1984年1月24日の初代Macintoshの発売とともに、同じく30年の歴史を歩んできたMac OS。初代Macintoshに搭載されたSystem 1.0から始まり、最新のMac OS X Mavericksまで、歴代OSが受け継いできた仕組みや機能の数々を紹介します。
Mac OS X 10.5
10.5は初めてPowerPC/インテル両方に対応するユニバーサル形式で出荷された。Classic環境を完全に割愛して旧世代OSと決別する一方、 インテルMacではWindowsも起動できるようになるなど、新たな側面を開いた。
奥行きを感じさせるインターフェース
2007年10月に発売された10.5は、1万4800円という高めの価格で提供される最後のMacOSXであった。また、10.4の際のインテルMac版は対応機種へのプリインストールのみでパッケージ販売されることはなかったが、10.5ではPowerPC MacとインテルMacのどちらにもインストール可能なユニバーサルバイナリー形式で出荷された。
見た目の特徴は、ウィンドウデザインから不要な縁をなくし、宇宙イメージのデスクトップピクチャーに疑似3D表示のDockを組み合わせた奥行き感のある演出が施されている。また、仮想デスクトップであるSpacesの採用で、デスクトップ面積の実質的な作業エリアも広げられた。
作業効率を上げ、安心して使うためのアイデア
過去のMacOSは、ファイルのダブルクリックで対応アプリが立ち上がったり、ファイルのドラッグ&ドロップで開くアプリを選べたりと、ファイルを扱う際の効率化を進めてきた。しかし、いずれにしても一度アプリで開かなければ内容は確認できなかった。
10.5で新たに実装されたQuickLookは、対応したファイルであれば選択してスペースキーを押すだけで中身をプレビューできるほか、FinderのCoverFlow表示にも応用され、必要なファイルを目視で選びやすくなった。
また、ファイルのバックアップの手間は常にコンピューターユーザーを悩ませてきたが、Leopardではバックグラウンド処理でメインストレージを丸ごと別のストレージに保存し、さらにその内容を時間軸に沿って遡りながらファイル単位でリカバリーできる仕組みを整備。その名もTime Machineと名付けられた。このような仕様の実現によって、10.5はより便利で安心して使えるOSとなったのである。
↑QuickLook機能は対応するファイル形式であれば、アプリで開かなくてもFinder上で選択してスペースキーを押すだけで内容を確認できる
↑Time Machineは時間を遡ることを視覚化したインターフェースにより、誤って削除したファイルを復元できるアップル独自のバックアップ機能だ
Mac OS X 10.6
古いコンピューター環境からの脱却を進めるアップルは10.6でPowerPC対応を完全に打ち切った。インテルMacに注力することで、マルチコアCPUへの対応を強められ、全体的な安定性とパフォーマンスがさらに向上した。
アプリのダウンロード販売を常識化
SnowLeopard自体はパッケージで販売されたが、アップルはこのバージョンをOSを含めてアプリのダウンロード販売を推進するための分岐点として捉えていた。Snow Leopardをインストールしておかないと、その後のOSのアップグレードが入手できなくなるため、安価にして買いやすくした面もあった。
同じ理由で次のOSX Lionのリリース後もオンラインのアップルストアを通じて10.6のパッケージ販売が続けられた。ダウンロード販売のプラットフォームとなるMacAppStoreは10.6.6のアップデートとともに登場し、最初の24時間で100万本ものアプリがダウンロードされたと発表された。これを期にiOSで普及したオフィシャルストアを通じて、Mac用アプリのダウンロード販売が常識化していったのだ。
↑OS XにMac App Storeを組み込むことでiOSで実現したアプリの流通革命をMacにもたらす準備が整った
Mac OS X 10.7
アップルは10.7に相当するMacOSXで、コードネーム込みの「OS X Lion」を正式名称に採用。これは次の10年に向けた決意でもあり、10番目のMacOSではなく、 OS Xという新しいプラットフォームとしてバージョンアップすることを強調する決断と言えた。
革新的なインストール方法
OS X 10.7 Lionは、2011年7月にMac App Storeを通じたダウンロードを中心に販売を開始した。ネットワーク速度が遅いユーザーのために併売されたUSBメモリー版は6100円だったが、ダウンロード版の価格は2600円で、流通コストがないことを考えても思い切ったプライスダウンと言えた。
動作にはデュアルコア以上のマシンが必須で、初期のシングルコアのインテルMacはアップデート対象から外された。また、Snow LeopardはインテルMacのみの対応でも、その上でPowerPC向けのプログラムコードを動かす仕組みを備えていたが、Lionでは割愛されてPowerPC用アプリ自体が利用できなくなってしまった。
そして光学式ドライブを搭載しないMacが増えたことから緊急時に物理ディスクを使わずにディスクを修復したり、OS自体を再インストールしたりできるように、OSX Lionのインストール時に「復旧用HD」と呼ばれる特殊なパーティションを作成する機能も追加された。
効率化に直結したマルチタッチ
Lionではウィンドウがさらにシンプルな洗練されたデザインになり、操作の効率など目に見えない部分も大きく進化した。例えばウィンドウをリサイズする場合、従来のMacOSXではウィンドウの右下でしかサイズを調整できなかったが、これに対しLionは、ウィンドウの四辺・四隅をドラッグして上下左右、斜めにサイズを変更できるよう改められた。
