1984年1月24日の初代Macintoshの発売とともに、同じく30年の歴史を歩んできたMac OS。初代Macintoshに搭載されたSystem 1.0から始まり、最新のOS X Mavericksまで、歴代OSが受け継いできた仕組みや機能の数々を紹介します。
System 7.5~7.6
バージョン番号を見るとマイナーなアップデートのように見えるが、System 7から7.5への変化はSystem 6から7への変化にも負けず劣らず大きなものだった。
「System」から「Mac OS」へ
System 7.5から比較的大きなアップデート版として発表された7.6は、7.5のリリースから2年以上が経過した1997年1月に登場した。この間、7.5.1から7.5.5まで、マイナーアップデートが順次リリースされている。
この傾向は次のSystem 7.6でも続き、目立った機能が追加されることなく、バージョンだけが0.1進んだように見えた。しかし、1997年1月に登場したバージョンには、次元の異なる大きな意味が込められていた。いったんはSystem 7.6として発表されながら、その直後に「Mac OS 7.6」に改名されたのである。
この改名の背景にあったのは、AppleがMac OSを他社にライセンスし、いわゆるMacクローンである互換機の製造販売を許可したことだ。その際、OSの名前が「System」では、何のシステムかわからず、印象も弱い。そこで、Macと同じOSを搭載したマシンであることをより明確に提示するために「Mac OS」という名前を選んだのもうなずける。
Exposéの祖先?「ウィンドウシェード」
Macのように、デスクトップ上で複数のウィンドウを開き、使用するものを前面に出して切り替えるシステムでは、多くのウィンドウを開いたときの操作性が問題となる。例えば、複数開いたウィンドウの中から目的のものをどうやって探すか、あるいは多くのウィンドウでデスクトップが隠れてしまった場合、デスクトップ上に保存したファイルにどうやってアクセスするかといった点だ。
現在のOS Xが備えるMission Controlは、そうした問題に対するひとつの有効な解決策だが、すでにSystem 7.5の時代から解決策は模索されていた。当時の答えのひとつが「Window Shade」だ。ウィンドウのタイトルバーをダブルクリックすると、中身の部分を一時的に折り畳んで、タイトルバーだけにするというもの。それにより、ウィンドウが占める面積を劇的に減らし、複数のウィンドウ間の操作性を向上させる。
↑「ウィンドウシェード」は、多くのウィンドウを開くことで乱雑になりがちなデスクトップを、ウィンドウを完全に閉じることなく片付けるための機能だ |
Mac OS 8
AppleはSystem 7以降、かなりゆっくりとしたペースでOSの開発を進めているように見えた。実はその裏で、ほとんどゼロから作り直しとも言える、まったく新しいOSの開発を続けていた。しかし、実際にOS 8としてリリースされたのは、新世代OSではなく従来の延長線上のものだった。
CoplandからTempoへ
Mac OS 7.6で他社へのOSライセンス供給を実現する前から、Appleは次世代のOS開発予定やその状況を公開していた。それによれば「Copland」というコードネームで開発しているものを1995年に、さらに「Gershwin」として開発しているものを1996年には発表するとしていた。おそらく前者をMacOS 8、後者をMacOS 9としてリリースするつもりだったと考えられる。
しかし、それらの開発は遅れに遅れた。そこでAppleはCoplandやGershwinのために開発していた技術を小出しにし、とりあえずは既存のOS上で実現したものをリリースしていく戦略に切り替えた。その結果、1997年になってようやく出てきたのがコードネーム「Harmony」のMac OS 7.6、続いて立て続けに同年7月にリリースしたのがコードネーム「Tempo」のMac OS 8だった。
Coplandとして開発していたOS 8とTempoとして実際にリリースされたOS 8は、見た目にも機能的にも似通った部分はあるものの、中身はまったくの別モノと考えていい。Coplandが目指していたモダンなOSの条件である、プリエンプティブなマルチタスクやメモリー保護機能をTempoは実現していなかったからだ。要するに開発が困難だった部分を切り捨て、どちらかと言うと表面的で実現がやさしい機能だけを取り入れたのが、実際のOS 8だったというわけだ。
