2014年9月2日~4日に行なわれた日本最大のゲーム開発者向けカンファレンスCEDEC 2014の1日目には、“起業一年目の通信簿 ~ふりかえり と これから~”というトークセッションが行なわれた。法人設立または独立後、約1年というゲームベンチャー4社が集まり、この1年間を“通信簿”形式で振り返るパネルディスカッションだ。大手ゲームデベロッパーなどから独立して、1年で経験できたこと、登記など会社員時代には必要なかった苦労などが語られた。
まずは起業のきっかけから。スマートフォンアプリのゲーム『ポポロコ -Poppoloco-』をリリース予定のジェムドロップの北尾雄一郎代表取締役。トライエースなどでプログラマーを務め、2013年5月にジェムドロップを設立。開発からお客さんに届けるまでをやりたいと思い、独立。ちょうどスマートフォンが流行っていたので、タイミング的に良いと思ったという。
histriaの佐々木瞬代表取締役、起業のきっかけは勢い。前職でやりたいことはやりきり、ちょうどプロジェクトが終わるタイミングで独立し3ヵ月後に起業を果たした。組織づくりをイチからしてみたいとの理由があった。Epic Gamesの開発したゲームエンジン“Unreal Engine 4”での開発ならココと言われる存在にしたいとする。
iPhoneアプリのゲーム『タップ・シーフ・ストーリー』を開発した2DFantasistaの渡辺雅央代表社員。前職のサイバーコネクトツーでも楽しく仕事をしていたが、インディーゲームを筆頭する新しい流れ、価値観を見たときに、0から始めたときに何かを残せるかと考え起業した。
架け橋ゲームズの矢澤竜太ローカライゼーションディレクター。法人化はしていないが、ザック・ハントリー氏とともに、日本のゲーム会社が海外で活躍するのを手伝う仕事をしたいと、日本と欧米のゲームの架け橋になれるようゲームのローカライズや翻訳などを行なう。またUnity Games Japanとも提携している。
セッションの冒頭は「旅の仲間は集まりましたか?」と、人材集めについて話し合われた。
メンバーが重要になるのは当然だが、規模が大きくないだけに苦労も多いようだ。ジェムドロップの北尾氏は、当期の目標は達成できそうとするものの、お金をかけずに、さらに人と会って話をすることを念頭に、学校に売り込みに行って直接、学生と話し合い、お互いのやりたいこと、学生が伸ばしたいと思っているところと、納得したうえで採用を行なっているという。
「仕事は順調?」との問いには、histriaの佐々木氏は、初仕事は前職からもらえたという。起業がバタバタで準備できていなかったところ、週3で3ヵ月、慣れたメンバーと慣れた仕事ができ、起業前後の準備の時間を充てられたのは運が良かったという。その後は戦略的に、“Unreal Engine 4”に強い会社といわれるよう進めている。1点突破はベンチャーとしていい方法だったと語る。
そして、あまり聞きたくない言葉だが「進捗どうですか?」のテーマでは、4社ともに「駄目です」と答える。2DFantasistaの渡辺氏は、まだオリジナルゲーム2本しか出せてないのは致命的と語る。起業してみて、想定していなかったことも多いという。架け橋ゲームズの矢澤氏も、解散しようという話も出たくらい、踏ん張り時はパンの耳を食べて生活していたという。副業で翻訳をしていたが、架け橋の仕事が多くなるほどオーバーキャパになり、移行期間の仕事量の増加は考えておいたほうが良いという。
histriaの佐々木氏もオリジナルゲームがつくりたいから立ち上げたが、まだ全然できていない。もらった仕事を断るのは怖いが、自分の企画した仕事をどう引っ張るか考えないといけないとする。
「次に頑張りたいこと」では、ほぼすべての会社が「生き残る」と回答。起業に関してそれぞれ方針、考え方、武器も違う。予測できないことに対してチャレンジすることが、おもしろい。リスクでもあるが、先頭になってチャレンジできるのが魅力とディスカッションを締めていた。
また、質疑応答では独立した会社を立ち上げるか、フリーのプログラマーとしてやっても良いのではないかと言う質問に対し、フリーとの違いはスケール、やりたいことの規模の大きさ。プラットフォーマーとの契約上、法人格が必要なケースもあり、またつくるたびにフリーの人を集める場合も毎回良いメンバーが来るとは限らないなど、会社を立ち上げるメリットがあるという。
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