2014年4月8日、AMDはデュアルGPU仕様のハイエンドグラボ『Radeon R9 295X2』を正式に発表しました。デュアルGPUといえばライバルNVIDIAも先日『GeForce GTX TITAN Z』を発表&チラ見せしたばかり(関連記事)ですが、想定価格がGTX TITAN Zが2999ドルなのに対し、R9 295X2は1499ドルと安く設定されています。しかもGTX TITAN Zは現時点においても正式発表がされていない謎のグラボになっているのに対し、AMDはいち早く発売するとのこと。NVIDIAに対し“後の先”をとった格好になります。
今回はAMDより専用アタッシュケース(関連記事)に入れて送られてきた評価キットをもとに、最強最速のRADEONの実力をチェックしてみたいと思います。
『RADEON R9 295X2』
●予想実売価格 1499ドル(4月中発売予定)
製品名 | Radeon R9 295X2 | RADEON R9 290X | RADEON HD7990(Malta) | RADEON HD7970 GHz Edition |
製造プロセス | 28nm | 28nm | 28nm | 28nm |
SP数 | 5632基 | 2816基 | 4096基 | 2048基 |
コアクロック | 1018MHz | 1000MHz | 1000MHz | 1050MHz |
メモリー | 8GB GDDR5/5GHz相当 | 4GB GDDR5/5GHz相当 | 6GB GDDR5/6GHz相当 | 3GB GDDR5/6GHz相当 |
TDP | 500W | 250W | 非公開 | 250W |
補助電源 | 8ピン×2 | 8+6ピン | 8ピン×2 | 8+6ピン |
上の表を見ると分かる通り、RADEON系最速のR9 290Xをまるごと2枚ぶん載せた設計になっていますが、コアクロックがR9 290Xよりわずかに高く設定されています。1世代前のHD7990にはメモリークロックを除き、全てのスペックにおいて上回った点にも注目すべきでしょう。AMDはR9 295X2を“4Kゲーミングのためのグラボ”と位置づけています。
GPU-Zでは不明な部分が多々みられますが、CrossFireX環境になっていることは確認できました(下から2番目の“Enabled(2 GPUs)”)。
しかし真に注目すべきは、R9 295X2はデフォルトで水冷仕様である、ということ。前回のHD7990は3連ファンによる空冷仕様でしたが、今回は各GPU上にポンプ内蔵の水冷ヘッドが装着され、ボード外に引きだされたラジエーターで冷却します。水冷システムはCPUの簡易水冷でおなじみAsetek製のものが使われているため、PCケースの12センチファン用穴に固定することができますが、PCケースやCPUクーラーの組み合わせによっては物理的に固定できない場合も出てくるでしょう。
今回のテスト風景。ラジエーター&ファンの厚みがあるため、大型CPUクーラーと干渉する可能性が大です。
AMDによる分解写真を見てみましょう。ラジエーターは、一般的なCPU用簡易水冷キットと同形状のものを採用しています。動作時の表面温度(チューブ付近)は45℃前後に上がりました。ケース部分に見えるファンはGPU周辺のチップ類に接触しているヒートシンクを冷やすためのものです。GPUは水冷化されているので1基でも十分というワケです。ディスプレー出力はDVIが1基にMini DisplayPortが4基というEyefinity仕様。これは1世代前のHD7990と同じです。
さて、R9 295X2を使うにあたって気をつけなければならないのが“ディスプレーの解像度”と“電源ユニットの出力”の2つです。まずディスプレー解像度ですが、4K液晶の“DP1.2”設定を有効にして接続すると、解像度は3840×2160ドット以外選べなくなります。これはゲームの解像度選択にも影響するので、解像度を選びたければ液晶側でDP1.2を無効化(4K@60Hz出力を諦める)か、DVI接続の液晶を使う必要があります。ただ、これは普通のRADEONをCrossFireX環境にしたときも同じ制約が発生するので、特にR9 295X2が4K縛りにしているワケではありません。
DP1.2で4K液晶に接続すると、画面解像度は4Kに固定されます。フルHDやWQHDに解像度を落としてゲームをしたい場合にはDVIを使うべきでしょう。
