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Windows情報局ななふぉ出張所

Surface Pro 3は手放しで絶賛されるべきPCだろうか?

2014年08月20日 17時00分更新

 今、最も勢いのあるWindowsタブレットといえば、間違いなくSurface Pro 3です。実際に都内の家電量販店でも最も目立つ場所を占有しており、他の製品を圧倒している感じがあります。

 マイクロソフトはMacBookに比べてSurface Pro 3が使いやすいことをアピールする動画を公開しており、ネット上の反応を見てもSurface Pro 3には絶賛の声が多いといえます。その一方で、「実際のところどうなのか?」という声が筆者の元にも寄せられています。米国での予約開始日にSurface Pro 3を予約、個人輸入した筆者が、いちユーザーとして、特に多かった質問を一刀両断してみたいと思います。

Q:ノートPCに比べると性能的に不足しているのでは?
A:薄さとトレードオフになっている部分があることは否めません。

 Surface Pro 3が搭載するCoreプロセッサーは、Ultrabookクラスのモデルを採用しています。タブレットや2-in-1をターゲットとした“Y”シリーズよりも高性能で、消費電力も大きなものです。Surface Pro 2と同様、Surface Proシリーズは性能面で妥協したくないというポリシーが感じられます。

 一方で、同世代のプロセッサーを搭載しながらSurface Pro 3は前モデルより薄型化しました。これに伴って新型のファンを開発しており、風量や騒音が多少マシになっているとはいえ、基本的に負荷が高まればファンを高速回転させるしかありません。この点はMacBook Airも同様です。

Surface Pro 3絶賛は本当か?
↑同世代のプロセッサーを搭載しながら薄型化した。やや“背伸び”した設計だ。

 長時間負荷をかけ続ける用途では熱を逃がしきれなくなり、クロック数を下げて温度が下がるのを待つことになります。この“オーバーヒート”状態に陥ってしまうと、大きな性能の低下を感じることになるでしょう。

 前モデルであるSurface Pro 2は、初代Surface Proのデザインはそのままに1世代新しいプロセッサーを搭載したことで、発熱やバッテリー駆動時間を大幅に改善しました。このことから、もしSurface Pro 3がインテルの次世代“Core M”プロセッサーを搭載したとしたら、同様の改善が期待できるといえます。

Q:タイプカバーを装着したら1kgを超えてしまうのでは?
A:事実ですが、タブレットと比べても見劣りしない軽さです。

 たとえばペン入力に対応した12.2インチの『GALAXY NotePRO』は約750gで、Surface Pro 3はそれより50g重い800gです。しかしSurface Pro 3がUltrabook並みのCore i5プロセッサー、それに伴う冷却機構、キックスタンドを搭載していることを考えれば、50gの差に収めたのは驚異的といえます。

 LaVie Zのように1kg以下の超軽量ノートPCもあります。しかしSurface Pro 3にはタブレット単体で使えるメリットがあります。筆者の予想では、LaVie Zがキーボード着脱型の2-in-1に進化したとしたら、もっと重くなるのではないかと考えています。

Q:Surface Pro 2で指摘された問題点は?
A:随所に改善が見られます。

 充電用電源コネクターの接続性は大幅に改善されました。まるで吸い込まれるように、コネクタを装着できます。ただ、従来のコネクタと形状が変わったため、ACアダプターに互換性がなくなりました。MagSafeコンバータのような変換アダプターが欲しいところです。

 タッチパッドは大きくなり、素材は初代タイプカバーに近い質感に戻りました。これにより使いやすさも改善されています。しかしながら、それは前モデルに比べれば、という意味であり、MacBookのタッチパッドを使っている人にとっては不満が残るでしょう。

Surface Pro 3絶賛は本当か?
↑タッチパッドは初代タイプカバーに近い質感に戻った。ただ、使い勝手はMacBookほどではない。

Q:薄さはいいがストロークがまだまだ浅いのでは?
A:ストロークは好みや慣れの問題が大きいのでなんとも言えません。

 たしかにデスクトップPC向けの伝統的なキーボードを使っていると、ストロークが浅いキーボードは打ちづらく感じます。MacBook ProとMacBook Airのわずかな違いでさえ、気になってしまう人はいるでしょう。このあたりは慣れの問題だと思っています。

