小型ベアボーンの代名詞とも言える、インテルのNUCシリーズ。一辺約12センチというサイズは片手に乗るほど小さく、小型PC好きにとってかなりインパクトのある製品です。初代はファンの音が少々うるさく、さらに高負荷が続くと熱暴走することもあったりと、なかなかのやんちゃぶりを発揮していましたが、現行のHaswell世代になると発熱がグッと減り、安定性が向上。また、2.5インチベイを備えたSATA搭載モデルや、Bay Trail採用の省電力モデルが投入されるなど、より製品の幅も広がってきています。
そんなNUCシリーズですが、中でも特に異端と言えるのが『DE3815TYKHE』です。一番の違いは、形。他のNUCは上から見ると正方形に近いですが、この製品だけは明らかに横長です。といっても無駄に横長なのではなく、中を見てみればわかるのですが、マザーボードの隣に2.5インチベイが用意されています。薄くしながらも拡張性を確保するために、大きくなっているわけですね。また、縦置きでも使えるようにスタンドが付属しているので、ちょっとした隙間に設置できるというのもうれしい点です。形以外の特長といえば、ファンレスで動作することを忘れてはいけません。CPUは1コアで1.46GHz動作の『Atom E3815』ということもあって性能は期待できませんが、無音PCが簡単に作れるというのは魅力です。また、価格も実売で約1万8000円前後と安いこともあり、リビングに置くネット端末や、常時稼働させる家庭内サーバー用として有望な製品です。
●Windowsを買うと高くなっちゃう……どうする?
ベアボーンなのでメモリーとストレージを追加すれば完成するわけですが、PCとして使うにはOSが必要です。しかし、『Windows 8.1』はDSP版でも1万円以上。約1万7000円の本体にそれだけ追加投資するというのは、たとえ予算が許しても気持ち的に抵抗があります。ネット端末としてしか使わないのであれば、なにもWindowsにコダワル必要はないのではないでしょうか。
そこでオススメなのが『Ubuntu』です。いわゆる“Linux”なわけですが、最初から日本語に対応しているし、インストールや操作のほとんどはGUI。なにより、無料で利用できるOSっていうのがうれしいところです。もちろんソフトも充実していて、ブラウザーの『Firefox』、オフィスソフトの『LibreOffice』、画像編集の『GIMP』など、Windowsでもユーザーの多いメジャーどころがそろっています。
操作がWindowsと違うため、“使いにくい”などと言われることも多いのですが、慣れてないものを使いにくく感じるのは当たり前のこと。初めてWindowsを触った時のことを思い出しつつ、ゆっくりと慣れていけばいいだけですよ。
●Ubuntuをインストールしてみよう!
ということで、やっと本題です。UbuntuどころかWindowsのインストールもしたことがない、という人でも大丈夫なように、手順を追ってインストール方法を解説していきます。なお、インストールメディアを作るためには、すでに動作しているPCが必要です。
●インストール用のメディアを作る
1.まずはUbuntuの公式サイトへアクセス
インストールするには、まずOSそのものを手に入れなければなりません。Windowsのようにお店で売ってはいませんが、公式サイトからいつでもダウンロードできます。ということで、まずは公式サイトへアクセスしましょう。超絶親切なことに、トップに「Ubuntuのダウンロード」という、誰が見ても間違い用のないリンクボタンがありますので、クリックします。
2.『日本語Remixイメージ』をダウンロード
http://ubuntulinux.jp/download
本家のイメージでもいいのですが、インストール直後から日本語環境が整っている『日本語Remix』のほうがお手軽です。「日本語Remixイメージのダウンロード」をクリックし、リンク先から「ubuntu-ja-14.04-desktop-amd64.iso」をダウンロードします。
3.USBメモリーからインストールする準備
ダウンロードしたISOイメージは1GB以上ありますので、CDではなくDVD用となります。実際DVDに焼いてもいいのですが、DE3815TYKHEには光学ドライブがありません。そこで、USBメモリーからインストールすることにしましょう。といっても難しいことはなく、ダウンロードしたISOイメージを特殊なソフトでUSBメモリーへと書き込むだけです。今回は『Win32 Disk Imager』(http://sourceforge.net/projects/win32diskimager/)を使うことにします。
4.2GB以上のUSBメモリーに書き込む
2GB以上のUSBメモリーをPCに挿して、Win32 Disk Imagerを起動。書き込みファイルにダウンロードしたISOファイル、“Device”にはUSBメモリーを選択します。
5.ファイルの指定でちょっと注意!
ファイル選択画面では「*.img」と拡張子が指定されていて、一覧にISOファイルが出てきません。なので、これを「*.*」に変更してから、ダウンロードしたISOファイルを選ぶようにしましょう。
6.警告画面で最終確認
ISOファイルをUSBメモリーへと書き込むと、元の中身はすべて消えてしまいます。書き込み先のドライブに間違いがないかをもう一度確認しておきましょう。ちなみに自分は過去に何度か痛い目にあってます。間違いがなければ、“Yes”を押して書きこみます。
7.書き込みが終わるまで待つ
書き込み時間はUSBメモリーの速度にもよりますが、数分程度で終わります。この間、別のソフトを操作していても大丈夫ですが、万が一を考え、何もせずに待つほうが安全です。数分ですしね。
8.インストール用USBメモリーの完成!
「Write Successful.」と出れば、インストール用のUSBメモリーが完成です。引き抜いて、早速Ubuntuのインストールに進みましょう。
●インストールメディアから起動してOSをインストール!
