ゲームの主役級キャラがゲームの垣根を越えて対決するゲームは今では珍しくないが、大抵は格闘ゲームかパーティーゲームでしょ。麻雀で対決ってのはありそうであんまりないのでは? 今回はコナミが作ればこんなに凄いマージャンゲームができる! というわけで『牌の魔術師』ほか2本(『マジカルツリー』、『ロードファイター』)をお届けします。
■マジカルツリー(1984年発売)
『マジカルツリー』はインディアン坊や“アパッチ君”を操り、巨大な木の上の方を目指してひたすら昇っていくゲームだ。箱の裏に「登れや登れ天高く……」とあるように、ただひたすらに高みを目指すゲームのように見える。“おおブレネリ”の明るいBGMに乗せてピョコピョコとジャンプしていく、たいへん明るく楽しいアクションゲームだ。
↑地表からはハシゴで登り始める。この後はジャンプ&ツタ登りだ。先は長いぞ。 |
当時、“テキトーに始まってテキトーに終わる”あるいは“テキトーに始まってあと無限ループ”なんてゲームも多かった中で、“とある目的地”に向かって行く、ちゃんと設定のあるゲームがコナミのMSXゲームには多い。しかし、このゲームは目的地があるかどうか知らされず“ただひたすら上に行け”というノリで始まるため、もしやコナミではちょっと異色の無限ループ系ゲームかと思って始めてみれば、やはりどこまでもどこまでも確かに終わりなく昇り続ける。しかし、ご安心あれ。実はそんなことはない。お空の遥かかなたにはある2人の人物が待っている。言っておくが悲壮感とか無いぞ。
↑右上のハシゴめがけてジャンプ一閃。失敗すれば真っ逆さまだ。 |
さて、ゲームはある程度昇るごとに簡単なデモが入り、新キャラが登場して難易度が上がる。アパッチ君のジャンプは飛距離が絶妙で、敵の動きを読み切れないと連続して下まで落っこちてしまうことがある。枝から枝への飛び移りの際に気をつければ、それほど高い難易度というわけでもないので、オノレの集中力が勝負の鍵である。ゲームとしては『わんぱくアスレチック』以来のジャンプアクションとして、なかなかのデキを誇っている。
……のだが、このゲーム、以前紹介した『新世サイザー』程ではないが、なぜかかなりのレア作品で、現在入手はかなり難しい。MSXオリジナルの作品であることが災いしたのだろうか? と思ったのだが同時期の作品『スカイジャガー』もMSXオリジナルだし、むしろアパッチ君の動きなどは『スカイジャガー』にはない可愛さなのだが、当時の少年の人気はカッコ良さのほうに集中したのかもしれない。
もし『マジカルツリー』の完品パッケージをお持ちの方は、大変貴重なものですのでどうか大切にしてやってください。未来に残るかどうかは君の双肩にかかっているのだ。
■ロードファイター(1985年発売)
アーケードからの移植であるが、MSXのレースゲームとしては随一のスピード感を誇る作品だ。操作系はとにかくシンプルで、左右の移動とボタンによるアクセルのみ。ボタンを離すと減速(エンジンブレーキ)という説明がされている。『ハイパーラリー』に存在したギアチェンジの概念はない。
目的はとにかくゴールまで完走することのみである。全6ステージを燃料切れにならないように全速で駆け抜ける、それがロードファイターたる君に課せられた目標だ! ……と言いたいところだが、背景の説明が大変に乏しくて何だかよく分からないのである。説明書や箱には「世界のライバル達」とか「スタジアムは興奮で沸きかえって」、「チェッカー・フラグを狙え!!」とか書かれているものの、ゲーム中には順位も表示されない。まあ、細かいことは気にせず脳内補完設定で楽しむのがこの時代のゲームなのだ。
↑赤いのが自分の運転(?)する車。一番うしろからスタートだ。 |
さて『ロードファイター』は路肩にぶつかると爆発して燃料が減ってしまう。また、敵の車にぶつかると自車が滑り出し、さらに放置しているとスピンしてしまう。が、滑っている間に“カウンタステア(逆ハンドル)”を使うことでなんと“体勢を整える”のである。具体的には、「滑った!」と思った瞬間に滑っている方向にキーを軽く入れると、正常に戻る。少しでも遅れるとスピンしてしまうし、滑った場所によってはすぐに路肩にぶつかってしまうので、一瞬の判断が問われる。この一点のシステムが面白く『ロードファイター』を『ロードファイター』たらしめていると言って過言ではない。慣れてくると敵車にぶつかることを避けるだけではなく、“当たって滑る”そして“立て直す”をも含んだ挙動ができるようになる。これが快感で「俺、凄い!」とちょっと思い込めたりする。
↑ハートに“B”と書かれた謎のアイテム。正体は燃料補給なのだが。 |
