ゲーム業界はもちろんのこと、広告やアート、放送など幅広い分野でいま最も注目される開発環境がある。その名も「Unity」。なぜこれほどUnityが支持され、注目されるのか知るべく、Unity開発者の祭典「Unite Japan2014」を取材。最新の活用事例事例について紹介していく。
スマホ向けに移植「ドラゴンクエストVIII」の開発秘話
マルチプラットフォームに向けてアプリを書き出せるUnityは、アプリの移植時にも役立つ。株式会社スクウェア・エニックスの講演では、プレイステーション 2向けのRPG「ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君」をiOS/Android環境に移植した際の手順やテクニックを解説していた。
家庭用ゲームを制作する場合、ソースコードが膨大なので手動で移植するとミスが増えてしまう。そこで、スケジュールを遅らせないために、データの変換を極力自動化したという。ほかにもCGを簡略化したり、タッチパネルに合わせて操作体系を変えたりして、スマートフォンでも快適に遊べるように工夫した。
シリーズ8作目となる「ドラゴンクエストⅧ」はもともとPS2用として2004年に発売。iOS/Android向けの移植版は、2013年12月に配信がスタートする。
また、調べられるものに近づいた際、フキダシを出して次に何をすればいいかユーザーに迷わせないようにしたほか、キャラの周囲にリングを表示させて、会話できる範囲を明示している。
(c)2004, 2013 ARMOR PROJECT/BIRD STUDIO/SQUARE ENIX All Rights Reserved.
アニメキャラがブースを案内するSF的プロモーション
Unityというと、ゲーム開発ツールのイメージが強いが、その扱いやすさはほかの分野でもコンテンツ制作を強力に支援している。株式会社カヤックの天野清之氏は「広告プロモーションを変えるUnityクリエイティブ」と題した講演で、PR制作における活用例を紹介していた。
2013年の東京モーターショーでは、三菱自動車工業株式会社がテレビアニメ「ガールズ&パンツァー」とコラボし、スマホの画面を通じてブースを見ると、主人公の西住みほがコンパニオンとして案内してくれるサービスを企画。独自のシステムを構築せずにUnityを採用したことで、限られた時間でもクリエイティブに専念できて、キャラの表情や動きまで凝ったものを作り上げられた。
また、2014年4月より放送中のテレビアニメ「ピンポン」のPRイベントでは、iPhoneを装着したラケットを振ることでキャラと卓球を楽しめるVRゲームもUnityで制作したそうだ。
iPhone/Android端末用のアプリ「自動車道三菱流」をUnityで開発しているところ。眉毛が前髪の上に表示されるようにしたり、かわいらしい動きをモーションキャプチャーで再現したりと、細部で原作ファンのツボを押さえている。
テレビアニメ「ピンポン」のV R卓球ゲームは、3月22、23日に東京ビッグサイトで開催された「AnimeJapan 2014」にて展示された。卓球台にプロジェクターで投影された玉をiPhone内蔵のラケットで打ち返しつつ、テレビに表示されたキャラと対戦できる。
小林幸子のARライブを支えたニコファーレの演出装置
2013年末、ニコニコ生放送では「ニコニコ年越し! 小林幸子カウントダウンLIVE」という特番を放送。講演では、このライブの裏側にスポットを当てた。歌手の小林幸子さんがライブハウス「ニコファーレ」のステージに立ち、周囲や床に敷かれたLEDにCG映像を流したり、AR合成やプロジェクションマッピングを組み合わせたりして、演者と背景が一体に見える新しい演出をUnityを使って実現したのだ。
その際、外部企業に短納期で映像制作を依頼する必要があったため、Unityを利用。AssetStoreでアセットを購入して背景を作る手間を省けたなど、さまざまなメリットが生まれたという。
写真の「テラ幸子」はCG合成だが、東京の上空から六本木に建設された「幸子城」に降りたり、街並みの屋根を歩きながら歌ったりする演出は、LEDに表示したCGを撮影して実現したのがスゴいところだ。
生放送で撮影しているカメラの角度を計算。映像の遠近感を正しく見えるように直す。
MacPeople6月号(4月28日発売)では、ゲーム開発環境の決定版、Unityの使い方から魅力、活用法まで網羅した「Unity超入門」を特集。リリースされたばかりの「ユニティちゃん」の使い方も掲載している。
そのほか、ネットワークを介して外付けの大容量ストレージを使う「NAS」の導入について徹底解説する「ネットワークデータ管理のススメ」、iPad 版OfficeとOffice Mobile、Office 365やOS X向けの無料版が登場したOneNoteの活用法など、盛りだくさんの内容となっている。
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