もうそろそろインテルの最新CPU“Haswell Refresh”が出てきそうですが、これに合わせてチップセットも最新の“インテル9シリーズ”に更新されます。Haswell Refreshは従来のインテル8シリーズマザーもBIOSを更新すれば使えますが、インテル9シリーズマザーでは“M.2”や“SATA Express”といった次世代ストレージ用インターフェースの採用が始まるうえ、さらに次世代CPU“Broadwell”にも対応する息の長い製品になるため、ぜひともセットで導入したいところです。
前置きはさておき、自作マザーメーカーの大御所であるASUSが、ついにインテル9シリーズマザーの概要の一部を公開しました。“公開したけど正式発表じゃないよ”というなんとも大人の事情ありまくりの情報ですが、それを差し置いてもASUSの9シリーズマザーはスゴい!ということで注目の機能をざっくりと紹介します。
一挙に16種類を投入、極限オーバークロッカー向けは後日のお楽しみ?
まずはASUSが9シリーズマザー発売解禁にどんな製品を出すかを見てみましょう。OC対応の最上位チップセット“Z97”採用モデルが11製品、OC非対応の“H97”採用モデルが5製品、全部で16製品も出すという頑張りようです。ゲーマー/オーバークロッカー向けブランド“R.O.G.”シリーズ、高耐久重視の“TUF”シリーズ、そしてコスパ重視の“スタンダード”シリーズの3ライン構成なのはこれまでと同じです。
8シリーズでは“R.O.G.”の最上位には『MAXIMUS VI EXTREME』というハイエンドモデルがありましたが、今回の初期投入製品ではその1ランク下のゲーマー向け『MAXIMYS VII HERO』が最上位になってます。極限OCを狙う製品はおそらく新世代のK付きCPU、つまり“Devil's Canyon”に合わせ熟成中ということでしょう。もちろん従来のK付きCPU(Core i7-4770K/Core i5-4670K)のOCもZ97マザーならどれでも可能です。
スタンダードシリーズの機能充実ぶりがスゴい!
今回の新製品で最も成長著しいのはコスパ重視のスタンダードシリーズです。もちろんR.O.G.やTUFシリーズもそれなりに新要素があって成長してますが、今年のスタンダードシリーズは従来R.O.G.シリーズに組み込まれていた機能が追加されているので、相対的な伸び幅を見ると、元々シンプルなスタンダードがすごく強化された訳ですね。
ここではスタンダードシリーズの見どころ(というか欲しくなる理由)をいくつか紹介します。機能などはほぼ製品版と同じようですが、実際の製品とは微妙に変わっている可能性があります。また、原稿執筆時点での価格は一切明らかにされていません。
Z97-DELUXE
↑スタンダードシリーズの準ハイエンドモデル。802.11ac(2x2)の無線LANを標準搭載。8シリーズよりも金色がずっと上品になりました。外付けのNFC+Qi充電パッドが付いた最上位モデル『Z97-DELUXE(NFC&WLC)』もあります。
Z97-PRO
↑Z97搭載のスタンダードシリーズでは真ん中に位置するモデル。DELUXEよりも電源のフェーズ数が4フェーズ少ない12フェーズ仕様であること、SATA Expressが1基(DELUXEは2基)しかないなどの違いがあります。
●その1 M.2やSATA Expressの標準装備
9シリーズを使う最大のメリットといえるのが、M.2とSATA Exrpress接続のSSDをネイティブサポートすることです。つまり現行の『MacBook Air』や『VAIO PRO 13(BTOモデル)』と同じ超高速ストレージ環境が組めます。従来のSSDは、SATAというインターフェースの限界で順次読み書き性能が550MB/秒前後で頭打ちになっていましたが、M.2やSATA ExpressはPCI Express直結になるのでその限界を超えられる!という訳ですね。
