ダヴィンチ 2.0 Duo
●XYZプリンティングジャパン
●実売価格 8万9800円前後
XYZプリンティングジャパンは、2ノズルを搭載し2つのフィラメント(材料)を同時にひとつの物体造型に使える熱溶解積層型3Dプリンター『ダヴィンチ 2.0 Duo』を7月24日に発表した。しかも、2ノズルモデルとしては最安となる8万9800円と驚きの価格だ。正式発売は2015年初頭だが、Amazonで数量限定で販売している。この『ダヴィンチ 2.0 Duo』を速攻レビュー。なお、本レビューで登場する製品は、試作段階のファームウェアを搭載しているため、プリントの品質は向上する可能性がある。
『ダヴィンチ 2.0 Duo』は、3月に発売された『ダヴィンチ 1.0』の2ノズルモデル。性能や機能、使用ソフト、筐体の大きさやデザイン、本体の操作系は『ダヴィンチ 1.0』そのままで2ノズル化している。なお、2ノズル化に伴い造型可能な最大サイズが『ダヴィンチ 1.0』と比べると幅が50ミリ小さくなっている。
まずは『ダヴィンチ 2.0 Duo』を価格面とスペックで見てみよう。ライバルとなる2ノズルモデルと比べると安価だがスペック面では決して劣っていないのがわかる。
製品名 | メーカー | 価格 | 最小積層ピッチ | 最大造形サイズ(W×D×H) | 使用可能素材 | その他 |
ダヴィンチ 2.0 Duo | XYZプリンティング | 8万9800円前後 | 0.1mm | 150×200×200mm | ABS | 台座のキャリブレーション、ノズルクリーニング機能 |
Cube3 | 3Dシステムズ | 17万円前後 | 0.07mm | 152×152×152mm | ABS、PLA | WiFi接続機能 |
MakerBot Replicator 2X | ストラタシス(MakerBot) | 33万9800円 | 0.1mm | 246×152×155mm | ABS、PLA | SDカード/USBメモリーからスタンドアロンでプリント |
BS01 デュアルモデル | ボンサイラボ | 11万9800円 | 0.1mm | 150×130×100mm | ABS、PLA、PolyFlex | BS01ユーザーはアップグレードが可能 |
『ダヴィンチ 2.0 Duo』は、使用素材がABSに限られるが、それ以外の面では最小積層ピッチは0.1ミリと、現行の家庭用3Dプリンターではトップクラス。造型可能な最大サイズもほかのモデルよりも大きい。
↑2色のフィラメントはカセット式でワンタッチ装着できる。 |
ベッドのキャリブレーションとノズルのクリーニング機構を搭載
ダヴィンチシリーズの真骨頂はその使い勝手の良さにある。どんなにスペックの良い製品でも、セッティングが面倒だったり、造型に失敗したりできあがった造型物の仕上がりが悪いと意味がない。その点で『ダヴィンチ 2.0 Duo』は、『ダヴィンチ1.0』から受け継がれる優れた機構を搭載している。
↑『ダヴィンチ 2.0 Duo』のベッド部分。 |
ひとつめは“ベッドのキャリブレーション機構”。“ベッド”とは造型物を積み上げながらつくる台のこと。熱溶解積層型の3Dプリンターではこのベッドとノズルの隙間が均等でないと、造型が失敗してしまう。多くの3Dプリンターでは調整が面倒で、時間もかかるが、『ダヴィンチ』シリーズではキャリブレーション機構でその手間を軽減し、確実な調整ができるようになっている。
↑『ダヴィンチ 2.0 Duo』のベッド下部分。ネジを回してキャリブレーションの調整を行なう。 |
『ダヴィンチ1.0』では、ベッドの高さ調整ネジが、前側の左右と後ろ側の右にあったが、『ダヴィンチ 2.0 Duo』では、前側の左右と後側の中央になった(写真上)。『ダヴィンチ1.0』では、後側を動かすと右側も上がってしまうため、調整しにくい場面もあったが、『ダヴィンチ 2.0 Duo』では左右と前後が独立して調整できる。
『ダヴィンチ1.0』では調整作業に最長で1時間かかる場合もあったが、『ダヴィンチ 2.0 Duo』では20分ほどで完了できた。
次に“ノズルのクリーニング機構”と“ゴミを貯めるダストボックス”だ。熱溶解積層型では、造型時にノズルを200℃に熱するが、ノズル内の材料が垂れてきてしまうことがある。
↑ノズルから垂れ下がるフィラメント。 |