また電源ユニットの出力はメーカーの推奨出力は“1000W以上”となっています。R9 295X2の補助電源は8ピン×2系統ありますが、この2つだけで“+12V出力を最大50A”消費します。最近の電源ユニットはCPU用とグラボ用(PCIエクスプレス用)に+12Vの出力が分かれてない設計(いわゆるシングルレール)が主流なので、650~700Wクラスなら楽勝で50Aはひねり出せますが、CPUが消費するぶんも確保しないとダメ、ということになります。細かい話になりますが+12Vのレールがコネクターごとに分かれている場合は、各レールが28A以上だせることも条件に入っています。
ちなみに今回の検証環境(後述)では、850W出力(+12Vの出力が最大70A)の電源ユニットでも全く問題なく動作していました。
●Mantle環境だと、逆に遅くなるケースも
それでは性能をチェックしていきましょう。まずは定番3DMarkから。
まずR9 295X2対R9 290Xという目線で見ると、処理が重いFire Strike Extremeはほぼダブルスコアーに近いのに対し、軽めのFire Strikeではスコアーの伸びが鈍化しているのが分かります。R9 295X2の推奨ディスプレーがWQHDや4Kとなっているのも納得できます。格下であるR9 290のCrossFireX環境にかなり肉薄されていますが、4スロット&外部電源4系統の性能が2スロット+外部電源2系統だけで済むと考えれば、十分お得感はあります。
しかしこれだけ高性能だと消費電力が気になるところ。実ゲームの性能を見る前に消費電力をパッとチェックしましょう。アイドル時(起動10分後)とFire Strikeデモ中の同一シーンでの消費電力を測定しました。
性能が倍なら消費電力もほぼ2倍……という計算ですが、高負荷時500W超えという結果はもはや清々しささえ覚えます。CrossFireX環境時に動いていないGPUの電力はほぼゼロにするという機能の存在を考えれば、アイドル時の消費電力も相当に高い点は少々納得がいきませんが、評価機かつベータ版ドライバーの組み合わせゆえ、まだチューニングの余地があるのかもしれません。
それでは『バトルフィールド4』を使って4Kゲーミングでの性能をチェックしましょう。画質は“最高”、シングルキャンペーン“Tashgar”開始時のフレームレートをゲーム内蔵のベンチマーク機能を用いて求めました。画面解像度は3840×2160ドットと1920×1080ドットの2通りで計測しています。レンダラーはMantleではなくDirectXを使いました。
こちらもR9 290X単体に比べ、2倍とはいいませんが1.7~1.8倍のフレームレートに伸びました。シングルGPU&4K環境でマトモにゲームを遊ぼうとするなら、画質を大きく落とさないと30fpsの維持は困難ですが、R9 295X2ならボード1枚で4Kゲーミングに耐える性能が出せます。
●まとめ:ゲーマーなら一度は使ってみたいが、ディスプレーが……
ざっくりとR9 295X2の性能をチェックしてみましたが、見かけのスゴさにふさわしい超絶な性能を発揮してくれました。ラジエーターの格納場所さえ確保できれば、デュアルR9 290X環境を組むよりも扱いやすい点は嬉しい部分です。4K液晶でゲームに向いた製品がまだ出てないのがネックですが、明らかにハイエンドゲーミング環境における現時点での“最良解”であることは間違いないでしょう。
しかしNVIDIAもこれで黙っているとは思えません。GTX TITAN Zは値段こそ高いものの、確実にこれを超えてくる性能にチューニングされて出てくるはずです。デュアルGPUグラボ頂上決戦が可能になった暁には、ぜひR9 295X2と対決させてみたいものです。
※検証環境は、CPU:Core i5-4670K(3.4GHz)、マザーボード:ASUS『Z87 GRYPHON』(Intel Z87)、メモリー:PC12800 DDR3 8GB×4、ストレージ:Crucial『CT480M500SSD1』、電源ユニット:850W(80PLUS GOLD)、OS:Windows8.1 Pro(64ビット)、ドライバー:Catalyst 14.3 Beta V1.0(3月22日版)/Catalyst 14.4 Beta(3月28日版、R9 295X2のみ)。比較用グラフィックボード:RADEON R9 290Xリファレンス、RADEON R9 290リファレンス×2(CrossFireX構成)。
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