スマートフォンの液晶保護フィルムに代わって最近人気なのが「化学強化ガラス素材」のタイプ。これには、高度なガラス生産や加工技術が求められるという。ここでは自社でメガネやカメラのレンズなどを生産し、自社ブランドの液晶保護ガラス「Z’us-G」シリーズも発売しているHOYAに話を聞いた。
HOYA Z’us-G for iPad mini/Retinaディスプレイ
●HOYAサービス(株)(外部サイト) ●4860円
一般的な強化ガラスとHOYA独自のガラスは何が違うのですか?
一般的な液晶保護ガラスには、住宅や自動車に使われているソーダライムガラスが使用されていることが多いんです。我々が「青ガラス」とか「青板」と呼ぶもので、名前の通り若干青みがかって見えるガラスです。一方Z’us-Gで使っている特殊ガラスは、アルミノシリケートガラスというものです。耐圧腕時計やスマートフォンなどにも使われ、スマホ本体のガラスで知られている米コーニング社の「ゴリラガラス」や旭硝子の「Dragontrail」もこの種類のガラスです。
液晶保護フィルムと液晶保護ガラスの材料の違い
従来の液晶保護フィルムはPET樹脂製。一般的な液晶保護ガラスはソーダライムガラス製だが、高品質をうたう製品にはアルミノシリケートガラス製もある。表面硬度は硬いもので引っかいたときのキズつきにくさで、9Hは「9Hの鉛筆でもキズつかない」という意味。曲げ強度は張り直しなどで曲げたときの割れにくさ、硬度はガラス全体の硬さ |
アルミノシリケートガラスはソーダライムガラスに比べ、曲げ強度が最大で2倍以上、硬さが1.3倍ほどあり、非常に硬く強いガラスです。液晶保護ガラスは、スマホのカバーガラスの上に、同様のガラスをもう1枚追加してガードするわけですね。HOYAでは、アルミノシリケートガラスをさらに「硬く割れない」保護ガラスにするため、特殊な加工法を用いて作製しているのが特徴です。
ガラスを最初から液晶保護ガラスの形にしていると聞きました。一体どんな裏ワザですか?
通常の製品は、表裏に「化学強化」処理をした大きなガラスをスマートフォンの形に切り出し、ホームボタンやスピーカーの穴を削ります。こうした加工をすると目には見えない小さなヒビ(クラック)が残り、そこを起点として割れやすくなります。また、側面や削った面は化学強化されていない状態となります。
HOYAでは、スマホの形に成形したガラスを化学強化用の液体に浸漬(しんせき)します。こうすると表裏だけでなく側面もすべて強化され、あらゆる方向からの力に強いガラスとなるのです。
Z'us-Gのエッジ加工を顕微鏡で見てみた
HOYA製は溶解(エッチング)しているのでエッジの形状が独特。中央は研磨加工のみ、下は端を薄くしてラウンド加工を施したもの。ラウンド加工は操作性や見た目がよくなる半面、フチ回りが割れやすくなる |
これには、印刷パターン状に露光するフォトリソグラフィー技術や、ガラスを切らずに溶かしながら切るエッチング技術を利用しています。化学強化前のガラスに製品の形をしたマスクパターンを転写し、パターンの転写されていない部分を溶かすことで成形するため、脆弱性となるキズやヒビ(クラック)がない保護ガラスを作れるというわけです。
アルミノシリケートガラスの化学強化の仕組み
ガラス内部のナトリウムとイオン半径の大きなカリウムをイオン交換することにより、圧縮応力が発生して強化層が形成される。ガラス表面近くに、中身がギュッと強く引き締まった層が生成されるイメージだ |
「HOYA Z’us-G for iPad mini/Retina」を実際に貼ってみたレビューはこちらに掲載中。また、フィルムとは違ったコツのいる液晶保護ガラスの貼り方もこちらで紹介しています。失敗したときのはがし方や付着したホコリの取り除き方は必見です。
HOYAさんへのインタビュー内容の全文や技術の話、どの液晶保護ガラスを選べばいいのか調べたガチンコ強度テストの結果はMacPeople6月号(4月28日発売)に掲載中!
そのほかの特集ラインアップは、ネットワークデータ管理術、Office for iOS & OneNote for Macの使い方、いま熱いゲーム開発環境Unity入門、App Storeに自作アプリを登録しよう、とお買い得感アリです。
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