ただし、現時点ではM.2仕様のSSDはまだ入手性が非常に悪く、SATA Expressについては製品が登場するか怪しい状態であります。でもASUSの9シリーズマザーで組んでおけば、いつでも高速SSDに乗り換えられる訳です。また、スタンダードシリーズは全製品でM.2対応ですが、SATA Expressは“PRO”以上の製品で対応、さらにTUFシリーズはSATA Expressのみ対応でM.2は非対応(筆者的にはここが非常におもしろくない)という制約がある点に注意しましょう。
●その2 UEFI BIOSが超強化
ASUSの9シリーズマザーの使い勝手を左右する強化点としては、UEFI BIOSの機能向上に注目です。従来通り簡単操作の“ベーシックモード”と、ひとつひとつ設定を詰めたい人の“アドバンスドモードの”2つが用意されていますが、ベーシックモードの画面が整理され、お手軽OC程度ならベーシックモードだけで完結するようになりました。メモリーのX.M.P.プロファイルを有効にすると、コア倍率まわりの設定がいきなりOCモードになるという従来製品共通の不具合(仕様)が訂正された点も大きいです。
↑レイアウトも見直され、情報が把握しやすくなりました。ファンのアイコンも画面上ではクルクル回ります。
●その3 ファン制御機能も超強化
従来UEFI BIOS上のファン回転数制御機能といえば、目標温度と“静音重視”、“通常”、“冷却重視”程度の粗っぽい設定しかできませんでしたが、ASUSの9シリーズマザーからは、これまでWindows上で動作するツール(Fan Xpert2)とほぼ同じ機能になりました。PCにはSteamとOrigin以外、ゲームに関係ないアプリは1KBだって入れたくない人(私です)にとっては、非常に朗報といえます。しかも、ファンの回転数はCPU温度だけでなく、チップセットやVRMといった別の温度センサーを見て制御することが可能です。
↑グラフを見ながらCPU温度とファンの回転数を3段階に変更することができるため、よりキメ細かな制御ができます。
でもそんなネイキッド派の人でも、9シリーズマザーに付属する『Fan Xpert3』は入れたくなるかもしれません。UEFI BIOS上で設定可能な機能のすべてにプラスして、ファンの回転数を極限まで下げる“Extreme Quiet”モードが追加されたからです。この極限の静音モードを実装するために、今回ASUSは接続されたファンの最高・最低回転数を検出し、ファンを止めない設定を自動的に見つけ出す機能を実装しました。通常回転域ではPWM制御だけど、超低回転域ではDC制御に切り替えるという凝った機能になっています。
↑Extreme Quietモードでは通常のファン制御では不可能な低回転域までしっかり回します。
さらに、このUEFI BIOSやFan Xpert3の制御ではマザー固定の温度センサー(CPU/VRM/PCH/マザー)のほかに、自分で任意に温度センサーを設置することができる点も見逃せません。専用ヘッダーピンにサーミスタを自分で付ける(どの製品が装着可なのかはまだ不明ですが)ことで、グラボの温度やHDDの温度とファンの回転数を連動させることが可能になります。
↑「SENSOR1」と記されているヘッダーピンに、サーミスタを接続することでグラボの温度等もUEFI BIOS上から直接把握可能になりました。
●その4 OCもRAIDもウィザード形式に
ASUSのZ97マザーはOCとかRAID構成に必要な設定をウィザード形式で行なう機能が追加されました。OCにチャレンジしたいけど、アドバンスドモードに入って細かい設定をいじくるのはちょっと……という人には朗報でしょう。特にCPUクーラーの種類を指定すると、それに応じて目標OC値が変動するのがおもしろいところ。
↑簡単OC機能“EZ Tuning Wizard”を起動したところ。最初にOCしたPCの用途を尋ねてきます。ゲーム用だとよりOCする感じですね。
↑CPUクーラーがリテールなのか、市販の空冷なのか、水冷なのかを指定します。冷却力が高いほどOCも高くなるようです。
↑最後に「性能は何%アップする」と推測してくれるのも嬉しいところ。Devil's Canyonが待ち遠しいです!