 それをさらに進化させたのが“タッチカバー”です。Surface Pro 3用にはまだリリースされていませんが、レノボもThinkPad 10向けに似たようなキーボードを製作するなど、徐々に広がりつつあります。

Q:タイプカバーでタイピングしているとカバーが動くような?
A:卓上ではフラットな状態に伸ばして使うのも、ひとつの手です。

 タイプカバーの根本を折り曲げて装着し、キーボードに角度をつけた状態では、キーボード底面が中空状態となります。この状態で強めにタイピングすると、振動が起きるような不快感を覚えます。とはいえ、どうしても気になるなら、根本を折り曲げず、机にタイプカバーをくっつけた状態で使うのも試してみましょう。

Surface Pro 3絶賛は本当か?
↑タイプカバーの根本を折り曲げると、安定する。Surface Pro 3の新しいスタイルだが、下側が中空となってしまい、タイピング時に振動が起きる。
Surface Pro 3絶賛は本当か?
↑振動が気になるなら、従来通りフラットな状態で使ってもよい。

Q:“バッテリー駆動時間は9時間”、実際のところは?
A:8時間程度は期待できます。

 実使用時間に近いとみられる『BBench』の測定では、8時間半の動作が可能でした。13インチのMacBook Airに比べれば短いところですが、タブレットを一日中使うことを想定しても、十分な長さがあるのではないでしょうか。

 また、待機時の消費電力も下がっているようです。ノートPCやタブレットではスリープ状態で数日おいておくとバッテリーが完全になくなっているものがありますが、Surface Pro 3ではほとんど減っていませんでした。

Q:そもそも価格が高いのでは?
A:“Office搭載のプレミアムモバイルPC”として考えれば、お買い得です。

 Surface Pro 3はタブレットとノートPCの2つの性格を併せ持っています。そのため、価格を比較する際にもiPadやGALAXYシリーズのタブレットと比べるべきか、2-in-1型PCやUltrabookと比べるべきか、悩みどころです。前者の場合は割高に感じるでしょう。

 PCとして考えると、同程度の性能を実現したもっと安いノートPCはいくらでもあるでしょう。しかしタブレットとしても使える、これほどまでに薄型軽量の“プレミアムモバイル”製品としては、お買い得といえます。しかしながら、別売りのタイプカバーが1万4000円と、決して安いとはいえないことから、感覚的にはその半額程度を期待したいところです。

 一方、海外では1000ドルを超えるPCはかなり特殊な存在になりつつあります。この値段でも売れるPCは、MacとVAIO、そしてSurfaceくらいなものです。そしてVAIOは海外市場から撤退することになったので、SurfaceはWindows PCとして唯一、1000ドルを超えることが“許される”ブランドになりつつあるのは事実です。

Q:MacBook AirよりもSurface Pro 3を買うべき?
A:比較対象として適切なのか、疑問に思います。

Surface Pro 3絶賛は本当か?
↑老若男女から圧倒的人気のAppleのノートPC。
Surface Pro 3絶賛は本当か?
↑「スタバでSurface」の世界へと動くでしょうか。

 MacBook Airはクラムシェル型のノートPCであり、Surface Pro 3は2-in-1型PCです。そのため、両者を比べても“異種格闘技戦”にしかなりません。Surface Pro 3が比較対象とすべきなのは、レノボやASUSなどが作っている2-in-1型のWindows PCではないでしょうか。しかしマイクロソフトはWindows陣営のPCメーカーと対立することを極力避けたいがために、アップルを仮想敵としている可能性があります。

 実際のところ、ノートPCとして使うには、MacBookのほうが使い勝手としては優れています。Surface Pro 3では、膝の上で使うデモなどもありましたが、実際に行なってみると、いつマグネットが外れてタブレットが床に落ちるか不安になってしまうことが多々あるからです。また、単に“安いWindowsノート”が必要なら、Surface Pro 3より安価な製品がいくらでも売られているので、そちらを購入するほうがよほどいいでしょう。

 それでもタッチ操作やユニークなペン操作を駆使した新しい体験を求めたい人や、OneNoteなどの標準アプリ、どうしてもタブレットで使いたいWindowsストアアプリがある人にとっては、間違いなくSurface Pro 3は“買い”といえるでしょう。

山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ

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