■王家の谷(1985年発売)
今も一部に熱狂的ファンを持つこのゲーム、コナミMSXゲームとしては初となる本格パズルゲームである。あらゆるジャンルに手を出していたコナミであるが、パズルを主体とした作品はこの『王家の谷』と続編『エルギーザの封印』のみである。『シャロム』のゲーム内にパズル的な要素はあったが、あれは例外としていいだろう。
英国マンチェスター生まれの冒険家“ビック”を操り、王家の谷に隠された“秘宝珠”を全て手に入れるのが目的である。
↑中央やや上がプレイヤーが操るビック。下のお宝を掘るためにツルハシで壁を崩す。一度崩した壁は、いわゆるロードランナータイプのように元に戻ったりはしない。 |
パズルゲームといってもそこはコナミなのでアクション要素が盛り込まれており、ウロウロするミイラ男を避ける、あるいは剣を投げつけて倒しつつ、ツルハシで床に穴を開けて道を切り開く。ミイラ男は4種おり、なんとなくそのへんを歩いているもの、階段の上り下りだけがやたらに速いものなどと個性が分かれている。しかし説明書によると“A型、B型、O型、AB型”なのだそうだ。明確に書かれていないものの、これはどうみても血液型ではないか。ミイラ男なのに血が通っている。無意味に斬新なキャラクターづけである。血液型で性格が分かれつつも“ミイラ男”となぜか男と限定されているのが妙におかしい。残念ながら、説明書にはここまでしか書かれておらず、どの血液型のミイラがどの性格かまでは分からないのであった。
↑敵は色別に性格が違っている。赤は階段を猛烈なスピードで移動する。血液型(?)は何型なのだろう? |
アイテムは剣とツルハシのみであるが、使うボタンは一つだけ。“アイテムを持っていない時だけジャンプする”というシンプルなシステムが、王家の谷を王家の谷たらしめている。剣を持っていればミイラ男に対しては安全だが、ジャンプすることができないので段差を越えられない。剣を投げた先でうまく拾えれば段差の先でも使えるが、ツルハシが必要な場合はそれもできず、なかなかうまくはいかない。このあたりのサジ加減が絶妙である。
パズルゲームは面の出来不出来が面白さと密接に関係するが、アクション要素もあるためパズルとしての厳密さはほどほどに抑えられている。多少ミスってもアドリブで回復できる程度なので、普通のゲーム好きにはほどよいぬるさで手軽に楽しめる。だがまだコンティニューが搭載されていなかった時期なので、一気に最後まで解くしかなく、となるとそれなりに難しめと言える。むしろ初挑戦の人には続編『エルギーザの封印』から入るのもよいだろう。
■エルギーザの封印(1988年発売)
↑MSX2版のタイトル。あえて言うならこちらがメジャーで定番。 |
↑んで、こちらが貴重なMSX1版だ。 |
名作パズルアクション『王家の谷』から3年を経て1988年に発売された続編。ゲームのジャンルはもちろんパズルゲームだ。パッケージではそれほど強調されていないが、正式タイトルは『王家の谷・エルギーザの封印』であり、カートリッジにも『King's VALLEY II』と書かれている。説明書にある主人公の名も、前作の“ビック”に対して“ビック13世”である。なんといきなり13世代も後なのだ。エヴァQもびっくりの急展開なのだ。ちなみに、ビック13世は英語で書くとVIC XIIIとなるが、その綴りからグラディウスのビックバイパーを連想してしまうのは少々ビョーキだろうか。
ストーリーはシンプルな『王家の谷』に比して壮大だ。時は現代すらも飛び越した未来、地球以外の惑星に存在する古代遺跡を調査していたビック13世は、惑星レムールの遺跡にある碑文を発見する。それによると、地球の古代エジプトの王族はレムールからの植民であり、ピラミッドとは崩御した王の魂をレムールへと瞬間移送する装置だったのだ。かつてピラミッドにあった財宝は装置の制御に使われており、それがなくなった今、コントロールを失って地球を破壊するほどのエネルギーになっているという……!