9.作成したUSBメモリーを挿し込み、電源オン
ここからがUbuntuのインストール作業となります。USBメモリーを挿して電源を入れると、OSがないので自動的にUSBメモリーから起動します。BIOSの設定によって左、もしくは右の画面が表示されるはずです。見た目は違いますが、どちらも、インストールせずにUbuntuを試すかそれともUbuntuをインストールするか、といっているだけですので、迷わず「Install Ubuntu」か「Ubuntuをインストール」を選びましょう。
10.日本語を選んで続ける
インストールで使う言語の選択です。わざわざ日本語Remixを選んだくらいですし、日本語のまま続けます。
11.LANケーブルは接続しておく
インストール準備画面が表示されます。準備といってもディスクに空き容量があるかのチェックですね。なお、ここでLANケーブルを接続しておけば、アップデートもダウンロードしてくれるのでのちのちの面倒が少なくなります。「インストール中にアップデートをダウンロードする」にチェックを入れておきましょう。
12.ディスクを削除してインストール
Windowsなど他のOSがある場合、パーティションを分割してインストールするなどのオプションが選べるのですが、今回はUbuntuしかインストールしないので、「ディスクを削除してUbuntuをインストール」でオッケーです。「インストール」をクリックします。
13.地域設定
Windowsでもある地域設定ですね。日本国内であればTokyoのままで大丈夫です。ピンの位置が微妙にずれてる気もしますが、気にしない方向で。
14.キーボードのレイアウト設定
キーボードのレイアウトを選択します。日本語キーボード以外や、特殊な配列の製品を使っている場合は変更しましょう。そうでなければデフォルトのままで問題ありません。
15.自動ログインも設定できる
「あなたの名前」は使用する人の名前、「コンピューターの名前」はPCを識別するための名前です。なお、本名でなくとも、渾名でも通称でもなんでも大丈夫です。重要なのは、ユーザー名とパスワード。特にパスワードは、システムに変更を加える場合に毎回入力が必要となるため、忘れないようにしましょう。またここでは、起動時にログインをすっ飛ばしてくれる自動ログインを選択できます。セキュリティー上は好ましくないのですが、自分しか使わないのであれば設定しておくのもアリでしょう。
16.あとはインストール完了を待つばかり
ここまで設定すると、実際のインストールが開始されます。時間にして約20分でしたが、インストール先のストレージの速度によって多少変わるかもしれません。ひたすら待ちましょう。
17.再起動の画面が出たらインストール完了
インストールが終わると、最後に「今すぐ再起動する」ボタンが表示されます。ここまできたらお疲れ様です。このボタンを押すと、Ubuntuが起動……するハズなんですが、たまに画面が止まって起動しないことも。
18.この画面で止まったままの場合は……
5分ほど待っても反応なければ電源ボタンを長押しし、強制的に電源をオフにしてからUSBメモリーを抜き、再度電源を入れましょう。そうすれば起動します。
19.自動ログインでデスクトップが表示される
インストール時に自動ログイン設定をしていれば、いきなりこんな画面が表示されるはずです。自動ログインにしていなければ、ユーザー名とパスワードを使ってログインすれば同じ画面になります。あとはじっくりと使うだけです!
●なにができるの?どんな速度で使えるの?
CPU性能が低いのはすでにわかっていることですが、実際、どのくらいの速度で動作するのか気になるところ。操作時のレスポンス、ウェブ閲覧、動画サイト視聴、動画ファイル視聴、ブラウザーゲームの5つの項目でチェックしてみました。ただし、速度はあくまで体感的なものなので、個人差がある点はご容赦くださいね。
チェック1:操作時のレスポンス
デスクトップでの操作やソフト起動、ファイル操作全般は、操作から半テンポ遅れるようなもっさり感があります。とはいえ、ちょっと動いては止まるといったイラつくようなものではないので、のんびり構えていればそれほど気にならない程度です。
チェック2:ウェブ閲覧
ブラウザーには標準のFirefoxを使用。スクロールが多少もたつくものの、ページ表示そのものは遅くないので、特に不満もなく読み進められます。ニュースサイトなどを見るぶんには問題ないかと。
チェック3:動画サイト視聴
Firefoxを使い、YouTubeで1080p、720p、480pと切り替えて再生。1080pでは再生がさっぱり間に合いませんが、720pではあきらかに抜けているフレームがあるものの、なんとか視聴可能。480pまで落とせば、ほぼ満足いく視聴が可能でした。高画質での視聴は厳しいですが、話題の動画をチェックするくらいはいけそうです。
チェック4:動画ファイル視聴
標準のプレーヤーを使って、MP4ファイルを1080p、720pでテスト。1080pでは音声と映像がズレまくって厳しいものがありましたが、720pであれば音声がズレることもフレーム落ちが気になることもありませんでした。メディアプレーヤーとしては、そこそこ頑張ってくれそうです。
チェック5:ブラウザーゲーム
みんな大好き『艦隊これくしょん』でチェック。起動も動作も問題ないのですが、やはり重たい。特に開幕爆撃のようなアニメーションがあるシーンではガッタガタに。こころなしか、Windowsより少し重たいように感じました。とはいえ、シューティングや音ゲーのようなタイミングが重要となるゲームではないので、遊べることは遊べます。遠征やオリョクルなんかは結構イケます。
元の性能が低いので、サクサク動いてなんでもできるなんていうことはありませんが、動画はそれなりの解像度で再生できますし、ブラウザーゲームも動きます。ネット用の端末として使うのであれば、十分な性能じゃないでしょうか。Ubuntuに慣れてきたら、USBのHDDを増設してファイルサーバーを作ったり、XBMCやMediaTombを使ってメディアサーバーを作ったりと、いろいろ楽しんでくださいね。
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