マイクロソフトがBUILD 2014で発表したWindows 8.1の最新アップデート『Windows 8.1 Update』が、日本時間の4月9日より配布され、さっそくインストールしてみたという人も多いと思います。
今回のアップデートでは、スタート画面へのボタンの追加や、タスクバーからWindowsストアアプリを利用する機能、タイルに関する細かなアップデートなど、マウスやタッチパッドを使ってWindows 8.1を操作するのに便利な多数の改善が施されました。
↑Windows 8.1 Updateを適用したデスクトップ画面。 |
その一方で気になるのは、このアップデートが近いうちにWindows 8.1ユーザーに対して自動的に配布されるようになるという点です。
■Windows 8.1 Updateは自動更新で配布予定
4月15日現在、筆者の環境で試した限りでは、Windows 8.1 Updateはまだ“自動更新”の対象とはなっていません。Windows Updateの更新プログラムのリストから手動でチェックをオンにするか、ダウンロードセンターから更新プログラムを入手するなど、インストールのためには何らかのアクションを起こす必要があります。
↑現時点でWindows Updateのチェックボックスは“オフ”の状態。自動的にはインストールされない。 |
↑Windows Updateやダウンロードセンターを利用して手動で更新することは可能。 |
しかしマイクロソフトのサイトでは、今後“数週間以内”にWindows Updateが自動的にWindows 8.1 Updateを適用するものと説明しています。日本マイクロソフトによれば、「状況を見ながら段階的に自動更新にしていく」とのこと。つまり数週間後には、すべてのWindows 8.1ユーザーに、このアップデートが自動的に配布されることになります。
ここで注目したいのは、“Windows Updateによる更新プログラムを今後も受け取れるようにするには、Windows 8.1 Updateのインストールが必要になる”、という更新プログラムの説明文(TechNetブログ該当記事)です。
このことは、Windows 8.1ユーザーにとって、Windows 8.1 Updateが基本的に避けることのできない、必須のアップデートであることを意味しています。
↑マイクロソフトの公式ブログ記事。“今後将来的にリリースされるアップデート (セキュリティ更新プログラム/修正プログラムなどを含む) を適用する為の前提条件”、“2014年5月にリリースされる更新プログラムを適用する場合には、技術情報 2919355 のアップデートを適用していることが必要”との文面がはっきりと明記されている。 |
■今後はWindows 8.1 Updateが必須に
2013年10月に提供開始されたWindows 8.1では、インストールするためにWindowsストアを利用する必要がありました。これに対してWindows 8.1 UpdateではWindows Updateを使って配布となり、インストールの際にMicrosoftアカウントによるサインインが必須ではないなど、インストールの敷居は下がっています。
さらにWindows Updateの自動更新の対象になれば、すべてのユーザーに自動的に配布され、「気付いたらWindows 8.1 Updateになっていた」というユーザーが続出するものと思われます。個人ユーザーはともかく、企業ユーザーにとって、こうした事態は避けたいものです。
↑更新プログラムは基本的に自動でインストールされるよう設定されている。 |
すでに企業ユーザー向けには、Windows 8.1 Updateの中に含まれる2つのセキュリティ更新プログラムを、個別に配布するという回避方法が示されました。これにより、Windows 8.1 Updateによる機能的な変更を適用せずに、最新のセキュリティ更新プログラムのみを適用することが可能になっています。
とはいえ、Windows 8.1 Updateが自動更新となるまでの時間的猶予はそれほど長くありません。5月以降に配布予定のセキュリティ更新プログラムは、Windows 8.1 Updateに依存するようになることが説明されているからです。
これは企業環境でしばしば問題となる、Internet Explorerの自動更新と比べると対照的です。IEの場合、自動更新を無効化するツールキットが提供されており、最新のIE11においても『Internet Explorer 11 自動配布の無効化ツールキット』(関連サイト)を利用できます。これにより特定バージョンのIEを使い続けることができます。
しかしWindows 8.1 Updateでは、今後のセキュリティ更新プログラムがWindows 8.1 Update向けに提供される以上、こういった回避方法が用意される可能性は低いものと考えられます。
■企業ユーザーはラピッドリリースに対応できるか
このようにWindows 8.1 Updateは、企業ユーザーにとってリスクとなる可能性がでてきました。今回はユーザーインターフェイス上の変更はわずかであり、それほど問題にはならないかもしれません。
しかしながら、企業においてWindowsを利用しているのは、PCに詳しい従業員ばかりではありません。社内のほとんどの人間がPCの扱いに慣れていないため、外部の業者が作ったマニュアルの手順通りに操作して、なんとかPCを利用している、という会社も世の中には存在しています。
たとえばWindows 8.1 Updateでは、デスクトップPCのようにタッチに対応していないPCの場合、起動時にスタート画面ではなくデスクトップ表示をデフォルトにする、という変更が入っています。操作マニュアルに頼っている現場で、ある日突然PCの起動時にスタート画面が出なくなれば、大混乱に陥ることが予想されます。
社内システムも同様です。会社でPCを使って仕事をしたことのある人なら、最新のOSが使えなかったり、出たばかりのサービスパックを“適用してはいけない”という通達を受け取ったりした経験があるのではないでしょうか。ほとんどの場合、大した問題が起きないことが分かっていたとしても、“動いて当たり前”という運用を求められる情報システム部門にとっては、慎重にならざるを得ないところです。
こうした環境において、数週間以内にWindows 8.1 Updateを展開しなければならないというスケジュールは、厳しいものがありますが、すでにBUILD 2014でマイクロソフトはスタートメニューの復活を予告しており、今後も次々と新機能を提供していく構えです。
↑BUILD 2014で予告されたスタートメニューの”復活”。今後もラピッドリリースは続きそうだ。 |
マイクロソフトによる“ラピッドリリース”によりOSの進化スピードが上がり、かつそれが自動的に配布されるならば、ユーザーもまた“ラピッド”に対応していかなければなりません。果たしてどれだけのユーザーがこのスピードについていけるのか、試されることになるでしょう。
【4月16日20時30分】該当ブログの画像1点と記事へのリンクを追記しました。
山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります