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IDFで発表されたBay Trail-Entryがタブレット市場にもたらす衝撃

2014年04月04日 16時45分更新

 半導体メーカーインテルの最新製品や技術などを発表するイベント、『Intel Developer Forum』(以下、IDF)が中国の深セン市(英語ではShenzhen、シェンゼン)で4月2日~3日の2日間に渡って開催された。この中でインテルは、初日に行なわれた基調講演で“SoFIA 3G”と呼ばれるモデム内蔵型の普及価格帯スマートフォン用のSoCが動作する様子を初めて公開した。また、2日目にはWindowsタブレットに利用されているSoCとなるAtom Z3700シリーズ(開発コードネーム:Bay Trail)に新しいSKUを追加したことを明らかにした。

 インテルが公開した新しいBay Trailは新しいSKUが追加されたほか、Bay Trail-Entryと呼ばれる低価格製品が追加されていることが大きな特徴になる。Bay Trail-Entryはより低コストで基板を製造することができる新パッケージを採用しており、より低価格なAndroidデバイスなどを製造することが可能になる。

IDF14 Shenzhen
↑IDF Shenzhenで新しいBay Trail-Entry(左側)を公開するインテル副社長兼モバイルコミュニケーション事業本部 事業本部長 ハーマン・ユール氏。

Bay Trailの新しいSKUを追加したインテル
最上位SKUとしてAtom Z3795


 インテル副社長兼モバイルコミュニケーション事業本部 事業本部長 ハーマン・ユール氏は、2日目(4月3日、現地時間)に行なわれた基調講演の中で、同社が昨年9月のIDFで発表したBay Trail(ベイトレイル)のSKU(製品構成のこと、要するに製品の新しいモデルのこと)を追加したことを明らかにした。ユール氏は“どのようなSKUがあるのか”については、基調講演の中では明らかにしなかったのだが、その後行なわれた技術セミナーの中でインテルは以下のような新しいSKUが追加されたことを明らかにした。

Bay Trailの新SKU
IDF14 Shenzhen

 従来のBay Trailの最上位SKUはAtom Z3770(ブースト時:2.39GHz、ベース:1.46GHz)だったのに対して新しい最上位SKUとなるZ3790はベースクロックも1.6GHzに引き上げられていることが大きな特徴となる(ブースト時は同じ2.39GHz)となる。ブースト時のクロック周波数は同じなので、大幅な性能向上は見込めないが、通常時のクロックは引き上げられているので、タブレットに連続して負荷をかけてシステムの温度が上がったときなどには、性能向上が認められるだろう。

 基本的にBay Trailの設計そのものはほぼ同じだが、若干のダイ設計への改良が入ったので、より高クロック周波数で動かすことができるようになったというのが、今回新SKUが追加された最大の要因となる。

Bay TrailーEntryがもたらす低価格Androidタブと
同価格帯の低価格Windowsタブレットの破壊力


 新SKUでの最大の目玉は、開発コードネーム:Bay Trail-Entryで知られる廉価版Bay Trailが追加されたことだ。Bay Trail-Entryでは、新しくType 3パッケージというパッケージに変更されている(上位SKUのBay TrailはType 4パッケージというパッケージを採用している)。パッケージとは、SoCのダイを貼り付ける小型基板のことで、半導体メーカーはダイをこのパッケージに実装してOEMメーカーに出荷することになる。

 従来のBay Trailに採用されていたType 4パッケージは、Type 3パッケージと同じ17×17mmとサイズこそ同じだが、パッケージ全体の厚さがやや厚くなっている。その替わりに、従来のType 4パッケージでは、マザーボードの基板(PCB)に8層基板や10層基板といった高密度基板が必要になっていたのに対して、Androidタブレットで一般的に利用されている6層基板を利用することができる。一般的に基板は層数が増え、かつ密度が上がれば上がるほどコストも上がるとされており、従来のType 4パッケージのBay Trailでは6層基板で設計することが難しかったのだ。

 これが何を意味するのかと言えば、従来のType 4パッケージでは、低価格向けのAndroidタブレットを製造することが難しいということだ。今年、来年はグローバル市場において199ドル以下の低価格Androidタブレットが爆発的に普及すると見られているが、これまでインテルのBay Trailを利用してそうした低価格Androidタブレットを製造することが難しかった。しかし、このType 3パッケージのBay Trail-Entryを利用することで、それが可能になるのだ。インテルは99ドル以下の市場も視野に入れて、Bay Trail-EntryのSKU設定を行なっており、メモリーが1GBになるZ3735Gはそのための製品となる(インテルでは今年の夏には99ドルのレンジのタブレットにも採用される見通しだと説明している)。

 しかも、このことはもうひとつの意味を持っている。というのは、このBay Trail-Entryを利用して低価格の基板を設計したOEM/ODMメーカーは、そのデザインをそのままWindowsタブレットに転用することができる。マイクロソフトはサンフランシスコで今週開催しているBuildでWindows 8.1 Updateを発表したが、そのWindows 8.1 Updateでは9インチ未満の液晶ディスプレーを搭載したデバイスはライセンス料が0ドル(決してフリーになるということではない、ライセンス料が0ドルになるというだけで、OEMメーカーはマイクロソフトとライセンス契約を結ばなければいけないことは従来通りだ)になることを発表した。また、Windows 8.1 Updateでは、ハードウェアへの要件が下げられて、メモリー1GB/ストレージ16GBという構成でも動作すると要件が緩和されている。

 つまり、OEM/ODMメーカーがBay Trail-Entryを利用して、メモリー1GB/16GB SSDという構成の基板でAndroidタブレットを製造すれば、その基板をそのまま利用してWindowsタブレットに転用できるということだ。かつ、Windowsのライセンス料は0ドルになるので、Windowsタブレットを製造する際の最大のコストとなっていたOSのライセンス料が0になるということのインパクトは大きい。今後、低価格Androidタブレットと同じ価格帯のWindowsタブレットが続々と登場してくる可能性は高いと言える。

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