↑ステージ7で画面左上に突如現われたこのピラミッドは? 因みに“24パズル”で遊べるパズルステージも隠されているぞ。 |
というわけで、ご先祖様の所業を尻拭いをすることになったビック13世を操り、全60面をクリアするのが目的である。ゲームは各面に複数ある“ソウルストーン”を全て拾って出口へと向かうこと。ツルハシと剣だけだった前作から道具は4種、武器は2種に増え、敵のバリエーションも増したが、道具は1種しか持てず、ジャンプは何も持っていない時しかできないなど前作のシステムもしっかり継承している。そのうえで、止まっている敵を踏み台にして道具を使う必要があったりと、アクションとパズルを更に向上させている。しかしながら、前作もそうだったがアクション要素のあるパズルということで、抑え目の難易度になっている。特に複数画面を切り替える面は複雑そうだがパズルの難易度は抑えられており、むしろ一画面に納まる面のほうがパズル純度が高く解くのが難しい。
BGMはSCC搭載作品の中でも“いかにもエジプト風”な曲が多数用意されている。BGMも素晴らしいのだか、それにもまして効果音は一聴の価値のある出来だ。ドリルやツルハシなどで壁や床を掘るときの音はあまりにリアルで、当時担当者が「なんでそういう音が出たのかわからない」と言ったほどだとか。特定のステージにはミュージックステージに入ることの出来る場所があるので、ぜひそこでSCCサウンドを堪能していただきたい。
↑魔城伝説から続くポーズ時のお遊び。頑張れ、ビック13世!! 体力が命。腕立て伏せで体力向上だ! |
パズルというジャンルのせいか人気は他のコナミゲームに一歩譲る感はあったが、じっくり楽しめる1本としてオススメだ。スマホなどでパズルゲームが大人気の現在と違い、この頃はパズルゲームは地味な印象だったのだ。
MSXオリジナルの本作であるが、本作に限ってMSX1版とMSX2版が別個に発売されていて、時期的にもMSX1版はレアである。さらにパッケージには「ゲームエディットコンテスト」のお知らせと封筒が入っていた。本作はステージエディットが出来るようになっており、MSXを扱う雑誌で投稿ステージコンテストが行なわれていたのだ。『MSX・FAN』誌では特に担当者が大ハマリして、数ヵ月間投稿ステージを掲載するページがあったほどである。このコンテストの入賞者にはゴールドカートリッジ(中身は優秀作が遊べる)が20人にプレゼントされた。恐らくこれこそがMSX界で最も入手困難なゲームだろう。周りに持っている人がいたら大切にしてね! そして写真を撮ってTwitterとかでぜひ見せて頂きたい。
■コナミの占いセンセーション(1988年発売)
数あるコナミMSX作品のなかでも異色中の異色の作品、それがこの『コナミの占いセンセーション』である。コナミのMSXソフトはシューティング、アクション、スポーツ、アドベンチャー、ロールプレイング……と多岐にわたる(なぜかシミュレーションにだけは手を出していないけど)。それでいていずれのジャンルでも名作の評価をものにしているのだから凄い。しかしこの“占い”というジャンルのソフトについてはジャンルがジャンルだけに名作か否かの判断が難しいのだ。だって占いが当たればそれで名作なのか? そもそもどれくらい当たっているかどうかどうやって判断すれば良いの? 占いソフトの評価基準ってなんなのさ。
↑あすきーさんは、女性をとっかえ ひっかえしてばかりの“あそび人”って言われちゃってます。 |
そういえばこのソフト、広告の登場当初では『あけみとモアイの占いセンセーション』というモノ凄いタイトルが(仮)的に冠されていて、これがあまりに印象が強かったのか間違えてこっちの題名のまま覚えてしまっている人も結構少なくない。そりゃモアイが占ってくれるソフトなんて空前絶後だろうけど。占いだけに画面の印象は女の子を対象にと考えた雰囲気でもある。それで“あけみ”はわかるけど、なぜ“モアイ”なのよ? まあ、コナミ=モアイのイメージ戦略も当時はちょっとはあったけど。
さてこのソフトでは、ユーザーを20人まで登録できる。家族と友人合わせてもターゲットは子供世代中心なんだし十分な人数か。性別や生年月日、血液型は言うに及ばず、生まれた時間まで入力して占ってくれる。「そんなの分かるか!」という人も大丈夫。「分からない」という選択肢もちゃんとある。
占いは、西洋占星術、手相占い、おみくじ、そして血液型相性占いの4つ。この血液型相性占いでは基本的に男女の仲を占ってくれる。占い内容のバリエーションが最も多いのもこの項目である。実は男と男、女と女の組み合わせも占える……が片方を勝手に異性とみなして占ってくれるだけであった。さすがにジェンダーフリーの時代はまだ遠かったか。
手相占いはどうするのかと思ったらまさかの自己申告。自分の手をにらみながら一番近いと思われるものを選んでいく。おみくじは最も手軽で、大吉から大凶!まで出てくる。ただ、大凶だからと無闇に何もかも悪く書いてあるわけではないのがちょっとリアルである。ちなみに、おみくじを引く前に“おまいり”ができるのだが、ここで鈴をガンガン左右に振りまくるとそのうち鈴が落ちてしまい、おみくじの結果が問答無用で悪くなるというしょーもない裏技がある。ぜひ試して頂きたいが、おみくじだけに本当にバチが当たるのではないかとちょっと怖くなるかも。
↑ガーン!! “凶”が出たよ。この上に“大凶”もあって、しかもわりとよく出る。浅草寺もたじろぐ厳しさだ。 |
ゲーム要素のない作品でもあることからか、コナミゲームの平均より少し低価格(4800円)に押さえられているのだが、デザイン的に女の子っぽさを前面に打ち出したせいなのかプレイ経験のある人は少な目だ。しかし女の子っぽさとは裏腹に、占い結果が情け容赦のない厳しい内容を持って忠告してくるのが面白怖い。「あなたは自分の目的のためならどんなことでもする人だ」とかガンガン言われてしまう。厳しい口調は芸能人とかを相手に占う有名な人気占い師を思い起こすが、もしかしてあの人が流行った後に発売されていたらもっと売れたのだろうか?
ともあれ、人相の悪いペンギンに厳しい占い結果を言われるような体験は、『占いセンセーション』ならではである。機会があればぜひ体験して頂きたい。
(C)Konami Digital Entertainment
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ツイッターおったー(ツイッターのつぶやきをおたよりとして紹介します)
9月18日掲載の記事(“ピ”のつくゲームにまつわる法則とは?)へのツッコミをたくさんいただきありがとうございました。
内藤時浩@tokihiro_naito さん
フラッピーバードはどうなんだ?(笑)
――スマホ用の簡単どハマリゲーム『フラッピーバード』は“ピ”が付くのに大人気……って、え!内藤時浩さん!? 内藤さんが作られたゲームはMSXでもよく遊ばさせていただきました。ありがとうございます。
寺子屋師匠うずまき Узумаки@iligks さん
モピレンジャーの隠し操作は、「ラゾンをとにかく大量に岩にしていくと、ある段階ですべてのコモピラを救出したことになる」というもの。
――情報どうもありがとうございます。そうそう、そんな技だった。思い出した。狭いとこで岩にしまくると途中で詰むので広いとこ限定技なんだよね。これでやっと枕を高くして普段通り爆睡できます。
じゃ、まったね~
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