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現地の人に聞く「なぜインドネシアでは日本のポップカルチャーが人気なの?」

2014年06月14日 10時00分更新

 インドネシアは先日、MIKU EXPOの第1回開催地として大成功をおさめた場所でもあり、AKB48の姉妹グループJKT48が活動していることでも知られている。日本のポップカルチャーはどの程度浸透していて、在住の日本人はどう受け止めているのか。日本人とインドネシア人のハーフで、2013年9月に東ジャワに移住した起業家・渡邉裕晃さんにインタビューしてみた。

日本のポップカルチャーはなぜ人気?
↑インドネシアの人口は2012年で2億4700万人と、世界第4位の規模になる。今回訪れたのは首都のジャカルタ。高層ビルが立ちならび、内部で外車が販売されているような高級モールも存在する。

──なぜ、こんなに初音ミクを含む日本のポップカルチャーが受け入れられているのでしょう。

渡邉 「'80年代ぐらいから放映していた、日本のアニメにあると思います。当時、アニメを観ていた世代が親になり、その子供も日本のアニメが好き、という状況ですね。例えば、『キャンディ・キャンディ』が大好きだった親が、子供にキャンディーちゃんと名付けたとか。そのキャンディーちゃんは日本が好きで、何度も日本に留学して、今も日本で暮らしていますよ。」

──今はどんなアニメが人気なんですか?

渡邉 「『ドラえもん』や『名探偵コナン』、『ワンピース』などが知名度が高いですね。この前、マラン在住のアニメ好き女子高生に聞いたら、『ソードアート・オンライン』、『黒子のバスケ』、『青の祓魔師』、『アクセル・ワールド』、『進撃の巨人』など、いっぱい上げてくれました(笑)。そうしたアニメを入り口にして、日本語を勉強する若者が多いです。実はインドネシアでは、後期中等教育機関(高校)の必修科目である第二外国語で、日本語が選べるんですよ。」

──えっ、学校で!?

渡邉 「2006年にカリキュラムの改訂があって、中国語、フランス語、ドイツ語、アラビア語に加えて、日本語の5つから選べるようになりました。日本語を学んで、さらにポップカルチャーに興味を持つという感じです。」

──そういえば、現地で取材中も、インドネシアの若者に日本語で話しかけられたりしましたが、そうした事情があったんですね。

渡邉 「なんで日本語を勉強し始めたんですか?」って聞くと、みんな「アニメが好きだから」っていいます。2013年のデータですが、インドネシアは中国に次いで2番目に日本語学習者が多いんです。3年ごとに統計を取っていて、前回は2位が韓国だったのですが、追い越しました。10~20代の若手に限って言えば、世界1位になるそうです。」

──アニメを通じて、徐々に日本語が広まっているんですね。

日本のポップカルチャーはなぜ人気?
↑現地で売られていた日本の人気コミック。
日本のポップカルチャーはなぜ人気?
↑ジャカルタの痛車も複数見かけた。こちらはアニメ『キルラキル (KILL la KILL) 』の流子が描かれた痛車。
日本のポップカルチャーはなぜ人気?
↑ジャカルタにあるスカルノハッタ国際空港のお土産屋。キティちゃんやドラえもんなど、日本のキャラクターが見える。

渡邉 「おもしろいのは、大学や高校で日本に限定したイベントを開催することがあるんです。」

──地域の学校をいくつかまとめて実施するのですか?

渡邉 「いや単独です。この前、ある大学の日本祭では、開会式の時に日本の大使館スタッフの方が挨拶のスピーチをされていました。でも、私の近所で、かつ私が把握しているだけでも日本祭の学園祭が5月に2つ、6月に2つ。他の都市でもたくさんあるでしょうから、大使館スタッフの方も、すべては回りきれないのではないでしょうか。数はかなり多いとおっしゃっていました。」

──来場者はどれくらいですか?

渡邉 「この前行った高校の日本祭りにも、多くの人が来ていました。ほかの学校からも日本マニアが集まったりするんです。内容としては、日本語弁論大会や日本にまつわるクイズ大会、習字大会、描く方の漫画大会とかですね。屋台には、お好み焼きとか、たこ焼きとか日本の食べ物が並びます。」

日本のポップカルチャーはなぜ人気?
↑高校でやっていた日本祭りの写真。
日本のポップカルチャーはなぜ人気?
↑高校生がセーラー服のコスプレで日本の歌を歌っていたシーン。ちなみに中央にいる女性は校長先生だそうです。
日本のポップカルチャーはなぜ人気?
↑ふつうにコスプレの女の子が買い物をしています。

──すごい。日本の祭より日本らしいですね(笑)

渡邉 「クイズ大会では、“このアニメのこのキャラのフルネームは●●●である。○か×か?”といった質問が出たりします。コスプレ大会も定番です。男性のコスプレイヤーも多くて、仮面ライダーとか戦隊モノのヒーローの格好をしていますね。この前、コスプレをしながら『もし、ショッカーが強かったら』って劇をやっていたのも興味深かった。」

──内容をキチンと理解して二次創作する、ってなかなか高度ですね。

渡邉 「ニーズを受けて、コスプレ服専門のレンタルショップも登場しています。」

──おお。どんな服装があるんですか?

渡邉 「中国風、韓国風、日本のアニメ、女子高生、軍服、着物とかですね。パーティーや学園祭などのイベントで着るといってました。ほかにも最近オープンしたマンガ喫茶では、開店記念にコスプレ祭りみたいなイベントを開いていて、コスプレイヤーが多く集まっていました。」

──そうした話を聞いていると、2011年にJKT48がデビューしたというのも自然ですね。

渡邉 「僕も一度見に行きましたが、そのときはチケットの倍率が5倍ぐらい。」

──5倍!

渡邉 「コンサート中は、インドネシアの青年がペンライトを振ったり、「超絶かわいい!」って日本語で声援を送ったりしてます。終演後には入り口のところにメンバーが全員立っていて、ハイタッチをしてました。私もしました(笑)。」

──(笑)。そういえば街中を走る車も日本車が多いですね。

渡邉 「そうですね。これも日本以上に日本車が普及していて、シェアが90%以上。2012年にインドネシアの自動車製造業者協会がまとめた統計では、95%という数値が出ています。みんな「日本の製品は少し高いけど、壊れなくていいね」って。

──そこまで日本熱が高まると、渡日したい、という人も多そうですが。

渡邉 「いつかはあこがれの日本に行きたい」という話もよく聞きます。今って、安定した収入を証明するために、それなりの資料を用意する必要があったりして、観光ビザを取得するための条件が厳しいんです。それに飛行機代が高い。インドネシアの人は、国内旅行でも飛行機を避けて、電車や車を使うことが多いです。」

──そのハードルの高さがクリアーにできればもっと交流が進んで、日本人と好きなアニメの話題とかで、ふつうに盛り上がれそうですね。

 以上、渡邉さんへのインタビューでした。ポップカルチャーというと、欧米に目がいきがちですがアジアもアツい。コンテンツビジネスに関わる人は、ぜひインドネシアにも要注目です!

日本のポップカルチャーはなぜ人気?
日本のポップカルチャーはなぜ人気?

渡邉裕晃さん。大学院生時代、24歳の時にネット広告会社を創業した起業家。現在、インドネシアに渡って次のビジネスを模索している。2013年には、共著で『インドネシアのことがマンガで3時間でわかる本』(明日香出版社)も上梓した。

■関連サイト
インドネシア共和国 | 外務省

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