの程度快適に通信できるかをリアルタイムにシミュレートしている。 |
↑マルチアンテナの実証実験。20センチ四方のアンテナを利用。 |
↑これがユーザーの端末代わりの装置で、これを移動させることで距離による速度の減衰が確認できる。 |
↑基地局に近い場合は5Gbps近くの通信速度。 |
↑数メートル離れるだけで3.53Gbpsに減衰した。 |
↑4台のテレビに4K映像を配信できる通信容量を実現。 |
5Gの要素技術としては、NOMA(非直交多元接続:Non-orthogonal multiple access)を紹介。4GのOFDMAではサブキャリアに分割したリソースを各ユーザー端末に割り当てていたが、このリソースに複数のユーザーの信号を割り当てて同時送信するのがNOMA。2つの送信アンテナで4つのビームを送信でき、ユーザーのスループットが改善する。
↑NOMAの概要。 |
↑NOMAのリアルタイムシミュレーション。 |
↑NOMAと2×2のシングルユーザーMIMOではスループットが54%向上している。 |
多数のアンテナ素子を使って周波数利用効率を上げるMassive MIMOも研究中。容量を格段に上げることができるが、高い周波数帯だと直進性が悪化し、例えば30GHz帯で853メートルの距離まで電波を飛ばすためには、80センチ四方に115×115個の素子を設置しなければならないそうだ。とはいえ、アンテナの小型化が可能になり、容量も確保できるなどのメリットがある。
↑Massive MIMOで効率化を図るが、どれだけ多素子を詰めるかが重要になる。 |
ドコモでは、東京五輪ではこうした要素技術の一部を実用化して既存のネットワークに適用しつつ、5Gの標準化、技術開発を続けていく。
Open Houseでは、ほかに無線LAN/TD-LTE向け技術として高効率マルチユーザーMIMOを紹介。無線LANやTD-LTEは、上りと下りの通信を時間で切り替えるTDD方式において、従来のマルチユーザーMIMOが事前に下りの通信路情報を端末から取得するため損失があったが、確認応答で推定して上りの通信路情報を下りに利用することで、この損失を削減。接続端末数によって1.6倍から2.3倍という通信速度を実現したという。IEEE802.11axという次世代無線LANや5G以降の携帯通信での活用を想定している。
↑高効率マルチユーザーMIMOの概要。 |
5GHz帯のアンライセンスバンドでLTE通信を行なう“LAA”技術では、屋内実験に成功。IEEE802.11nと比較して約1.6倍の通信容量の向上が確認できたという。LAAは、免許不要で利用できる周波数帯を利用して携帯通信を行ない、特に屋内などの狭いエリアをカバーすることを想定。通常の携帯通信の補完として検討されている。現在標準化が検討されている段階だが、同じ5GHz帯を使う無線LANとの共存など、今後使用を固めて実用化を目指す。
↑アンライセンス周波数帯を使ったLTE通信の概要と実験結果。 |
スマートフォン向けとして「周辺機器連携PF(プラットフォーム)」を出展。腕時計やメガネなどのウェアラブル端末が増加している中、それらの機器から得られる情報を中継し、スマートフォンと各種機器を連携させるためのプラットフォームとなっている。
↑周辺機器連携プラットフォームの概要。 |
通常、スマートフォンに接続しているウェアラブル機器は、それぞれの専用アプリ経由で機器にアクセスするが、今回のプラットフォームでは「周辺機器連携アプリ」をインストールすることで、さまざまなアプリの情報を簡単に連携させることができるようになるという。
デモでは、Google Glassにiコンシェルの通知を表示したり、Bluetoothの独自プロファイルを使うことで、スマートフォンと各種周辺機器とのデータ連携を実演していた。
似たようなものとしては“Device Connect Web API”があり、これは周辺機器をスマートフォンから操作したり、データを収集したりできるWeb APIで、スマートフォン内に仮想のウェブサーバーを起動し、そこから機器にアクセスする。それぞれの専用アプリを経由しなくても、スマートフォンから一括して操作できるのがメリット。
↑Device Connect Web APIの概要。 |
このほかにも、基地局からネットワークなど、さまざまな通信の最新技術から、Twitterの情報を使った地域情報抽出といったサービスなど、さまざまな技術が一堂に会するイベントとなっていた。
●関連サイト
・DOCOMO R&D OPEN HOUSE 2014
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