富士通とジャストシステムがスマートフォン向けの新しいATOKとして『Super ATOK ULTIAS』(ULtra Technology Input method of ArrowSの略)を共同開発したと、4月24日に発表しました(関連記事)。
↑富士通とジャストシステムの共同開発によるSuper ATOK ULTIAS。夏モデル以降の富士通製スマートフォンに搭載予定となっている。 |
人気の高いATOKシリーズのブランド力もあり、大きな話題となった一方で、“スマホ史上最高のATOK”という刺激的なキャッチフレーズに対する疑問の声もあるという印象です。
そこで今回は、これまであまり取り上げてこなかったATOKについて、注目したいポイントを解説します。
■ATOK for Androidの“Professional版”と何が違うのか?
筆者がATOKを本格的に使い始めたのは、MS-DOS版の『一太郎Ver.5』に付属していたATOK 8から、と記憶しています。現在でもATOK Passportのプレミアムを契約しており、Windows、Mac、Android上の日本語変換として愛用しています。
特にAndroid向けには、通常のATOK for Androidに加え、高度な機能を搭載した『ATOK for Android [Professional] 』も提供されています。そこで気になるのが、今回発表されたSuper ATOK ULTIASと、既存のProfessional版はどう違うのか、という点です。
↑『ATOK for Android [Professional]』は、“あなたのモバイルに最高峰のかしこさを”というキャッチフレーズで提供中。 |
発表会の質疑応答では、「ULTIASは富士通向けの製品であり、既存のATOK製品との優劣を比較することはできない」という曖昧な回答となりました。ただ、両者の機能的な違いを見ていくと、ULTIASにはProfessionalと似通った機能がいくつもあります。たとえばPC並みに強力な変換エンジンは両者に共通で、入力ミスを修正する“推測変換”などの機能はどちらも備えています。
また、最新のキーワードを配信することで辞書をアップデートする“ATOKキーワードExpress”機能も共通です。これにより、Google日本語入力が得意としていた人気ドラマのフレーズや有名人の名前をATOKでも変換できるようになります。
↑Super ATOK ULTIASは、映画やドラマのフレーズ、最新ビジネス用語などをジャストシステムが収集。毎週アップデートしてくれる。 |
ソフトウエアキーボードについては、一長一短です。Professional版では複数のカラーを選択できるのに加え、タブレットに対応したキーボードも用意されています。一方、ULTIASにはGALAXYやiPhoneなど、他社のスマートフォンのキー配列を選べるという機能が用意されています。
↑Super ATOK ULTIASはiPhoneと同じ配列にもできる。機種変更したユーザーも、新しいキーボードを覚え直す必要がない。 |
↑キー配列はGALAXYやXperia、AQUOSやフィーチャーフォンを含む全6種類を用意。こうして並べてみると、細かな違いがあることが分かる。 |
もうひとつ興味深いのが、アプリごとに“地名優先”や“人名優先”、“話し言葉優先”など、辞書を切り替えるという機能です。さらに連絡帳アプリでは、名前や住所といった入力項目ごとに優先順位を切り替えるという凝った仕様になっています。
↑アプリごとに地名優先、人名優先など、辞書を切り替える。標準アプリのみの対応だが、おもしろアイデアだ。 |
そのほか今回の発表には、ハードウエアの改善も含まれています。富士通は夏モデル以降のスマートフォン向けに、最新の制御用ICを採用し、ノイズ対策なども施した“プレミアムサクサクタッチパネル”を搭載するとしています。
↑富士通はタッチパネルの最新ノウハウを投入、ULTIASもこれに最適化している。 |
ULTIASは、この最新のタッチパネルを搭載した富士通製スマホで動作することを前提に開発されています。これは多くのAndroid端末を動作対象とする既存のATOKアプリと比べて、ハードとソフトの両面から、一歩踏み込んだチューニングができることを意味しています。このあたりがSuper ATOK ULTIASの“スーパー”で“ウルティアス”な部分であり、単にATOK Professionalを無料バンドルするのに比べて、一線を画しているものと考えられます。
■デフォルト設定でも最高の日本語入力が使える
コスト面ではどうでしょうか。Professional版をフル機能で使うためには、月額476円(税抜)の購読型サービス『ATOK Passport』のプレミアム版を契約する必要があります。これはWindowsやMac、Androidを含む10台までのデバイスに対応できるため、複数のデバイスを利用しているユーザーにとってはコストパフォーマンスが高いサービスです。
ただ、スマートフォンをカジュアルに使っている一般ユーザーが、日本語IMEにお金を払ってくれるかといえば、疑問が残るところです。標準搭載のIMEに不満を抱いたとしても、Google日本語入力のアプリなら無料で提供されています。
しかしULTIASのように標準搭載であれば、毎月のランニングコストを気にする必要がなくなり、スマートフォンを購入したままの状態で使うユーザーにもメリットがあります。最終的な仕様はキャリア次第としつつも、いまのところULTIASは富士通製夏モデルではデフォルト設定のIMEになる予定とのこと。これにより、たとえば店頭に並んだデモ機を試す場合でも、富士通端末なら常に快適な日本語入力をアピールできることになりそうです。
■ハードウエアキーボードの生産性向上にも期待
今後のATOKに期待したいのは、タブレット対応、特にハードウエアキーボード対応の強化です。タブレット向けのキーボード製品が増えており、マイクロソフトのSurfaceのようにタブレットをPCライクに使いたいという需要が高まっています。
その一方で、Androidでは日本語入力のオン・オフ操作がPCと異なっていたり、キー配列のカスタマイズが難しいこと、アプリごとのキーボード対応が統一されていない、といった点が気になります。これはAndroidのプラットフォーム全般にまたがった課題であり、ATOKだけですべてに対処することはできないものの、タブレットの生産性を大きく左右する要素であることは間違いありません。
もちろん現時点で、PC並みの生産性を確保するにはWindowsタブレットという選択肢がありますが、そこにAndroidタブレットという選択肢が本格的に加わるかどうか、ATOKの進化に注目したいところです。
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