2014年8月31日、JAXA 宇宙航空研究開発機構、宇宙科学研究所にて、2014年冬(12月予定)に打ち上げを予定している『はやぶさ2』フライトモデルの機体公開が行なわれた。はやぶさ2は、種子島宇宙センターからH-IIAロケットで打ち上げ、2018年夏に小惑星1999 JU3の探査と小惑星表面3か所からの物質採取、サンプルリターンをめざす。
↑正面から見たはやぶさ2。中央の円はサンプルを収める再突入カプセルで、カプセル下には収納した状態のサンプラホーンが。左側の格子は近赤外分光計となり、上側の赤いフタ2つは恒星センサー(スタートラッカ)だ。 |
↑背面となるイオンエンジン側。 |
↑上からみたところ。写真奥はサイエンスデータの送信を担当するKa帯高利得アンテナ。手前は主にコマンド送信など運用を担うX帯高利得アンテナを搭載している。 |
はやぶさ2は“インパクター(衝突装置)”とよばれる装置で人工クレーターをつくり、地中の物質を採取する方法を採取する。また、小惑星表面の狙ったところに着陸する“ピンポイント・タッチダウン”技術で、地中の物質がむきだしになったところを狙って降りるという、チャレンジングなミッションとなる予定だ。
↑はやぶさ2の重要なミッション、衝突装置などは機体下面に取り付けられている。 |
JAXAの國中均プロジェクトマネージャは、小惑星表面の物質サンプルリターンを再び行なう理由として、はやぶさが小天体(小惑星や彗星など)に新たな知見と、さらなる謎をもたらたしたことによると説明。イトカワから持ち帰ったサンプルにより、小惑星も“宇宙風化”と呼ばれる太陽からのエネルギーにさらされて変質していることがわかったからだ。
↑サンプラホーン。 |
↑3面展開する太陽電池パネルを折りたたんだ状態のもの。 |
宇宙風化した表面の物質は小惑星の表面で撹拌(かくはん)され、表面と内部の物質が入れ替わっている可能性もある。小惑星の新しい事実を確認できるのは、表面物質と内部のサンプル、ふたつを比較することが重要と、プロジェクトサイエンティストの名古屋大学 渡邊誠一郎教授。
また、今回のミッション説明に合わせて、はやぶさ2に搭載される小型の着陸型観測装置『MASCOT(マスコット)』の概要も公開された。こちらはドイツ宇宙航空センター(DLR)が中心となって開発し、フランス国立宇宙研究センターが電源と観測機器の一部を提供したもので、小惑星上に落下し、表面でカメラや近赤外線分光器などによる観測を行うためのもの。
↑欧州の協力によって搭載されるMASCOT(マスコット)。 |
わずか16時間の観測時間(電池寿命)のマスコットは、欧州がこの秋に史上初めて達成しようとしている彗星着陸探査と共通の技術を多く搭載しており、欧州のロゼッタ-フィラエが目指すチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星と、はやぶさ2が目指す小惑星1999 JU3、ふたつの星の観測結果が期待されている。
予定通り12月に出発した場合、小惑星1999 JU3には2018年6月~7月に到着する。その後、1年以上の観測ミッションを経て、2019年11~12月に小惑星を出発。地球帰還は2020年11月~12月を目標としている。
↑はやぶさ2の開発が行なわれているJAXA 相模原キャンパスの飛翔体環境試験棟。 |
↑試験棟のくずかごを許可を得て撮影。はやぶさといえば、リポビタンD飲んで頑張ったプロジェクトメンバーがいたことで有名。はやぶさ2も同様のようです。 |
↑試験棟のキャビネットの上に置かれていた雷除けのお札。夏場の試験中など、雷で中断し開発の進行が遅れないための祈願とのこと。 |
■関連サイト
JAXA 小惑星探査機「はやぶさ2」
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