↑元来Mac OS 8として登場するはずだった開発コード名「Copland」の画面。マルチスレッドに対応したFinderでは、大量のファイルコピー2セットを進行させながら、通常のメニュー操作が可能な様子が見てとれる。
↑実際にMac OS 8としてリリースされたのは「Tempo」。見た目は「Copland」に近く、ポップアップウィンドウなど、表面的な機能は共通しているが、内部はまったく異なるものだった。
Mac OS 9
OS 9には、まったく異なった血統を導入して開発したMac OS XにMacという文化や資産を引き継ぐという重要な役割があった。それが重大な過渡期に登場したOSとして避けがたい運命だった。
OS Xへの橋渡しとしてのOS 9
OS 9が登場した1999年の3月には、実はMac OS Xもすでに開発者向けのプレビュー版がリリースされていた。一般ユーザー向けの公開ベータ版が登場したのはOS 9から1年後の2000年9月ながら、OS X自体はOS 9よりも先に世に出ていたことになる。つまり、OS 9は最初からOS Xと共存、あるいはネイティブOSの座をOS Xに譲ることを前提に開発されたものと考えられる。
とはいえOS 9は、OS Xの正式版である10.0 Cheetahに合わせて消えてしまったわけではない。その後10.4 TigerまではClassic環境として生き残り、OS Xの中でOS 9を起動できた。10.5 LeopardではついにClassic環境は使えなくなったが、OS 9に対応したMacであれば別ボリュームから起動できた。
この事実は、1984年から続いてきたMac OSの資産が多くのユーザーにとってどれほど重要なものだったかを物語っている。OS Xの登場以前に長年開発されてきた主要アプリを利用できるOS 9は、多くの用途に対して十分な機能を提供していた。だからこそ基本的なアーキテクチャーが水と油ほども異なるXとの橋渡しの役割をスムーズに果たすことができたのだ。
↑OS 9とOS Xを両方インストールした起動ディスクには、両者のシステムファイルが混在していた |
Siriも真っ青の声紋認識パスワード
OS Xのマルチユーザー機能には、現在のOS Xでも実現されていない特筆すべき関連機能が備わっていた。ユーザーの声を認識してログインを可能にする「ボイスプリントパスワード」、つまり声紋認識によるログイン機能が実装されていたのだ。
ログインパスワードの代わりとなる肉声のフレーズをユーザーごとに録音しておき、ログイン画面でフレーズを発声するだけで、ログインできるというものだった。
ただし、当時はまだ音声認識機能の能力や精度が低く、実用性はいまひとつだった。同じフレーズを発声した他人の声でもログインできたり、逆に本人がログインできなくなったりといった誤動作もあった。しかし、未来のコンピューターを感じさせる夢のある機能だった。OS 9の登場から15年が経過した今年あたり、次世代のOS Xに新機能として搭載されてもおかしくないだろう。
↑音声認識によってログインを可能にする「ボイスプリントパスワード」のフレーズ録音画面。録音したフレーズは再生/波形の確認ができる |
このように、MacPeople5月号(3月28日発売)ではMacintosh30周年特集第3弾として「History of Mac OS」を大特集。System 1.0からMac OSと名称を変えたSystem 7.6、初代iMacにプリインストールされていたMac OS 8、最新のOS X Mavericksまで歴代Mac OSが受け継いできた仕組みや機能を隅々まで紹介しています。
そのほか、4月9日にサポートが終了するWindows XPからの移行方法も紹介しているWindowsユーザーのためのMac買い換えガイド、iOS 7.1徹底解説、いま話題のiBeaconの最新情報すべてなど、見逃せない特集が盛りだくさんです。
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また、MacPeople3月号と4月号では、Macintosh30周年特集の第1弾、2弾として、歴代の一体型/デスクトップ型Macをまとめた「30th Anniversary Macintosh」特集、Macintosh PortableやPowerBookなど歴代ノート型Macをまとめた「PowerBook MacBook History」特集を掲載しています。ぜひ、3号セットでご覧下さい。
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