また、サイドバーに初期状態で「マイファイル」という項目が追加され、マシン内に保存されているすべてのファイルを種類別、かつ新しい順に一覧でき、目的のアイテムを探しやすくなった。
さらに純正アクセサリーとしてMagic Trackpadが登場したことも大きなポイントだ。システムがサポートするマルチタッチ操作が大幅に強化され、親指とほかの3本指を広げると、開いているすべてのウィンドウを周囲に払いのけるイメージでデスクトップが現れる。また、Safariなどの対応アプリではウィンドウ内デスクトップが現れる。また、Safariなどの対応アプリではウィンドウ内を2本指でダブルタップすると、その部分が拡大表示されるなど、使い勝手が大幅に向上した。
↑Lionから追加されたトラックパッドでのマルチタッチ操作。図はLaunchpadを起動したところ
↑SafariやiPhotoなどでは、2本指でのスクロールによる閲覧個所の移動やダブルタップでのスマートズームといった操作に対応した
Mac OS X 10.8
10.8は、年1回のメジャーアップデートというポリシーに沿い、10.7の1年後にリリースされた。かつてのLeopardに対するSnowLeopardのように、「進化」より「深化」を目指したバージョンだ。
プラットフォームに進化したiCloud
10.8のリリースは、2012年7月。販売価格は、Lionの2600円に対して1700円とさらに買いやすくなり、急速に普及した。
「iCloud」を単なるサービスではなく、プラットフォームとして進化させてきたアップルは、10.8からはiCloudを「フォトストリーム」の一時保存領域や各種情報の同期に利用するだけにとどめず、複数のデバイス間で文書共有が可能な「Documents in the Cloud」の核として位置づけた。
そのため、10.8はiCloudをシステムレベルで対応し、ファイルの保存/オープンダイアログでも外部ストレージとして直接指定できるようになった。
↑より広く、深くシステムに融合したiCloud。専用ダイアログを装備し、アプリを使用しなくてもiCloudに保存した書類を確認できるようになった
Mac OS X 10.9
10.9は、2011年からMacOSXの開発責任者の職にあるクレイグ・フェデリギが新たにiOSも統轄してからの初めてのメジャーアップデートになったOS。 iOSを意識した機能やアプリを充実させ、かつMacならではの魅力も際立たせている。
iOSとの親和性を高めたアップルの狙い
2013年10月にリリースされた10.9は、従来のルック&フィールを残したまま、Finderウィンドウのタブ化や「iBooks」および「マップ」といったアプリの実装などによってiOS環境との親和性をさらに高めた。アップルの狙いは、iOSからアップルデバイスに親しむようになったユーザーがコンピューターの購入時や買い替えの際にMacを選びやすくすることにあった。
iOS7に準じたインターフェースの抜本的改革は見送られたものの、過去の例から考えれば、まずiOSで実用化された技術が時間を置いてOSXに採用されることはほぼ間違いないだろう。 次世代のMacOSXでは、よりフラットでピュアなインターフェースへと生まれ変わるはずだ。
↑10.9では、iOSデバイスでのみ利用可能だったiBooksがMac専用アプリつぃて自動でインストールされ、電子書籍の閲覧/購入が可能になった
無償化に秘めたアップルの意気込み
10.9最大のサプライズは、メジャーアップデートにもかかわらず、Snow Leopardユーザーにまでさかのぼって無償提供した点だ。同時に、純正アプリスイートの「iLife」と「iWork」もアイコンやインターフェースを一新してバージョンアップが図られたが、前のバージョンから無償でバンドルされていたiLifeと同様、iWorkも無償で提供されることになった。
そのほか、ベータ版としてウェブアプリで公開されている「iWork for iCloud」も引き続き無償で利用できる。これらは、非常に重要な意味を持っている。なぜなら、Windowsの有償アップデートと有料の「MicrosoftOffice」、オンラインの「Office365」をビジネスの核とする米マイクロソフト社への明らかな宣戦布告といえるからだ。ライバルが真似できない価値を提供するアップルのOSX戦略は、今後もアグレッシブに推進されるだろう。
↑iPhoto/iMovie/GarageBandからなる「iLife」と、Pages/Keynote/Numbersを含む「iWork」は標準で付属する。図はiPhoto
このように、MacPeople5月号(3月28日発売)ではMacintosh30周年特集第3弾として「History of Mac OS」を大特集。System 1.0からMac OSと名称を変えたSystem 7.6、初代iMacにプリインストールされていたMac OS 8、最新のOS X Mavericksまで歴代Mac OSが受け継いできた仕組みや機能を隅々まで紹介しています。
そのほか、4月9日にサポートが終了するWindows XPからの移行方法も紹介しているWindowsユーザーのためのMac買い換えガイド、iOS 7.1徹底解説、いま話題のiBeaconの最新情報すべてなど、見逃せない特集が盛りだくさんです。
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