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「楽団ひとり」ことshuttokenさんに聞いた、「分身動画」が生まれるまで

2014年07月21日 09時00分更新

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シュールな絵面なのに美声というギャップ

 今年5月、『独りでやさしさに包まれたなら』という合唱動画が「スゴイ!」と、ネットで大いに話題となった。その名のとおり、ひとりで歌い分けた5つのパートを合唱させるという内容なのだが、歌唱はもとより、スゴかったのはビジュアル面だ。動画の冒頭、同じ服、同じ容姿の人物が5人登場し、アカペラで歌い出すというシュールな構図に、まず目を奪われる。途中からピアノが流れ出すとシーン転換して演奏者が加わり、合計6人の大所帯に。さらに、ひとりが指揮をとりはじめたかと思いきや、指揮者はピアノへ移動して“ひとりで連弾”したりと、自由に動き回るのがおもしろい。ビジュアル的に動きがある反面、歌のほうは息がぴったり合っていて、ハーモニーが心地いい。見た目とのギャップが際立ち、見ていて「やるな」と思うと自然に笑みが浮かんでしまう。

 人気に火がつくきっかけとなったニコニコ動画には、“楽団ひとり”や“高性能ぼっち”というタグまで登場し、再生数は5月19日の投稿から1ヵ月ほどで60万に達する勢いだ。まとめサイトやツイッターなどでも話題となり、テレビの情報エンタメ番組でも取り上げられている。

ソフトを触って出てきた分身動画というアイデア

 制作者であるshuttoken( しゅっとけん)さんによれば、「合唱は小学2年生のころからはじめて、今でも社会人合唱団に入って続けている趣味」だという。大学では放送の録音技術について学んでいたこともあって、コーラスの多重録音を個人的に楽しんでいた。しかしあるとき、自分の友人や動画共有サービスを通じていろいろな視聴者にも見てほしいと、投稿を思い立つ。その際、特に気にしていたのが映像の見せ方だった。

 分身という見せ方を思いついたのは、「動画編集ソフトをなんとなく触っていて“クロップ”や“ガベージマット”などのマスク機能を見つけた」のがきっかけ。人物の切り出しというと、青や緑の背景を使ったクロマキーが有名だ。一方、ガベージマットなら、同じ背景の中、固定カメラで何回かに分けて人物が重ならないように撮影し、背景を別途用意せずに人物を切り抜いて合成できるという。そうしたアイデアをはじめて実現したのが、'13年1月、YouTubeに投稿した『【男声合唱】さらに高いみち』という動画だ。それ以降、4度の投稿で見せ方を磨き、5作目の『独りでやさしさに包まれたなら』が生まれ、話題となったわけだ。

趣味だからこそ妥協しないでやりたい

 『独りでやさしさに包まれたなら』では、とくに人物の切り抜きを極め、人物が重なるピアノの連弾シーンでは、2時間をかけて1フレームずつ人物をていねいに切り抜いていった。また、歌唱だけでなく、ピアノの演奏、高校の合唱部で経験のある指揮をとるシーンも盛り込んだ。

 「作品をつくるときに妥協はしたくないんです。以前、手抜き作品が、なぜか評価されることがあって申し訳ない気分になったこともありますし。何度も見返して、ここはまだなんとかできるよな、というシーンがなくなるまで直します」

 つまり、もう直せないと言えるレベルにまで極めているのだ。
 目でも耳でも最後まで飽きさせない自信作は、今年5月にYouTubeで公開し、その後、過去4作品とともにニコニコ動画に再投稿した。

 「当時、旅行中だったんですが、いきなり再生数が伸びて驚きました。ニコ動では“ひとりぼっちのプロ”というコメントが印象に残ってます。自分の力を最大限出したものなので光栄です」

 直接面識のない親の知り合いに、「息子さんは六つ子さんだったのですか?」と言われたこともあったとか。ぜひ実際に観て、楽しんでほしい。

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shuttokenさん
読み方は"しゅっと けん"。神奈川県出身の26歳。日本大学芸術学部放送学科卒。某技術系の会社に勤めるかたわら、社会人合唱団でも活動中。

 

■関連サイト
shuttoken「分身合唱動画」展示室

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