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KDDIがLTE Advancedの実験を公開 “ダイヤモンドバンド”の実力とは

2014年03月31日 16時30分更新

 KDDIは28日、3.5GHz帯の“LTE Advanced”で活用する技術の実験を報道陣に公開した。

 3.5GHz帯は、現在、総務省を中心に割り当ての検討を進めている周波数帯域。KDDIの常勤顧問 渡辺文夫氏は「Band 42と呼んでいる3.5GHz帯は200MHz幅の帯域があり、800MHz帯などに比べると相当広く、超高速サービスができる」と、その特徴を説明する。一方で、「周波数帯が高くなると光に特性が似てきて、直進性が強くなり回り込まなくなる」(同)というように、ひとつの基地局で一気にカバー率を上げるという使い方には向いていないという。

KDDI LTE-Advanced

↑説明を行なったKDDIの渡辺氏。

 ただし、こうした特性はメリットにもなる。「道路に沿って飛んでも、ビルを回り込むと電波が弱くなる。上手に設計すれば、電波の重なりが少なくなり、干渉が減ってユーザーのスループットが上がる」(同)と、3.5GHz帯は既存の基地局を補完するための用途で利用しやすい周波数帯。渡辺氏が「(800MHz帯の)プラチナに対し、小粒で光っているという意味で、ダイヤモンドバンド」というのも、そのためだ。LTE Advancedでは“HetNet”と呼ばれる、小型の基地局を組み合わせてスループットや容量を上げる技術が導入される。KDDIも、3.5GHz帯をそのように活用していく方針だ。

KDDI LTE-Advanced

↑現時点でも局所的にトラフィックが集中している。3.5GHz帯の小型基地局を多数設置していくのは、こうした状況に対処するのに有効だ。

KDDI LTE-Advanced

↑3.5GHz帯は200MHz幅も帯域があり、スループットを上げやすい。

KDDI LTE-Advanced

↑高い周波数帯は電波が回り込みにくいというデメリットがある一方で、想定以上に電波が飛ぶ心配がなく、きっちりとエリアをつくれるため小型基地局に向いている。

 800MHz帯のようなマクロ基地局との組み合わせて利用することを想定した3.5GHz帯だが、あまりに数が多くなるとスループットが上がりやすくなる半面、「ちょっと歩いただけで、すぐハンドオーバーしてしまう」(同)という欠点がある。ハンドオーバーとはひとつの基地局からもうひとつの基地局に、通信先を切り替えること。通話やデータのダウンロードなどはそのまま引き継がれる。この頻度が増してしまうと、「品質に影響がある」(同)。

 そこでKDDIが実験を進めているのが、“C/U分離”だ。今回報道陣に公開したのも、この技術のデモとなる。携帯電話の通信には、実際に送受信するデータのほかに、接続を管理する信号が含まれる。前者のデータを“Uプレーン”(ユーザーデータ)、後者のデータを“Cプレーン”(制御信号)と呼ぶ。これを分離してしまおうというのが、実験の中身だ。制御信号は広いエリアをカバーしたマクロ基地局にだけつながるようにしておき、ハンドオーバーするのはデータ量の大きなユーザーデータ信号だけというにすることで、通信を安定させスループットの低下を防げる。

KDDI LTE-Advanced

↑C/U分離の仕組み。制御信号(Cプレーン)はマクロ局が管理し、データ量の多いユーザーデータ信号(Uプレーン)はマクロと小型基地局でハンドオーバーする

 小型バスに乗って行われた実験では、まず3.5GHz帯の周波数特性を解説。バスが角を曲がるとすぐに電波が届かなくなり、マクロ基地局(実験では1.5GHz帯を使用)につながることがわかった。また、C/U分離を適用した場合と、していない場合、両方のスループットをリアルタイムで表示させ、効果を視覚的に説明した。複数のHD動画を流しっぱなしにしたとき、C/U分離ありだとスムーズに動画が流れ続けるのに対し、C/U分離なしだとブロックノイズや動画の瞬断が発生した。KDDIでは、こうした実験結果をLTE Advancedの標準仕様にフィードバックしていく方針だ。

KDDI LTE-Advanced
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↑小型基地局と行っていた通信が、バスが建物の角を曲がっただけで切断された。このように、3.5GHz帯は電波が回り込みにくい。

KDDI LTE-Advanced
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↑C/U分離あり(左)と、C/U分離なし(右)では、上の方が通信が安定している。

KDDI LTE-Advanced

↑C/U分離なしの場合、動画に瞬断やブロックノイズが発生した。

KDDI LTE-Advanced
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↑KDDIの小山ネットワークセンターに設置された実験用の基地局。

 また、3.5GHz帯ほど周波数が高くなってくると、アンテナの物理的なサイズが小さくなる。そのため、“MIMO”と呼ばれる複数のアンテナを同時に使って電波を合成し、スループットを高める技術が今までよりも導入しやすくなる。KDDIでは、MIMOの数を高めた“Massive MIMO”と、その干渉を防いでスループットを上げる“Advanced MIMO”のふたつを実験しており、MIMO利用時に電波がどのように飛ぶかを可視化するツールも開発した。

KDDI LTE-Advanced
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↑“Massive MIMO”や“Advanced MIMO”といった、複数のアンテナを利用する技術の実験も行なっている。

KDDI LTE-Advanced
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↑ビルに反射した電波を測定して、MIMOがどのように伝わってくるのかを“見える化”するツール。カメラも搭載されており、実際の街の風景に電波の強さを重ね合わせることも可能だ。

 こうしたC/U分離やMIMOの実験を踏まえ、KDDIはLTE Advancedの商用化を進めている。「遠からず開始予定」(同)だというLTE Advancedには、今から注目しておいた方がよさそうだ。

●関連サイト
KDDI 公式サイト

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