材料が垂れると思わぬゴミが造型物に付着したり、下手をすると造型に失敗することがある。これを掃除して貯めてくれる機構が『ダヴィンチ』シリーズに搭載されている。
↑ダストボックスには、ゴミになったフィラメントが入るしくみ。 |
もちろん、『ダヴィンチ 2.0 Duo』ではそのクリーニング機構も2ノズルぶんあり、それぞれのノズルをキレイにし、ゴミとなった材料はゴミ箱に溜めてくれる。
↑『ダヴィンチ 2.0 Duo』内部の左右に、ヘッド部分のゴミを取るクリーニング機構とゴミを溜めるダストボックスがあり、造型物にゴミが付着するのを防げる。 |
なお、『ダヴィンチ1.0』は実際に国土地理院でも使われている実績がある。担当者によると、地形模型の製作にフル稼働しているが、特に造型が失敗することもなく安定して使えているとのこと。こうした導入実績と安定した動作がダヴィンチシリーズの魅力と言えるだろう。
2色の物体を造型してみた
次は造型品質を見てみよう。2色で造型するためには、付属のプリントソフト『XYZware』で2つの物体を読み込んで、それぞれにどのノズルで造型するのか設定する。ノズルを設定すると自動的に色を分けて表示されるので、どんな造型結果になるかイメージできる。
↑ひとつの物体を2色で造型する場合は、1色につきひとつの物体をモデリングし、専用ソフトで2つの物体を読み込んで位置を調整する。 |
↑それぞれの物体をどちらのヘッドで出力するかも選択できる。 |
あとは『ダヴィンチ1.0』と同様に印刷品質を設定すれば、すぐに印刷できる手軽さも魅力。ただ、『ダヴィンチ』シリーズでは、どんな種類の材料がセットされているかカートリッジの情報を取得しており、他社の廉価な製品に比べてかなりインテリジェンスな仕様となっているが、『XYZware』でこのセットした色が反映されないのが残念なところ。とはいえ、まだ試作段階なので、後日のアップデートに期待したい。
実際に0.1ミリピッチで造型したものがコレだ。
『ダヴィンチ1.0』に比べて表面の滑らかさでは改良されている。他の機種と比べても印刷の品質は同等かそれ以上だろう。2色の塗り分けもキッチリしていて、2ノズルならではの仕上がり。ただ、赤色の一部に白い材料がゴミとして付着している部分が若干気になる。
もちろん、造型する形状によって付着する/しないはあるようで、細かいピッチで白と赤が塗り分けるような部分で付いてしまう。ただ、これもノズルの温度調整などによって改善できる可能性が高く、今後のアップデートに期待したい。XYZプリンティングは、XYZWareやファームウェアを頻繁に改良して公開しているため、いずれ改良される可能性は高い。
1ノズルモデルを検討しているユーザーも買い
『ダヴィンチ 2.0 Duo』は、現行の家庭用3Dプリンターとしてはダントツのコストパフォーマンスを備えており、8万9800円という価格は1ノズルモデル機と比較しても割安感がある。また、『ダヴィンチ 1.0』が6万9800円で販売中で、2万円を足して2ノズルにするか、最安の1ノズルにするか悩むところだが、3Dプリンターとして調整のしやすさを取るなら、2万円足しても『ダヴィンチ 2.0 Duo』がベスト。できるだけ大きな物体を作りたいなら『ダヴィンチ 1.0』がオススメだ。
COMPUTEXでは『ダヴィンチ 2.0 Duo』のほかに、ウェブカメラやWiFi機能を備えた『ダヴィンチ 2.1 Duo Plus』や、『ダヴィンチ 1.0』に3Dスキャナーを搭載したモデル『ダヴィンチ 1.0 AiO』なども発表しており、XYZプリンティングの動向は今後も注目が集まりそうだ。
●SPEC
造型方式 熱溶解積層方式
ノズル数 2
使用可能材料 ABS
積層ピッチ 0.1/0.2/0.3/0.4
造型速度 60/90/120mm/秒
最大造型サイズ 150(W)×200(H)×200(D)mm
インターフェース USB2.0
対応OS Windows7以上/MacOS 10.8以上
造型可能フォーマット STL、XYZ Format
サイズ/重量 468(W)×510(H)×558(D)mm/24.5kg
■関連サイト
XYZプリンティングジャパン
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89,800円
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