↑RAIDの設定に関しても、RAID0と1と5の違いを知らなくても、文章でどういう効果があるのか示した上で選択できるようになっています。
●その5 サウンドがより高音質に
スタンダードシリーズではサウンド回路まわりも大幅に強化されました。ざっと変更点を挙げてみると……
・電源投入時等にポップノイズを防止する回路を追加
・アナログ部とデジタル部を分離してノイズを最小限に
・左右チャンネルの配線層を変えることでクロストークを抑制
・日本製オーディオグレードのコンデンサーを採用
などなど、変更点は盛りだくさんです。これらの機能はR.O.G.シリーズだとか、他社製のゲーミングマザーでは当たり前の機能ではありますが、この機能がスタンダードシリーズに盛り込まれたことで、わざわざサウンド面でゲーミングマザーを選ぶ理由はなくなりました。唯一残念なのは、デジ-アナ分離の部分が光らないとか、600Ωのヘッドフォン対応のアンプがない、などでしょうか。
ただ上位のR.O.G.シリーズは上記の要素に加え、コンデンサーのグレードがスタンダードシリーズよりも高い(エルナー製)になっているほか、150Ωのヘッドフォンに対応する回路や、発光機能も搭載しています(なぜ600Ωでないのかは謎ですが)。音質をとことん求めるなら、R.O.G.の方が断然お得です。
●その6 LANの細かな設定が可能に
最後にLANについてもR.O.G.シリーズの機能がスタンダードシリーズに降りてきて強化されています。LANチップは従来と同じ信頼のインテル製ですが、今回はアプリごとに通信の優先度を設定できる「Turbo LAN」が新規実装されました。アプリごとに通信の優先順位を調整できるので、ゲームの優先度をブラウザーより高く設定すれば、ゲームで遊んでいる時はブラウザーのダウンロード速度が抑制される、といった使い方が可能になります。他社製マザーに採用されている“Killer LAN”用のユーティリティーでも同様の機能がありますが、これをインテル製LANに応用したものですね。
R.O.G.シリーズやTUFシリーズはどうなの?
ここまで一番の売れ筋であろうスタンダードシリーズを見てきましたが、上位ラインであるR.O.G.やTUFシリーズにも見どころはあります。ざっくりとですが注目の機能・要素を紹介しましょう。
MAXIMUS VII HERO/MAXIMUS VII GENE/MAXIMUS VII RANGER
“KeyBot”や“Sonic SoundStage”といったゲーマー向けの機能を多数盛り込んだR.O.G.シリーズは3製品。『MAXIMUS VII RANGER』は今回新登場のコスパ重視モデルです。スタンダードシリーズ同様全製品M.2スロットを搭載しています。
【注目ポイント】
・KeyBot:マザー上に専用コントローラーを搭載することで、普通のキーボードでもキーマクロを設定したり、特定キーを押しながら起動でOCモードで起動可能になります。
・TrueVolt USB:ATXメインパワー電源から直接5VをUSBに供給することで、電圧降下に弱いゲーミングデバイスやUSB DAC等の動作を確実にする機能。
・LANGuard:LANポートの静電気保護回路を3重に強化し、高性能ノイズフィルター等を装備することで、信頼性を強化。
・Sonic Stage:前面オーディオの出力に対し、ワンクリックで各種ゲームに特化した音響特性に変更する機能。専用ソフトで制御するほか、マザー上のボタンで切り替え可能。
・2バックプレート:マザー裏面、VRMの裏側に鉄板を配置することで、裏面からの冷却を強化。
SABERTOOTH Z97 MARK1
従来のTUFシリーズは基板をグラボの熱や物理的破損から守る「ARMOR」を標準搭載。スタンダードやR.O.G.シリーズと異なり、M.2は非搭載ですがSATA Expressは搭載しています。グローバル市場ではARMORを持たない“MARK2”もありますが、国内での発売予定はありません。
GRYPHON Z97
TUFシリーズのMicroATX版。1世代前の『GRYPHON Z87』はARMOR別売でしたが、今回は『SABERTOOTH Z97 MARK1』と同様にARMORは標準装備されます。SATA ExpressもM.2も非搭載なので、ストレージまわりの仕様がやや弱くなっています。
【注目ポイント】
・Dust de-Fan:VRM部を冷却するバックパネルのファンを指定時間ごとに逆回転させ、ホコリを飛ばす機能。
・TUF ICe:12個の温度センサー&9個のファン端子を監視・制御するための専用チップ。CPUに負荷をかけずに制御が可能。
・Thermal Rader 2:Windows上で動作するファン回転数調整ツールは、新たにASUSTeK製GeForce GTX 7x0搭載グラボのファンも調整可能に。
・TUF New Alloy Chokes:表面に凹凸をつけ、従来品に比べ9℃以上も動作時の発熱を減らした新型チョークコイル。
まとめ:ASUSの9シリーズマザーは買いだ!
チップセットとCPUが同じなら、マザーの選択を変えても性能は横並びです。そのため各社とも耐久性やチューニング系の機能を豊富にすることに腐心していますが、今年のASUS製マザーは、特にUEFI BIOSの機能強化に並々ならぬ気合いを感じました。マニアでも初心者でも使いやすく、より少ない手順で細かいチューニングが可能になった点は評価すべきでしょう。Haswll Refresh自作はもちろん、Devil's Canyon迎撃用マザーが欲しいなら、ASUS製マザーは“買い”です!
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