今から見ると、発売よりやや前にあった“スーパーカーブーム”の影響も所々に感じられるが、そんなことを知らなくても直感的に遊べ、かつ十分に熱いゲームである。中古市場における入手も比較的容易なのでMSX初心者にもお勧めだ。また、Wii Uのバーチャルコンソールでも、今のところ入手可能である。
→バーチャルコンソール:ロードファイター
ところで燃料補給ができる“ハートにBのマーク”は“ボーナスラブ”というのだが、なにがどうして“ラブ”なのかやっぱり説明がない。他機種版の燃料補給は違うマークのようだし、はたしてこの“ハートにB”は他のゲームにも登場してたりするのか? 当時のコナミでなにか連動した動きとかあったのだろうか。まさか隠しヒロインが!? そんなハズないか。
■牌の魔術師(1989年)
『コナミの麻雀道場』から約5年。ずっと出ていなかった麻雀ゲームの進化形が満を持してついに登場した。前作では特に“コナミらしさ”があるわけではない、オーソドックスな“二人打麻雀”だったが、今回は“コナミらしさ”どころか“コナミの人気キャラクター大集合”である。で、参加したキャラは8人。その中から3人と、プレイヤーで四人対局と相成ったのである。
その面子は、『悪魔城ドラキュラ』からシモン、『がんばれゴエモン!』からゴエモン、『魔城伝説』からポポロンとアフロディーテ、『スナッチャー』からスナッチャー、『けっきょく南極大冒険』からペンギン、『グラディウス』からヴェノムとモアイという、今見ると少しばかり謎の人選である。まあ人でないどころか生き物でないものも混じっているが。
デモ画面ではポポロンが“騎士代表”、モアイが“島国代表”、ペンギンが“南極代表”なのはまあいいとして、ヴェノムとシモンがもはや何を代表しているのか理解不能である。スナッチャーに至ってはなんと“雀鬼代表”であるのだが、もしやスナッチャーが“雀鬼”なのは、“JUNKER”から来ているコテコテの関西系ダジャレなのだろうか? いや深読みしすぎか?
↑これがコナミを代表する(?)8人だ。麻雀の腕や如何に。 |
さてゲームはというと大まかに初心者向けの“練習対局”と上級者向けの“実戦対局”に分かれている。練習対局ではポンやチー、ロンなどの鳴き・あがりができる時には自動でウインドーが開き、不可能な場合選択できないなどのアシストが入る。一方、実戦対局では自分でメニューを開かないといけない上、間違えるとチョンボになってしまう。あわてて気が動転したり、ぼ~っと集中力を欠いたりして手を間違えないことも重要な実力のうちだが、今どきの親切なゲームに慣れてしまった“なまったゲーム脳”にはちと厳しい。まあ、ぬるくお気楽な練習対局モードが我が老体にはお似合いだ、と久しぶりにプレイして悟った次第。ちなみに『新10倍カートリッジ』がある時のみ実戦対局の戦績をセーブできるといった機能もついている。
↑ここでヴェノムがポン。ああ六萬が無くなってしまう! キビシイ局面だ。 |
対局キャラクターのグラフィックは8人で固定だが、性格設定モードというものがあり、7種の項目を自由に変化させることができるのがこの時期ではまだ珍しい。もちろん麻雀の方もローカルルールの設定なども細かに可能だ。
このゲームにはコナミMSXゲームでおなじみの“SCC”音源は搭載されておらず、代わりに音声を出力するための8ビットD/Aが搭載されている。これはコナミのMSXゲームではこれ1本だけの珍しい仕様であり、少し近いものとしては『新世サイザー』がある程度だ。これで出てくる声は割とクリアで、ヴェノムは野太い声、ペンギンは甲高い声など、ちゃんと性格づけがされているのが面白い。
とても丁寧で細やかな作りなのだが、MSXユーザーはあいかわらず中高生主体のユーザー層であった関係からか『激ペナ2』などと比べても見かけることが極端に少ないタイトルである。マニアなら見かけたら“即買い”で押さえておきたい1本だ。
(C)Konami Digital Entertainment
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ツイッたより(ツイッターのつぶやきをおたよりとして紹介します)
後野まつり@静岡市在住@m_atono さん
昭和でしか誕生日が入力できない占いセンセーション来たか…
――そうか、平成生まれ(もう26歳だ!)はこのソフトじゃ占えないんですね。昭和は遠くなりにけり……。
MW岩井@mwiwai さん
懐かしくて、職場だけど目がうるっとしました
――あと、若き日の自分の夢とか蘇ってきて切なくなったりしますよね。
ではサラバですです。
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